トヨタ:M15A-FXE型エンジンの諸元と性能まとめ [直3+モーター 1490cc]

ここではトヨタのMXPH10型・ヤリス [Hybrid-X|2020/02モデル] に搭載されているM15A-FXE型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

M15A-FXE型の自然吸気エンジン諸元


MXPH10型 ヤリス
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式6AA-MXPH10型
車名&グレードヤリス
Hybrid-X
エンジン型式M15A-FXE
種類直3+モーター
排気量1490cc
内径×行程80.5mm×97.6mm
ボアストローク比1.21
単気筒容積496.7cc
吸気方式自然吸気
使用燃料レギュラーガソリン
最高出力91PS/5500rpm
最大トルク12.2kgm/3800-4800rpm

まず基本的な成り立ちとして、M15A型エンジンはボア(内径)80.5mm、ストローク(行程)97.6mm、ボアストローク比1.21のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。

なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。

このサイトにて登録されている車種のうち、M15A-FXE型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、2020/02から発売された4代目ヤリス [MXPH10型|2020/02]、最も新しい車種は2022/08から発売された3代目シエンタ ハイブリッド [MXPL10G型|2022/08]となっており、NA車は18車種、ターボ/SC車は0車種の全18車種が登録されています。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
M15Aのエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷64.7PS → 91PS
トルクの変遷12.2kgm → 11.9kgm
リッター馬力61.07PS/L
リッタートルク8.2kgm/L

今回の参考車両であるヤリスの直3+モーター1490ccでレギュラーガソリン仕様の自然吸気エンジンは、5500回転のとき最高出力91馬力を、5500回転のとき最大トルク12.2kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する3800回転での馬力は64.7PS、最高出力が発生する5500回転でのトルクは11.9kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は61.07PS/L、トルクは8.2kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積496.7cc)あたりの馬力は30.3PS、トルクは4.1kgmです。

M15A型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 4 ]、換算トルクが[ 2 ]の「やや控えめな出力のエンジン」にカテゴライズされます。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
80.597.61490cc-1.21
ボアアップによる排気量拡大
81.097.61509cc-1.20
81.51527cc-1.20
82.01546cc-1.19
82.51565cc-1.18
83.01584cc-1.18
83.51603cc-1.17
ストロークアップによる排気量拡大
80.598.61505cc-1.22
99.61521cc-1.24
100.61536cc-1.25
101.61551cc-1.26
102.61567cc-1.27

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の80.5mmから0.5mm刻みで83.5mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の97.6mmから1mm刻みで102.6mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。M15A型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.21から1.17に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

M15A型エンジンのピストン径80.5mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが22件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
三菱
4G94型
81.5mm
[+1.0mm]
1527cc
[+37cc]
三菱
4G67型
81.5mm
[+1.0mm]
1527cc
[+37cc]
マツダ
GY型
81.6mm
[+1.1mm]
1531cc
[+41cc]
トヨタ
2ZZ型
82.0mm
[+1.5mm]
1546cc
[+56cc]
ホンダ
G20A型
82.0mm
[+1.5mm]
1546cc
[+56cc]
ホンダ
C20A型
82.0mm
[+1.5mm]
1546cc
[+56cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、三菱:EA7A型ギャランに搭載される4G94型1999ccの81.5mm、三菱:E35A型ギャランに搭載される4G67型1836ccの81.5mm、マツダ:LW5W型MPVに搭載されるGY型2494ccの81.6mm、トヨタ:ZZE123型カローラ ランクスに搭載される2ZZ型1795ccの82.0mm、ホンダ:CC3型ビガーに搭載されるG20A型1996ccの82.0mm、ホンダ:KA5型レジェンドに搭載されるC20A型1996ccの82.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 1500ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 1500ccクラスのエンジン
ストロークが短い 1500ccクラスのエンジン
ストロークが長い 1500ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [1500ccクラス]
ボアストローク比・降順 [1500ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
3800rpm
最高出力
5500rpm
97.6mm12.4m/s17.9m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm6.5m/s23km/h
4000rpm13.0m/s47km/h
6000rpm19.5m/s70km/h
8000rpm26.0m/s94km/h
10000rpm32.5m/s117km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが97.6mmのエンジンが最高出力を発生する5500回転での平均ピストンスピードは17.9m/sとなり、これは1秒間に17.9メートル(時速にすると64.4km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する3800回転では12.4m/s、最高出力が発生する5500回転より500回転高い6000回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は19.5m/sとなっています。

参考までにストロークが97.6mmのM15A型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね6.50m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6150回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


M15A-FXE型エンジンを搭載する車種の例

全18車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクよりM15A型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
トヨタ
MXPH10
2020/02
ヤリス
Hybrid-X
[6AA-MXPH10]
91PS
12.2kgm
36.0km/L
11.538kg/PS
自然吸気
FF/CVT
ハッチバック
5人乗り
車両型式:6AA-MXPH10

ヤリス
[Hybrid-X]
2020/02モデル
最高出力91PS
最大トルク12.2kgm
WLTCモード燃費36.0km/L
吸気方式自然吸気
車体構成5人乗りハッチバック
FF/CVT
トヨタ
MXPJ10
2020/09
ヤリス クロス
Hybrid-X
[6AA-MXPJ10]
91PS
12.2kgm
30.8km/L
12.747kg/PS
自然吸気
FF/CVT
SUV
5人乗り
車両型式:6AA-MXPJ10

ヤリス クロス
[Hybrid-X]
2020/09モデル
最高出力91PS
最大トルク12.2kgm
WLTCモード燃費30.8km/L
JC08モード燃費31.3km/L
吸気方式自然吸気
車体構成5人乗りSUV
FF/CVT
トヨタ
MXPK10
2021/07
アクア
B
[6AA-MXPK10]
91PS
12.2kgm
35.8km/L
11.868kg/PS
自然吸気
FF/CVT
ハッチバック
5人乗り
車両型式:6AA-MXPK10

アクア
[B]
2021/07モデル
最高出力91PS
最大トルク12.2kgm
WLTCモード燃費35.8km/L
JC08モード燃費31.3km/L
吸気方式自然吸気
車体構成5人乗りハッチバック
FF/CVT
M15A型エンジン搭載車種の一覧
パワーウェイトレシオ順|全37車種

その他のM15A型エンジン型式と代表的な車種

M15A-FKS型
全17車種
トヨタ:ヤリス [X]
最高出力120PS/最大トルク14.8kgm
2020/02モデル
トヨタ
M15A-FKS型
全17車種
ヤリス
[X]
120PS/14.8kgm
M15A型
全10車種
スズキ:スイフト スポーツ [Sport]
最高出力115PS/最大トルク14.6kgm
2004/04モデル
スズキ
M15A型
全10車種
スイフト スポーツ
[Sport]
115PS/14.6kgm
M15A型
全2車種
シボレー:クルーズ [1.5LT]
最高出力110PS/最大トルク14.6kgm
2005/04モデル
シボレー
M15A型
全2車種
クルーズ
[1.5LT]
110PS/14.6kgm

トヨタ製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】