ここではスバルのVBH型・WRX S4 [STI Sport-R|2021/11モデル] に搭載されているFA24型のターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
FA24型のターボエンジン諸元
VBH型 WRX S4 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | 5BA-VBH型 |
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車名&グレード | WRX S4 STI Sport-R |
エンジン型式 | FA24 |
種類 | 水平対向4気筒 |
排気量 | 2387cc |
内径×行程 | 94.0mm×86.0mm |
ボアストローク比 | 0.92 |
単気筒容積 | 596.8cc |
圧縮比 | 10.6 |
吸気方式 | ターボ |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 275PS/5600rpm |
最大トルク | 38.2kgm/2000-4800rpm |
まず基本的な成り立ちとして、FA24型エンジンはボア(内径)94.0mm、ストローク(行程)86.0mm、ボアストローク比0.92のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。
また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。
このサイトにて登録されている車種のうち、FA24型のターボエンジンを搭載する最も古い車種は、2021/08から発売された2代目BRZ [ZD8型|2021/08]、最も新しい車種は2021/11から発売された2代目WRX S4 [VBH型|2021/11]となっており、NA車は4車種、ターボ/SC車は3車種の全7車種が登録されています。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 106.7PS → 275PS |
トルクの変遷 | 38.2kgm → 35.2kgm |
リッター馬力 | 115.20PS/L |
リッタートルク | 16.0kgm/L |
今回の参考車両であるWRX S4の水平対向4気筒2387cc、圧縮比10.6でハイオクガソリン仕様のターボエンジンは、5600回転のとき最高出力275馬力を、5600回転のとき最大トルク38.2kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する2000回転での馬力は106.7PS、最高出力が発生する5600回転でのトルクは35.2kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は115.20PS/L、トルクは16.0kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積596.8cc)あたりの馬力は68.8PS、トルクは9.6kgmです。
FA24型ターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 7 ]、換算トルクが[ 6 ]の「なかなかの高出力エンジン」にカテゴライズされます。
ちなみに、FA24型エンジン搭載車種のうち、最高出力が最も大きかったのはVBH型WRX S4の275PS/38.2kgm、最も小さかったのはZD8型BRZの235PS/25.5kgmとなっています。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
94.0 | 86.0 | 2387cc | 10.6 | 0.92 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
94.5 | 86.0 | 2413cc | 10.7 | 0.91 |
95.0 | 2438cc | 10.8 | 0.91 | |
95.5 | 2464cc | 10.9 | 0.90 | |
96.0 | 2490cc | 11.0 | 0.90 | |
96.5 | 2516cc | 11.1 | 0.89 | |
97.0 | 2542cc | 11.2 | 0.89 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
94.0 | 87.0 | 2415cc | 10.7 | 0.93 |
88.0 | 2443cc | 10.8 | 0.94 | |
89.0 | 2470cc | 10.9 | 0.95 | |
90.0 | 2498cc | 11.0 | 0.96 | |
91.0 | 2526cc | 11.2 | 0.97 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の94.0mmから0.5mm刻みで97.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の86.0mmから1mm刻みで91.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.92からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。FA24型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.92から0.89に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
FA24型エンジンのピストン径94.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが11件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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三菱 4M40型 | 95.0mm [+1.0mm] | 2438cc [+51cc] |
トヨタ 2TZ型 | 95.0mm [+1.0mm] | 2438cc [+51cc] |
ホンダ 4JX1型 | 95.4mm [+1.4mm] | 2459cc [+72cc] |
ホンダ 4JG2型 | 95.4mm [+1.4mm] | 2459cc [+72cc] |
日産 VR38型 | 95.5mm [+1.5mm] | 2464cc [+77cc] |
トヨタ 1KZ型 | 96.0mm [+2.0mm] | 2490cc [+103cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、三菱:PD8W型デリカ スペースギアに搭載される4M40型2835ccの95.0mm、トヨタ:TCR20W型エスティマに搭載される2TZ型2438ccの95.0mm、ホンダ:UBS73GWH型ホライゾンに搭載される4JX1型2999ccの95.4mm、ホンダ:UBS69GWH型ホライゾンに搭載される4JG2型3059ccの95.4mm、日産:R35型GT-R Nismoに搭載されるVR38型3799ccの95.5mm、トヨタ:KZN185W型ハイラックス サーフに搭載される1KZ型2982ccの96.0mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 2500ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 2500ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 2500ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 2500ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [2500ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [2500ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが86.0mmのエンジンが最高出力を発生する5600回転での平均ピストンスピードは16.1m/sとなり、これは1秒間に16.1メートル(時速にすると58.0km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する2000回転では5.7m/s、最高出力が発生する5600回転より500回転高い6100回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は17.5m/sとなっています。
参考までにストロークが86.0mmのFA24型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.75m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6980回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
FA24型エンジンを搭載する車種の例
全7車種を最高出力が大きいものから順に表示しています。
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||||||
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スバル VBH | 2021/11 WRX S4 STI Sport-R [5BA-VBH] | 275PS 38.2kgm 10.8km/L 5.818kg/PS | ターボ 4WD/CVT セダン 5人乗り | |||||||||||||||||
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スバル VNH | 2021/11 レヴォーグ STI STI Sport-R [5BA-VNH] | 275PS 38.2kgm 11.0km/L 5.927kg/PS | ターボ 4WD/CVT ワゴン 5人乗り | |||||||||||||||||
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スバル ZD8 | 2021/08 BRZ R [3BA-ZD8] | 235PS 25.5kgm 12.0km/L 5.362kg/PS | 自然吸気 FR/6MT クーペ 4人乗り | |||||||||||||||||
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スバル ZD8 | 2021/08 BRZ S [3BA-ZD8] | 235PS 25.5kgm 11.7km/L 5.489kg/PS | 自然吸気 FR/6AT クーペ 4人乗り | |||||||||||||||||
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その他のFA24型エンジン型式と代表的な車種
FA24型 全4車種 | トヨタ:GR86 [RC] 最高出力235PS/最大トルク25.5kgm 2021/10モデル | |
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トヨタ FA24型 全4車種 | GR86 [RC] 235PS/25.5kgm |