トヨタ:WA-VE型エンジンの諸元と性能まとめ [直列3気筒 1196cc]

ここではトヨタのA201A型・ライズ [X|2021/11モデル] に搭載されているWA-VE型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

WA-VE型の自然吸気エンジン諸元


A201A型 ライズ
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式5BA-A201A型
車名&グレードライズ
X
エンジン型式WA-VE
種類直列3気筒
排気量1196cc
内径×行程73.5mm×94.0mm
ボアストローク比1.28
単気筒容積398.8cc
吸気方式自然吸気
使用燃料レギュラーガソリン
最高出力87PS/6000rpm
最大トルク11.5kgm/4500rpm

まず基本的な成り立ちとして、WA型エンジンはボア(内径)73.5mm、ストローク(行程)94.0mm、ボアストローク比1.28のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。

なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
WAのエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷72.2PS → 87PS
トルクの変遷11.5kgm → 10.4kgm
リッター馬力72.70PS/L
リッタートルク9.6kgm/L

今回の参考車両であるライズの直列3気筒1196ccでレギュラーガソリン仕様の自然吸気エンジンは、6000回転のとき最高出力87馬力を、6000回転のとき最大トルク11.5kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4500回転での馬力は72.2PS、最高出力が発生する6000回転でのトルクは10.4kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は72.70PS/L、トルクは9.6kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積398.8cc)あたりの馬力は29.0PS、トルクは3.8kgmです。

WA型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 6 ]、換算トルクが[ 6 ]の「標準的な出力(中の上)のエンジン」にカテゴライズされます。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
73.594.01196cc-1.28
ボアアップによる排気量拡大
74.094.01213cc-1.27
74.51229cc-1.26
75.01246cc-1.25
75.51262cc-1.25
76.01279cc-1.24
76.51296cc-1.23
ストロークアップによる排気量拡大
73.595.01209cc-1.29
96.01222cc-1.31
97.01235cc-1.32
98.01247cc-1.33
99.01260cc-1.35

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の73.5mmから0.5mm刻みで76.5mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の94.0mmから1mm刻みで99.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。WA型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.28から1.23に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

WA型エンジンのピストン径73.5mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが29件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
マツダ
P5型
74.5mm
[+1.0mm]
1229cc
[+33cc]
三菱
6G71型
74.7mm
[+1.2mm]
1236cc
[+40cc]
トヨタ
1NZ型
75.0mm
[+1.5mm]
1246cc
[+50cc]
トヨタ
1G型
75.0mm
[+1.5mm]
1246cc
[+50cc]
ホンダ
D15B型
75.0mm
[+1.5mm]
1246cc
[+50cc]
ホンダ
D16A型
75.0mm
[+1.5mm]
1246cc
[+50cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、マツダ:ND5RC型ロードスターに搭載されるP5型1496ccの74.5mm、三菱:F11A型ディアマンテに搭載される6G71型1998ccの74.7mm、トヨタ:NZE127型プリウスに搭載される1NZ型1496ccの75.0mm、トヨタ:GXE10型マークIIに搭載される1G型1988ccの75.0mm、ホンダ:EK3型シビックに搭載されるD15B型1493ccの75.0mm、ホンダ:EJ4型CR-X デルソルに搭載されるD16A型1590ccの75.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 1200ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 1200ccクラスのエンジン
ストロークが短い 1200ccクラスのエンジン
ストロークが長い 1200ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [1200ccクラス]
ボアストローク比・降順 [1200ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
4500rpm
最高出力
6000rpm
94.0mm14.1m/s18.8m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm6.3m/s23km/h
4000rpm12.5m/s45km/h
6000rpm18.8m/s68km/h
8000rpm25.1m/s90km/h
10000rpm31.3m/s113km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが94.0mmのエンジンが最高出力を発生する6000回転での平均ピストンスピードは18.8m/sとなり、これは1秒間に18.8メートル(時速にすると67.7km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する4500回転では14.1m/s、最高出力が発生する6000回転より500回転高い6500回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は20.4m/sとなっています。

参考までにストロークが94.0mmのWA型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね6.25m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6380回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


WA-VE型エンジンを搭載する車種の例

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
トヨタ
A201A
2021/11
ライズ
X
[5BA-A201A]
87PS
11.5kgm
20.7km/L
11.149kg/PS
自然吸気
FF/CVT
SUV
5人乗り
車両型式:5BA-A201A

ライズ
[X]
2021/11モデル
最高出力87PS
最大トルク11.5kgm
WLTCモード燃費20.7km/L
JC08モード燃費24.6km/L
吸気方式自然吸気
車体構成5人乗りSUV
FF/CVT

その他のWA型エンジン型式と代表的な車種

WA-VEX型
全1車種
トヨタ:ライズ [G]
最高出力82PS/最大トルク10.7kgm
2021/11モデル
トヨタ
WA-VEX型
全1車種
ライズ
[G]
82PS/10.7kgm
WA-VE型
全1車種
ダイハツ:ロッキー [L]
最高出力87PS/最大トルク11.5kgm
2021/11モデル
ダイハツ
WA-VE型
全1車種
ロッキー
[L]
87PS/11.5kgm
WA-VEX型
全1車種
ダイハツ:ロッキー [X-HEV]
最高出力82PS/最大トルク10.7kgm
2021/11モデル
ダイハツ
WA-VEX型
全1車種
ロッキー
[X-HEV]
82PS/10.7kgm
WA-VE型
全1車種
スバル:レックス [G]
最高出力87PS/最大トルク11.5kgm
2022/11モデル
スバル
WA-VE型
全1車種
レックス
[G]
87PS/11.5kgm

トヨタ製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】