ここではトヨタのTRJ150型・ランドクルーザー プラド [TX 7人乗り|2009/09モデル] に搭載されている2TR-FE型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
2TR-FE型の自然吸気エンジン諸元
TRJ150型 ランドクルーザー プラド 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | CBA-TRJ150W型 |
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車名&グレード | ランドクルーザー プラド TX 7人乗り |
エンジン型式 | 2TR-FE |
種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 2693cc |
内径×行程 | 95.0mm×95.0mm |
ボアストローク比 | 1.00 |
単気筒容積 | 673.4cc |
圧縮比 | 9.6 |
吸気方式 | 自然吸気 |
使用燃料 | レギュラーガソリン |
最高出力 | 163PS/5200rpm |
最大トルク | 25.1kgm/3800rpm |
まず基本的な成り立ちとして、2TR型エンジンはボア(内径)95.0mm、ストローク(行程)95.0mm、ボアストローク比1.00のスクエア型エンジン(ピストン径とストローク量が同一)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型とショートストローク型の美点の良いとこ取り、若しくは欠点の悪いとこ取り、特にこれと言ってどうとも言えないバランス型の万能エンジンとなる素質があります。
数多あるボアとストロークの組み合わせの中で唯一、双方が同じ寸法のときにだけ現れるスクエア型はその存在の希少性こそが最大の魅力であると言えましょう。
このサイトにて登録されている車種のうち、2TR-FE型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、2002/11から発売された4代目ハイラックス サーフ [TRN215W型|2005/08]、最も新しい車種は2004/08から発売された5代目ハイエース バン [TRH221K型|2022/04]となっており、NA車は25車種、ターボ/SC車は0車種の全25車種が登録されています。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 133.2PS → 163PS |
トルクの変遷 | 25.1kgm → 22.5kgm |
リッター馬力 | 60.53PS/L |
リッタートルク | 9.3kgm/L |
今回の参考車両であるランドクルーザー プラドの直列4気筒2693cc、圧縮比9.6でレギュラーガソリン仕様の自然吸気エンジンは、5200回転のとき最高出力163馬力を、5200回転のとき最大トルク25.1kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する3800回転での馬力は133.2PS、最高出力が発生する5200回転でのトルクは22.5kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は60.53PS/L、トルクは9.3kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積673.4cc)あたりの馬力は40.8PS、トルクは6.3kgmです。
2TR型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 4 ]、換算トルクが[ 5 ]の「やや控えめな出力のエンジン」にカテゴライズされます。
ちなみに、2TR-FE型のターボ・SCエンジン搭載車種のうち、最高出力が最も大きかったのはTRJ150W型ランドクルーザー プラドの163PS/25.1kgm、最も小さかったのはTRH219W型ハイエースワゴンの151PS/24.6kgmとなっています。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
95.0 | 95.0 | 2693cc | 9.6 | 1.00 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
95.5 | 95.0 | 2722cc | 9.7 | 0.99 |
96.0 | 2750cc | 9.8 | 0.99 | |
96.5 | 2779cc | 9.9 | 0.98 | |
97.0 | 2808cc | 10.0 | 0.98 | |
97.5 | 2837cc | 10.1 | 0.97 | |
98.0 | 2866cc | 10.2 | 0.97 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
95.0 | 96.0 | 2722cc | 9.7 | 1.01 |
97.0 | 2750cc | 9.8 | 1.02 | |
98.0 | 2778cc | 9.9 | 1.03 | |
99.0 | 2807cc | 10.0 | 1.04 | |
100.0 | 2835cc | 10.1 | 1.05 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の95.0mmから0.5mm刻みで98.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の95.0mmから1mm刻みで100.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと1.00のスクエア型からショートストローク型へとシフトしていきます。2TR型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.00から0.97に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
2TR型エンジンのピストン径95.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが5件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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日産 ZD30型 | 96.0mm [+1.0mm] | 2750cc [+57cc] |
トヨタ 3L型 | 96.0mm [+1.0mm] | 2750cc [+57cc] |
日産 TB42型 | 96.0mm [+1.0mm] | 2750cc [+57cc] |
スバル EJ22型 | 96.9mm [+1.9mm] | 2802cc [+109cc] |
スバル EG33型 | 96.9mm [+1.9mm] | 2802cc [+109cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、日産:CWMGE25型キャラバン コーチに搭載されるZD30型2953ccの96.0mm、トヨタ:LH107G型ハイエースワゴンに搭載される3L型2779ccの96.0mm、日産:WGY60型サファリに搭載されるTB42型4169ccの96.0mm、スバル:BG7型レガシィ ツーリングワゴンに搭載されるEJ22型2212ccの96.9mm、スバル:CXD型アルシオーネSVXに搭載されるEG33型3318ccの96.9mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 3000ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 3000ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 3000ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 3000ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [3000ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [3000ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが95.0mmのエンジンが最高出力を発生する5200回転での平均ピストンスピードは16.5m/sとなり、これは1秒間に16.5メートル(時速にすると59.4km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する3800回転では12.0m/s、最高出力が発生する5200回転より500回転高い5700回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は18.1m/sとなっています。
参考までにストロークが95.0mmの2TR型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね6.35m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6320回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
2TR-FE型エンジンを搭載する車種の例
全25車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクより2TR型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||||
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トヨタ TRJ150 | 2009/09 ランドクルーザー プラド TX 7人乗り [CBA-TRJ150W] | 163PS 25.1kgm 8.8km/L 12.761kg/PS | 自然吸気 4WD/4AT SUV 7人乗り | |||||||||||||||
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トヨタ TRN215 | 2005/08 ハイラックス サーフ SSR-X [CBA-TRN215W] | 163PS 25.1kgm 8.9km/L 11.227kg/PS | 自然吸気 4WD/4AT SUV 5人乗り | |||||||||||||||
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トヨタ TRJ120 | 2005/08 ランドクルーザー プラド TX 8人乗り 2TR [CBA-TRJ120W] | 163PS 25.1kgm 8.8km/L 11.779kg/PS | 自然吸気 4WD/4AT SUV 8人乗り | |||||||||||||||
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2TR型エンジン搭載車種の一覧 パワーウェイトレシオ順|全25車種 |