ここではスバルのKJ5型・ドミンゴ [CS|1992/09モデル] に搭載されているEF10型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
EF10型の自然吸気エンジン諸元
KJ5型 ドミンゴ 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | E-KJ5型 |
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車名&グレード | ドミンゴ CS |
エンジン型式 | EF10 |
種類 | 直列3気筒 |
排気量 | 997cc |
内径×行程 | 78.0mm×69.6mm |
ボアストローク比 | 0.89 |
単気筒容積 | 332.6cc |
圧縮比 | 9.5 |
吸気方式 | 自然吸気 |
使用燃料 | レギュラーガソリン |
最高出力 | 48PS/5000rpm |
最大トルク | 8.2kgm/3200rpm |
まず基本的な成り立ちとして、EF10型エンジンはボア(内径)78.0mm、ストローク(行程)69.6mm、ボアストローク比0.89のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。
また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 36.6PS → 48PS |
トルクの変遷 | 8.2kgm → 6.9kgm |
リッター馬力 | 48.14PS/L |
リッタートルク | 8.2kgm/L |
今回の参考車両であるドミンゴの直列3気筒997cc、圧縮比9.5でレギュラーガソリン仕様の自然吸気エンジンは、5000回転のとき最高出力48馬力を、5000回転のとき最大トルク8.2kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する3200回転での馬力は36.6PS、最高出力が発生する5000回転でのトルクは6.9kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は48.14PS/L、トルクは8.2kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積332.6cc)あたりの馬力は16.0PS、トルクは2.7kgmです。
EF10型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 1 ]、換算トルクが[ 2 ]の「心もとない出力のエンジン」にカテゴライズされます。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
78.0 | 69.6 | 997cc | 9.5 | 0.89 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
78.5 | 69.6 | 1011cc | 9.6 | 0.89 |
79.0 | 1023cc | 9.7 | 0.88 | |
79.5 | 1036cc | 9.8 | 0.88 | |
80.0 | 1050cc | 10.0 | 0.87 | |
80.5 | 1063cc | 10.1 | 0.86 | |
81.0 | 1076cc | 10.2 | 0.86 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
78.0 | 70.6 | 1012cc | 9.6 | 0.91 |
71.6 | 1026cc | 9.7 | 0.92 | |
72.6 | 1041cc | 9.9 | 0.93 | |
73.6 | 1055cc | 10.0 | 0.94 | |
74.6 | 1069cc | 10.1 | 0.96 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の78.0mmから0.5mm刻みで81.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の69.6mmから1mm刻みで74.6mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.89からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。EF10型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.89から0.86に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
EF10型エンジンのピストン径78.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが36件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
---|---|---|
トヨタ 5A型 | 78.7mm [+0.7mm] | 1016cc [+19cc] |
スバル FB16型 | 78.8mm [+0.8mm] | 1018cc [+21cc] |
トヨタ 1ZZ型 | 79.0mm [+1.0mm] | 1023cc [+26cc] |
日産 MRA8型 | 79.7mm [+1.7mm] | 1042cc [+45cc] |
日産 QG18型 | 80.0mm [+2.0mm] | 1050cc [+53cc] |
いすゞ 4XE1型 | 80.0mm [+2.0mm] | 1050cc [+53cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、トヨタ:AE91型カローラ レビンに搭載される5A型1498ccの78.7mm、スバル:GT3型XVに搭載されるFB16型1599ccの78.8mm、トヨタ:ZZT230型セリカに搭載される1ZZ型1794ccの79.0mm、日産:TB17型シルフィに搭載されるMRA8型1798ccの79.7mm、日産:QP12型プリメーラに搭載されるQG18型1769ccの80.0mm、いすゞ:JT191S型ジェミニに搭載される4XE1型1588ccの80.0mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 1000ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 1000ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 1000ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 1000ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [1000ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [1000ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが69.6mmのエンジンが最高出力を発生する5000回転での平均ピストンスピードは11.6m/sとなり、これは1秒間に11.6メートル(時速にすると41.8km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する3200回転では7.4m/s、最高出力が発生する5000回転より500回転高い5500回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は12.8m/sとなっています。
参考までにストロークが69.6mmのEF10型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね4.65m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)8620回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
EF10型エンジンを搭載する車種の例
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||||
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スバル KJ5 | 1992/09 ドミンゴ CS [E-KJ5] | 48PS 8.2kgm 13.0km/L 17.500kg/PS | 自然吸気 RR/5MT 1BOX 7人乗り | |||||||||||||||
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