スバル:1KR-FE型エンジンの諸元と性能まとめ [直列3気筒 996cc]

ここではスバルのM900F型・ジャスティ [L Smart-Assist|2018/11モデル] に搭載されている1KR-FE型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

1KR-FE型の自然吸気エンジン諸元


M900F型 ジャスティ
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式DBA-M900F型
車名&グレードジャスティ
L Smart-Assist
エンジン型式1KR-FE
種類直列3気筒
排気量996cc
内径×行程71.0mm×83.9mm
ボアストローク比1.18
単気筒容積332.2cc
圧縮比12.5
吸気方式自然吸気
使用燃料レギュラーガソリン
最高出力69PS/6000rpm
最大トルク9.4kgm/4400rpm

まず基本的な成り立ちとして、1KR型エンジンはボア(内径)71.0mm、ストローク(行程)83.9mm、ボアストローク比1.18のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。

なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。

このサイトにて登録されている車種のうち、1KR-FE型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、2016/11から発売された5代目ジャスティ [M900F型|2018/11]、最も新しい車種は2016/11から発売された5代目ジャスティ [M900F型|2020/09]となっており、NA車は4車種、ターボ/SC車は0車種の全4車種が登録されています。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
1KRのエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷57.7PS → 69PS
トルクの変遷9.4kgm → 8.2kgm
リッター馬力69.28PS/L
リッタートルク9.4kgm/L

今回の参考車両であるジャスティの直列3気筒996cc、圧縮比12.5でレギュラーガソリン仕様の自然吸気エンジンは、6000回転のとき最高出力69馬力を、6000回転のとき最大トルク9.4kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4400回転での馬力は57.7PS、最高出力が発生する6000回転でのトルクは8.2kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は69.28PS/L、トルクは9.4kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積332.2cc)あたりの馬力は23.0PS、トルクは3.1kgmです。

1KR型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 5 ]、換算トルクが[ 6 ]の「標準的な出力(中の下)のエンジン」にカテゴライズされます。

【PR】エンジンオイルの通販革命!高品質×低価格
TAKUMIモーターオイル HIGH QUALITY【5W-30】


排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
71.083.9996cc12.51.18
ボアアップによる排気量拡大
71.583.91011cc12.71.17
72.01025cc12.81.17
72.51039cc13.01.16
73.01053cc13.11.15
73.51068cc13.31.14
74.01082cc13.51.13
ストロークアップによる排気量拡大
71.084.91008cc12.61.20
85.91020cc12.81.21
86.91032cc12.91.22
87.91044cc13.01.24
88.91056cc13.21.25

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の71.0mmから0.5mm刻みで74.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の83.9mmから1mm刻みで88.9mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。1KR型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.18から1.13に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

1KR型エンジンのピストン径71.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが38件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
トヨタ
K3型
72.0mm
[+1.0mm]
1025cc
[+29cc]
日産
CGA3型
72.0mm
[+1.0mm]
1025cc
[+29cc]
トヨタ
3SZ型
72.0mm
[+1.0mm]
1025cc
[+29cc]
トヨタ
EJ型
72.0mm
[+1.0mm]
1025cc
[+29cc]
トヨタ
2SZ型
72.0mm
[+1.0mm]
1025cc
[+29cc]
ホンダ
ECA型
72.0mm
[+1.0mm]
1025cc
[+29cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、トヨタ:S231E型デュエットに搭載されるK3型1297ccの72.0mm、日産:AZ10型キューブに搭載されるCGA3型1348ccの72.0mm、トヨタ:M502G型ラッシュに搭載される3SZ型1495ccの72.0mm、トヨタ:M100A型ミラジーノ1000に搭載されるEJ型989ccの72.0mm、トヨタ:SCP90型ヴィッツに搭載される2SZ型1296ccの72.0mm、ホンダ:ZE1型インサイトに搭載されるECA型995ccの72.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 1000ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 1000ccクラスのエンジン
ストロークが短い 1000ccクラスのエンジン
ストロークが長い 1000ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [1000ccクラス]
ボアストローク比・降順 [1000ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
4400rpm
最高出力
6000rpm
83.9mm12.3m/s16.8m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.6m/s20km/h
4000rpm11.2m/s40km/h
6000rpm16.8m/s60km/h
8000rpm22.4m/s81km/h
10000rpm28.0m/s101km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが83.9mmのエンジンが最高出力を発生する6000回転での平均ピストンスピードは16.8m/sとなり、これは1秒間に16.8メートル(時速にすると60.5km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する4400回転では12.3m/s、最高出力が発生する6000回転より500回転高い6500回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は18.2m/sとなっています。

参考までにストロークが83.9mmの1KR型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.60m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)7150回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


1KR-FE型エンジンを搭載する車種の例

全4車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクより1KR型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
スバル
M900F
2018/11
ジャスティ
L Smart-Assist
[DBA-M900F]
69PS
9.4kgm
24.6km/L
15.507kg/PS
自然吸気
FF/CVT
ミニバン
5人乗り
車両型式:DBA-M900F

ジャスティ
[L Smart-Assist]
2018/11モデル
最高出力69PS
最大トルク9.4kgm
JC08モード燃費24.6km/L
吸気方式自然吸気
車体構成5人乗りミニバン
FF/CVT
スバル
M910F
2018/11
ジャスティ
L Smart-Assist
[DBA-M910F]
69PS
9.4kgm
22.0km/L
16.377kg/PS
自然吸気
4WD/CVT
ミニバン
5人乗り
車両型式:DBA-M910F

ジャスティ
[L Smart-Assist]
2018/11モデル
最高出力69PS
最大トルク9.4kgm
JC08モード燃費22.0km/L
吸気方式自然吸気
車体構成5人乗りミニバン
4WD/CVT
スバル
M900F
2020/09
ジャスティ
BaseGrade
[5BA-M900F]
69PS
9.4kgm
18.4km/L
15.797kg/PS
自然吸気
FF/CVT
ミニバン
5人乗り
車両型式:5BA-M900F

ジャスティ
[BaseGrade]
2020/09モデル
最高出力69PS
最大トルク9.4kgm
WLTCモード燃費18.4km/L
JC08モード燃費22.0km/L
吸気方式自然吸気
車体構成5人乗りミニバン
FF/CVT
1KR型エンジン搭載車種の一覧
パワーウェイトレシオ順|全69車種

その他の1KR型エンジン型式と代表的な車種

1KR-FE型
全29車種
トヨタ:パッソ [X]
最高出力71PS/最大トルク9.6kgm
2008/11モデル
トヨタ
1KR-FE型
全29車種
パッソ
[X]
71PS/9.6kgm
1KR-FE型
全18車種
ダイハツ:ブーン [1.0CL]
最高出力71PS/最大トルク9.6kgm
2008/11モデル
ダイハツ
1KR-FE型
全18車種
ブーン
[1.0CL]
71PS/9.6kgm
1KR-VET型
全9車種
トヨタ:ライズ [X]
最高出力98PS/最大トルク14.3kgm
2019/11モデル
トヨタ
1KR-VET型
全9車種
ライズ
[X]
98PS/14.3kgm
1KR-VET型
全7車種
ダイハツ:ロッキー [L]
最高出力98PS/最大トルク14.3kgm
2019/11モデル
ダイハツ
1KR-VET型
全7車種
ロッキー
[L]
98PS/14.3kgm
1KR-VET型
全2車種
スバル:ジャスティ [Custom-RS SA]
最高出力98PS/最大トルク14.3kgm
2016/11モデル
スバル
1KR-VET型
全2車種
ジャスティ
[Custom-RS SA]
98PS/14.3kgm

スバル製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】