ここではローバーのXWD16K型・200 [216-Cabriolet|1994/01モデル] に搭載されているD16A8型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
D16A8型の自然吸気エンジン諸元
XWD16K型 200 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | E-XWD16K型 |
---|---|
車名&グレード | 200 216-Cabriolet |
エンジン型式 | D16A8 |
種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 1590cc |
内径×行程 | 75.0mm×90.0mm |
ボアストローク比 | 1.20 |
単気筒容積 | 397.6cc |
圧縮比 | 9.5 |
吸気方式 | 自然吸気 |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 120PS/6800rpm |
最大トルク | 14.2kgm/5700rpm |
まず基本的な成り立ちとして、D16A型エンジンはボア(内径)75.0mm、ストローク(行程)90.0mm、ボアストローク比1.20のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。
なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。
このサイトにて登録されている車種のうち、D16A8型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、1993/01から発売された初代200 [XWD16K型|1994/01]、最も新しい車種は1996/08から発売された初代トゥアラー [XWD16W型|1996/08]となっており、NA車は6車種、ターボ/SC車は0車種の全6車種が登録されています。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
---|---|
馬力の変遷 | 113.0PS → 120PS |
トルクの変遷 | 14.2kgm → 12.6kgm |
リッター馬力 | 75.47PS/L |
リッタートルク | 8.9kgm/L |
今回の参考車両である200の直列4気筒1590cc、圧縮比9.5でハイオクガソリン仕様の自然吸気エンジンは、6800回転のとき最高出力120馬力を、6800回転のとき最大トルク14.2kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する5700回転での馬力は113.0PS、最高出力が発生する6800回転でのトルクは12.6kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は75.47PS/L、トルクは8.9kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積397.6cc)あたりの馬力は30.0PS、トルクは3.5kgmです。
D16A型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 6 ]、換算トルクが[ 4 ]の「標準的な出力(中の上)のエンジン」にカテゴライズされます。
【PR】エンジンオイルの通販革命!高品質×低価格
TAKUMIモーターオイル HIGH QUALITY【5W-30】
排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
---|---|---|---|---|
Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
75.0 | 90.0 | 1590cc | 9.5 | 1.20 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
75.5 | 90.0 | 1612cc | 9.6 | 1.19 |
76.0 | 1633cc | 9.7 | 1.18 | |
76.5 | 1655cc | 9.8 | 1.18 | |
77.0 | 1676cc | 10.0 | 1.17 | |
77.5 | 1698cc | 10.1 | 1.16 | |
78.0 | 1720cc | 10.2 | 1.15 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
75.0 | 91.0 | 1608cc | 9.6 | 1.21 |
92.0 | 1626cc | 9.7 | 1.23 | |
93.0 | 1643cc | 9.8 | 1.24 | |
94.0 | 1661cc | 9.9 | 1.25 | |
95.0 | 1679cc | 10.0 | 1.27 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の75.0mmから0.5mm刻みで78.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の90.0mmから1mm刻みで95.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。D16A型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.20から1.15に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
D16A型エンジンのピストン径75.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが30件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
---|---|---|
日産 GA16型 | 76.0mm [+1.0mm] | 1633cc [+43cc] |
ダイハツ HD型 | 76.0mm [+1.0mm] | 1633cc [+43cc] |
ダイハツ HE型 | 76.0mm [+1.0mm] | 1633cc [+43cc] |
トヨタ HC型 | 76.0mm [+1.0mm] | 1633cc [+43cc] |
日産 VQ20型 | 76.0mm [+1.0mm] | 1633cc [+43cc] |
ダイハツ CB型 | 76.0mm [+1.0mm] | 1633cc [+43cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、日産:EN15型ブルーバードに搭載されるGA16型1596ccの76.0mm、ダイハツ:G311G型パイザーに搭載されるHD型1589ccの76.0mm、ダイハツ:G213S型シャレードに搭載されるHE型1498ccの76.0mm、トヨタ:J100G型テリオスに搭載されるHC型1295ccの76.0mm、日産:A33型セフィーロに搭載されるVQ20型1995ccの76.0mm、ダイハツ:G100S型シャレードに搭載されるCB型993ccの76.0mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 1800ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 1800ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 1800ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 1800ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [1800ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [1800ccクラス]
平均ピストンスピード
|
続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが90.0mmのエンジンが最高出力を発生する6800回転での平均ピストンスピードは20.4m/sとなり、これは1秒間に20.4メートル(時速にすると73.4km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する5700回転では17.1m/s、最高出力が発生する6800回転より500回転高い7300回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は21.9m/sとなっています。
参考までにストロークが90.0mmのD16A型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね6.00m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、6670回転くらいが良い感じの回転数になるのではないかと思いますが、このエンジンは最高出力を発生している時点で既に20.0m/sを超えており、レブリミットを考慮するともう少し余分に(300~500回転?)回ることから、内部では大変なことになりながらも頑張って回っているエンジンです。
D16A8型エンジンを搭載する車種の例
全6車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクよりD16A型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ローバー XWD16K | 1994/01 200 216-Cabriolet [E-XWD16K] | 120PS 14.2kgm - 9.917kg/PS | 自然吸気 FF/4AT オープンカー 4人乗り | |||||||||||||
| ||||||||||||||||
ローバー XWD16 | 1994/10 400 416SLi [E-XWD16] | 120PS 14.2kgm - 9.750kg/PS | 自然吸気 FF/4AT セダン 5人乗り | |||||||||||||
| ||||||||||||||||
ローバー XWD16 | 1994/01 200 216-Coupe [E-XWD16] | 120PS 14.2kgm - 9.667kg/PS | 自然吸気 FF/4AT クーペ 4人乗り | |||||||||||||
| ||||||||||||||||
D16A型エンジン搭載車種の一覧 パワーウェイトレシオ順|全28車種 |
その他のD16A型エンジン型式と代表的な車種
D16A型 全22車種 | ホンダ:CR-X デルソル [VGi] 最高出力130PS/最大トルク14.9kgm 1995/10モデル | |
---|---|---|
ホンダ D16A型 全22車種 | CR-X デルソル [VGi] 130PS/14.9kgm |