ここではVWの1KBYD型・ゴルフV GTI [GTI-Pirelli|2008/10モデル] に搭載されているBYD型のターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
BYD型のターボエンジン諸元
1KBYD型 ゴルフV GTI 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | ABA-1KBYD型 |
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車名&グレード | ゴルフV GTI GTI-Pirelli |
エンジン型式 | BYD |
種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 1984cc |
内径×行程 | 82.5mm×92.8mm |
ボアストローク比 | 1.12 |
単気筒容積 | 496.1cc |
圧縮比 | 9.8 |
吸気方式 | ターボ |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 230PS/5500rpm |
最大トルク | 30.6kgm/2200-5200rpm |
まず基本的な成り立ちとして、BYD型エンジンはボア(内径)82.5mm、ストローク(行程)92.8mm、ボアストローク比1.12のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。
なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 94.0PS → 230PS |
トルクの変遷 | 30.6kgm → 30.0kgm |
リッター馬力 | 115.93PS/L |
リッタートルク | 15.4kgm/L |
今回の参考車両であるゴルフV GTIの直列4気筒1984cc、圧縮比9.8でハイオクガソリン仕様のターボエンジンは、5500回転のとき最高出力230馬力を、5500回転のとき最大トルク30.6kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する2200回転での馬力は94.0PS、最高出力が発生する5500回転でのトルクは30.0kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は115.93PS/L、トルクは15.4kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積496.1cc)あたりの馬力は57.5PS、トルクは7.7kgmです。
BYD型ターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 7 ]、換算トルクが[ 6 ]の「なかなかの高出力エンジン」にカテゴライズされます。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
82.5 | 92.8 | 1984cc | 9.8 | 1.12 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
83.0 | 92.8 | 2008cc | 9.9 | 1.12 |
83.5 | 2033cc | 10.0 | 1.11 | |
84.0 | 2057cc | 10.1 | 1.10 | |
84.5 | 2082cc | 10.2 | 1.10 | |
85.0 | 2106cc | 10.3 | 1.09 | |
85.5 | 2131cc | 10.5 | 1.09 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
82.5 | 93.8 | 2006cc | 9.9 | 1.14 |
94.8 | 2027cc | 10.0 | 1.15 | |
95.8 | 2048cc | 10.1 | 1.16 | |
96.8 | 2070cc | 10.2 | 1.17 | |
97.8 | 2091cc | 10.3 | 1.19 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の82.5mmから0.5mm刻みで85.5mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の92.8mmから1mm刻みで97.8mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。BYD型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.12から1.09に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
BYD型エンジンのピストン径82.5mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが9件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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マツダ PE型 | 83.5mm [+1.0mm] | 2033cc [+49cc] |
日産 KR15型 | 84.0mm [+1.5mm] | 2057cc [+73cc] |
日産 M9R型 | 84.0mm [+1.5mm] | 2057cc [+73cc] |
日産 CD20型 | 84.5mm [+2.0mm] | 2082cc [+98cc] |
三菱 4G63型 | 85.0mm [+2.5mm] | 2106cc [+122cc] |
日産 VQ25型 | 85.0mm [+2.5mm] | 2106cc [+122cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、マツダ:DMEP型CX-30に搭載されるPE型1997ccの83.5mm、日産:T33型エクストレイルに搭載されるKR15型1497ccの84.0mm、日産:DNT31型エクストレイルに搭載されるM9R型1995ccの84.0mm、日産:SW11型ラルゴに搭載されるCD20型1973ccの84.5mm、三菱:CT9A型ランサー エボリューションIXに搭載される4G63型1997ccの85.0mm、日産:NM35型ステージアに搭載されるVQ25型2495ccの85.0mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 2000ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 2000ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 2000ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 2000ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [2000ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [2000ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが92.8mmのエンジンが最高出力を発生する5500回転での平均ピストンスピードは17.0m/sとなり、これは1秒間に17.0メートル(時速にすると61.2km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する2200回転では6.8m/s、最高出力が発生する5500回転より500回転高い6000回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は18.6m/sとなっています。
参考までにストロークが92.8mmのBYD型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね6.17m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6470回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
BYD型エンジンを搭載する車種の例
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||||
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VW 1KBYD | 2008/10 ゴルフV GTI GTI-Pirelli [ABA-1KBYD] | 230PS 30.6kgm 12.2km/L 6.261kg/PS | ターボ FF/6AT ハッチバック 5人乗り | |||||||||||||||
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