ここではトヨタのTCR20W型・エスティマ [X|1996/08モデル] に搭載されている2TZ-FE型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
2TZ-FE型の自然吸気エンジン諸元
TCR20W型 エスティマ 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | E-TCR20W型 |
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車名&グレード | エスティマ X |
エンジン型式 | 2TZ-FE |
種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 2438cc |
内径×行程 | 95.0mm×86.0mm |
ボアストローク比 | 0.91 |
単気筒容積 | 609.6cc |
圧縮比 | 9.3 |
吸気方式 | 自然吸気 |
使用燃料 | レギュラーガソリン |
最高出力 | 135PS/5000rpm |
最大トルク | 21.0kgm/4000rpm |
まず基本的な成り立ちとして、2TZ型エンジンはボア(内径)95.0mm、ストローク(行程)86.0mm、ボアストローク比0.91のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。
また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。
このサイトにて登録されている車種のうち、2TZ-FE型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、1992/01から発売された初代エスティマ エミーナ&ルシーダ [TCR20G型|1995/01]、最も新しい車種は1992/01から発売された初代エスティマ エミーナ&ルシーダ [TCR10G型|1998/01]となっており、NA車は6車種、ターボ/SC車は0車種の全6車種が登録されています。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 117.3PS → 135PS |
トルクの変遷 | 21.0kgm → 19.3kgm |
リッター馬力 | 55.37PS/L |
リッタートルク | 8.6kgm/L |
今回の参考車両であるエスティマの直列4気筒2438cc、圧縮比9.3でレギュラーガソリン仕様の自然吸気エンジンは、5000回転のとき最高出力135馬力を、5000回転のとき最大トルク21.0kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4000回転での馬力は117.3PS、最高出力が発生する5000回転でのトルクは19.3kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は55.37PS/L、トルクは8.6kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積609.6cc)あたりの馬力は33.8PS、トルクは5.2kgmです。
2TZ型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 3 ]、換算トルクが[ 3 ]の「控えめな出力のエンジン」にカテゴライズされます。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
95.0 | 86.0 | 2438cc | 9.3 | 0.91 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
95.5 | 86.0 | 2464cc | 9.4 | 0.90 |
96.0 | 2490cc | 9.5 | 0.90 | |
96.5 | 2516cc | 9.6 | 0.89 | |
97.0 | 2542cc | 9.7 | 0.89 | |
97.5 | 2568cc | 9.7 | 0.88 | |
98.0 | 2595cc | 9.8 | 0.88 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
95.0 | 87.0 | 2467cc | 9.4 | 0.92 |
88.0 | 2495cc | 9.5 | 0.93 | |
89.0 | 2523cc | 9.6 | 0.94 | |
90.0 | 2552cc | 9.7 | 0.95 | |
91.0 | 2580cc | 9.8 | 0.96 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の95.0mmから0.5mm刻みで98.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の86.0mmから1mm刻みで91.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.91からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。2TZ型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.91から0.88に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
2TZ型エンジンのピストン径95.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが5件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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日産 ZD30型 | 96.0mm [+1.0mm] | 2490cc [+52cc] |
トヨタ 3L型 | 96.0mm [+1.0mm] | 2490cc [+52cc] |
日産 TB42型 | 96.0mm [+1.0mm] | 2490cc [+52cc] |
スバル EJ22型 | 96.9mm [+1.9mm] | 2537cc [+99cc] |
スバル EG33型 | 96.9mm [+1.9mm] | 2537cc [+99cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、日産:CWMGE25型キャラバン コーチに搭載されるZD30型2953ccの96.0mm、トヨタ:LH107G型ハイエースワゴンに搭載される3L型2779ccの96.0mm、日産:WGY60型サファリに搭載されるTB42型4169ccの96.0mm、スバル:BG7型レガシィ ツーリングワゴンに搭載されるEJ22型2212ccの96.9mm、スバル:CXD型アルシオーネSVXに搭載されるEG33型3318ccの96.9mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 2500ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 2500ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 2500ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 2500ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [2500ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [2500ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが86.0mmのエンジンが最高出力を発生する5000回転での平均ピストンスピードは14.3m/sとなり、これは1秒間に14.3メートル(時速にすると51.5km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する4000回転では11.5m/s、最高出力が発生する5000回転より500回転高い5500回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は15.8m/sとなっています。
参考までにストロークが86.0mmの2TZ型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.75m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6980回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
2TZ-FE型エンジンを搭載する車種の例
全6車種を最高出力が大きいものから順に表示しています。
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||||
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トヨタ TCR20W | 1996/08 エスティマ X [E-TCR20W] | 135PS 21.0kgm 7.6km/L 13.037kg/PS | 自然吸気 4WD/4AT ミニバン 8人乗り | |||||||||||||||
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トヨタ TCR20G | 1995/01 エスティマ エミーナ&ルシーダ X [E-TCR20G] | 135PS 21.0kgm 7.9km/L 12.593kg/PS | 自然吸気 4WD/5MT ミニバン 8人乗り | |||||||||||||||
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トヨタ TCR10G | 1998/01 エスティマ エミーナ&ルシーダ X [GF-TCR10G] | 135PS 21.0kgm 8.3km/L 12.074kg/PS | 自然吸気 MR/4AT ミニバン 8人乗り | |||||||||||||||
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トヨタ TCR20G | 1998/01 エスティマ エミーナ&ルシーダ X [GF-TCR20G] | 135PS 21.0kgm 7.6km/L 12.815kg/PS | 自然吸気 4WD/4AT ミニバン 8人乗り | |||||||||||||||
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トヨタ TCR10G | 1995/01 エスティマ エミーナ&ルシーダ X [E-TCR10G] | 135PS 21.0kgm 9.8km/L 11.852kg/PS | 自然吸気 MR/5MT ミニバン 8人乗り | |||||||||||||||
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トヨタ TCR10W | 1996/08 エスティマ X [E-TCR10W] | 135PS 21.0kgm 8.3km/L 12.370kg/PS | 自然吸気 MR/4AT ミニバン 8人乗り | |||||||||||||||
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その他の2TZ型エンジン型式と代表的な車種
2TZ-FZE型 全2車種 | トヨタ:エスティマ [V] 最高出力160PS/最大トルク26.3kgm 1998/01モデル | |
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トヨタ 2TZ-FZE型 全2車種 | エスティマ [V] 160PS/26.3kgm |