ローバー:99M1型エンジンの諸元と性能まとめ [直列4気筒 999cc]

ここではローバーの99XA1型・ミニ [Canvas-Top|1991/07モデル] に搭載されている99M1型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

99M1型の自然吸気エンジン諸元


99XA1型 ミニ
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式E-99XA1(改)型
車名&グレードミニ
Canvas-Top
エンジン型式99M1
種類直列4気筒
排気量999cc
内径×行程64.6mm×76.2mm
ボアストローク比1.18
単気筒容積249.7cc
圧縮比9.6
吸気方式自然吸気
使用燃料ハイオクガソリン
最高出力42PS/5250rpm
最大トルク6.8kgm/2600rpm

まず基本的な成り立ちとして、99M1型エンジンはボア(内径)64.6mm、ストローク(行程)76.2mm、ボアストローク比1.18のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。

なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。

このサイトにて登録されている車種のうち、99M1型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、1959から発売された初代ミニ [99XA1型|1991/06]、最も新しい車種は1959から発売された初代ミニ [99XA1型|1991/07]となっており、NA車は2車種、ターボ/SC車は0車種の全2車種が登録されています。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
99M1のエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷24.7PS → 42PS
トルクの変遷6.8kgm → 5.7kgm
リッター馬力42.04PS/L
リッタートルク6.8kgm/L

今回の参考車両であるミニの直列4気筒999cc、圧縮比9.6でハイオクガソリン仕様の自然吸気エンジンは、5250回転のとき最高出力42馬力を、5250回転のとき最大トルク6.8kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する2600回転での馬力は24.7PS、最高出力が発生する5250回転でのトルクは5.7kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は42.04PS/L、トルクは6.8kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積249.7cc)あたりの馬力は10.5PS、トルクは1.7kgmです。

99M1型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 1 ]、換算トルクが[ 1 ]の「心もとない出力のエンジン」にカテゴライズされます。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
64.676.2999cc9.61.18
ボアアップによる排気量拡大
65.176.21015cc9.81.17
65.61030cc9.91.16
66.11046cc10.01.15
66.61062cc10.11.14
67.11078cc10.31.14
67.61094cc10.41.13
ストロークアップによる排気量拡大
64.677.21012cc9.71.20
78.21025cc9.81.21
79.21038cc10.01.23
80.21051cc10.11.24
81.21065cc10.21.26

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の64.6mmから0.5mm刻みで67.6mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の76.2mmから1mm刻みで81.2mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。99M1型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.18から1.13に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

99M1型エンジンのピストン径64.6mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが4件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
日産
3B20型
65.4mm
[+0.8mm]
1024cc
[+25cc]
ホンダ
E07Z型
66.0mm
[+1.4mm]
1043cc
[+44cc]
ホンダ
E07A型
66.0mm
[+1.4mm]
1043cc
[+44cc]
三菱
4A31型
66.0mm
[+1.4mm]
1043cc
[+44cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、日産:B21A型デイズ ルークスに搭載される3B20型659ccの65.4mm、ホンダ:PA1型ゼットに搭載されるE07Z型656ccの66.0mm、ホンダ:PP1型ビートに搭載されるE07A型656ccの66.0mm、三菱:H57A型パジェロ ジュニアに搭載される4A31型1094ccの66.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 1000ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 1000ccクラスのエンジン
ストロークが短い 1000ccクラスのエンジン
ストロークが長い 1000ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [1000ccクラス]
ボアストローク比・降順 [1000ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
2600rpm
最高出力
5250rpm
76.2mm6.6m/s13.3m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.1m/s18km/h
4000rpm10.2m/s37km/h
6000rpm15.2m/s55km/h
8000rpm20.3m/s73km/h
10000rpm25.4m/s91km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが76.2mmのエンジンが最高出力を発生する5250回転での平均ピストンスピードは13.3m/sとなり、これは1秒間に13.3メートル(時速にすると47.9km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する2600回転では6.6m/s、最高出力が発生する5250回転より500回転高い5750回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は14.6m/sとなっています。

参考までにストロークが76.2mmの99M1型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.07m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)7870回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


99M1型エンジンを搭載する車種の例

全2車種を最高出力が大きいものから順に表示しています。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
ローバー
99XA1
1991/07
ミニ
Canvas-Top
[E-99XA1(改)]
42PS
6.8kgm
11.8km/L
17.381kg/PS
自然吸気
FF/4AT
オープンカー
4人乗り
車両型式:E-99XA1(改)

ミニ
[Canvas-Top]
1991/07モデル
最高出力42PS
最大トルク6.8kgm
10-15モード燃費11.8km/L
吸気方式自然吸気
車体構成4人乗りオープンカー
FF/4AT
ローバー
99XA1
1991/06
ミニ
Mayfair
[E-99XA1]
42PS
6.8kgm
11.7km/L
16.190kg/PS
自然吸気
FF/4AT
ハッチバック
4人乗り
車両型式:E-99XA1

ミニ
[Mayfair]
1991/06モデル
最高出力42PS
最大トルク6.8kgm
10-15モード燃費11.7km/L
吸気方式自然吸気
車体構成4人乗りハッチバック
FF/4AT

ローバー製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】