ここではVWの5NDNFF型・ティグアン [R|2021/05モデル] に搭載されているDNF型のターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
DNF型のターボエンジン諸元
5NDNFF型 ティグアン 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | 3BA-5NDNFF型 |
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車名&グレード | ティグアン R |
エンジン型式 | DNF |
種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 1984cc |
内径×行程 | 82.5mm×92.8mm |
ボアストローク比 | 1.12 |
単気筒容積 | 496.1cc |
圧縮比 | 9.3 |
吸気方式 | ターボ |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 320PS/5350-6500rpm |
最大トルク | 42.8kgm/2100-5350rpm |
まず基本的な成り立ちとして、DNF型エンジンはボア(内径)82.5mm、ストローク(行程)92.8mm、ボアストローク比1.12のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。
なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。
このサイトにて登録されている車種のうち、DNF型のターボエンジンを搭載する最も古い車種は、2017/01から発売された2代目ティグアン [5NDNFF型|2021/05]、最も新しい車種は2020/07から発売された初代Tロック [A1DNFF型|2023/06]となっており、NA車は0車種、ターボ/SC車は4車種の全4車種が登録されています。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 125.5PS → 320PS |
トルクの変遷 | 42.8kgm → 35.3kgm |
リッター馬力 | 161.30PS/L |
リッタートルク | 21.6kgm/L |
今回の参考車両であるティグアンの直列4気筒1984cc、圧縮比9.3でハイオクガソリン仕様のターボエンジンは、5350-6500回転のとき最高出力320馬力を、5350-6500回転のとき最大トルク42.8kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する2100回転での馬力は125.5PS、最高出力が発生する6500回転でのトルクは35.3kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は161.30PS/L、トルクは21.6kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積496.1cc)あたりの馬力は80.0PS、トルクは10.7kgmです。
DNF型ターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 10 ]、換算トルクが[ 10 ]の「稀に見る高出力エンジン」にカテゴライズされます。
ちなみに、DNF型エンジン搭載車種のうち、最高出力が最も大きかったのは5NDNFF型ティグアンの320PS/42.8kgm、最も小さかったのはA1DNFF型Tロックの300PS/40.8kgmとなっています。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
82.5 | 92.8 | 1984cc | 9.3 | 1.12 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
83.0 | 92.8 | 2008cc | 9.4 | 1.12 |
83.5 | 2033cc | 9.5 | 1.11 | |
84.0 | 2057cc | 9.6 | 1.10 | |
84.5 | 2082cc | 9.7 | 1.10 | |
85.0 | 2106cc | 9.8 | 1.09 | |
85.5 | 2131cc | 9.9 | 1.09 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
82.5 | 93.8 | 2006cc | 9.4 | 1.14 |
94.8 | 2027cc | 9.5 | 1.15 | |
95.8 | 2048cc | 9.6 | 1.16 | |
96.8 | 2070cc | 9.6 | 1.17 | |
97.8 | 2091cc | 9.7 | 1.19 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の82.5mmから0.5mm刻みで85.5mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の92.8mmから1mm刻みで97.8mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。DNF型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.12から1.09に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
DNF型エンジンのピストン径82.5mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが9件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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マツダ PE型 | 83.5mm [+1.0mm] | 2033cc [+49cc] |
日産 KR15型 | 84.0mm [+1.5mm] | 2057cc [+73cc] |
日産 M9R型 | 84.0mm [+1.5mm] | 2057cc [+73cc] |
日産 CD20型 | 84.5mm [+2.0mm] | 2082cc [+98cc] |
三菱 4G63型 | 85.0mm [+2.5mm] | 2106cc [+122cc] |
日産 VQ25型 | 85.0mm [+2.5mm] | 2106cc [+122cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、マツダ:DMEP型CX-30に搭載されるPE型1997ccの83.5mm、日産:T33型エクストレイルに搭載されるKR15型1497ccの84.0mm、日産:DNT31型エクストレイルに搭載されるM9R型1995ccの84.0mm、日産:SW11型ラルゴに搭載されるCD20型1973ccの84.5mm、三菱:CT9A型ランサー エボリューションIXに搭載される4G63型1997ccの85.0mm、日産:NM35型ステージアに搭載されるVQ25型2495ccの85.0mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 2000ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 2000ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 2000ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 2000ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [2000ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [2000ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが92.8mmのエンジンが最高出力を発生する6500回転での平均ピストンスピードは20.1m/sとなり、これは1秒間に20.1メートル(時速にすると72.4km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する2100回転では6.5m/s、最高出力が発生する6500回転より500回転高い7000回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は21.7m/sとなっています。
参考までにストロークが92.8mmのDNF型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね6.17m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、6470回転くらいが良い感じの回転数になるのではないかと思いますが、このエンジンは最高出力を発生している時点で既に20.0m/sを超えており、レブリミットを考慮するともう少し余分に(300~500回転?)回ることから、内部では大変なことになりながらも頑張って回っているエンジンです。
DNF型エンジンを搭載する車種の例
全4車種を最高出力が大きいものから順に表示しています。
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||||
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VW 5NDNFF | 2021/05 ティグアン R [3BA-5NDNFF] | 320PS 42.8kgm 10.8km/L 5.469kg/PS | ターボ 4WD/7AT SUV 5人乗り | |||||||||||||||
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VW CDDNFF | 2022/10 ゴルフR R [3BA-CDDNFF] | 320PS 42.8kgm 12.3km/L 4.812kg/PS | ターボ 4WD/7AT ハッチバック 5人乗り | |||||||||||||||
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VW CDDNFV | 2022/10 ゴルフR ヴァリアント TSI 4motion [3BA-CDDNFV] | 320PS 42.8kgm 12.2km/L 5.000kg/PS | ターボ 4WD/7AT ワゴン 5人乗り | |||||||||||||||
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VW A1DNFF | 2023/06 Tロック T-Roc R [7BA-A1DNFF] | 300PS 40.8kgm - 5.133kg/PS | ターボ 4WD/7AT SUV 5人乗り | |||||||||||||||
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その他のDNF型エンジン型式と代表的な車種
DNF型 全4車種 | アウディ:TTSクーペ [BaseGrade] 最高出力320PS/最大トルク40.8kgm 2023/04モデル | |
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アウディ DNF型 全4車種 | TTSクーペ [BaseGrade] 320PS/40.8kgm |