ここではローバーのRS20T型・800 [820SLi|1994/10モデル] に搭載されている20T型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
20T型の自然吸気エンジン諸元
RS20T型 800 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | E-RS20T型 |
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車名&グレード | 800 820SLi |
エンジン型式 | 20T |
種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 1994cc |
内径×行程 | 84.5mm×88.9mm |
ボアストローク比 | 1.05 |
単気筒容積 | 498.5cc |
圧縮比 | 8.5 |
吸気方式 | 自然吸気 |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 135PS/6000rpm |
最大トルク | 17.9kgm/4500rpm |
まず基本的な成り立ちとして、20T型エンジンはボア(内径)84.5mm、ストローク(行程)88.9mm、ボアストローク比1.05のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。
なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。
このサイトにて20T型の自然吸気エンジンを搭載している車種は、1986から発売された初代800 [RS20T型|1994/10]となっており、1車種のNA車が登録されています。
関連ページ
ローバー:20T型 ターボ/SCエンジン 諸元と性能まとめ
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 112.4PS → 135PS |
トルクの変遷 | 17.9kgm → 16.1kgm |
リッター馬力 | 67.70PS/L |
リッタートルク | 9.0kgm/L |
今回の参考車両である800の直列4気筒1994cc、圧縮比8.5でハイオクガソリン仕様の自然吸気エンジンは、6000回転のとき最高出力135馬力を、6000回転のとき最大トルク17.9kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4500回転での馬力は112.4PS、最高出力が発生する6000回転でのトルクは16.1kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は67.70PS/L、トルクは9.0kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積498.5cc)あたりの馬力は33.8PS、トルクは4.5kgmです。
20T型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 5 ]、換算トルクが[ 4 ]の「標準的な出力(中の下)のエンジン」にカテゴライズされます。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
84.5 | 88.9 | 1994cc | 8.5 | 1.05 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
85.0 | 88.9 | 2018cc | 8.6 | 1.05 |
85.5 | 2042cc | 8.7 | 1.04 | |
86.0 | 2066cc | 8.8 | 1.03 | |
86.5 | 2090cc | 8.8 | 1.03 | |
87.0 | 2114cc | 8.9 | 1.02 | |
87.5 | 2138cc | 9.0 | 1.02 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
84.5 | 89.9 | 2017cc | 8.6 | 1.06 |
90.9 | 2039cc | 8.7 | 1.08 | |
91.9 | 2061cc | 8.7 | 1.09 | |
92.9 | 2084cc | 8.8 | 1.10 | |
93.9 | 2106cc | 8.9 | 1.11 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の84.5mmから0.5mm刻みで87.5mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の88.9mmから1mm刻みで93.9mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。20T型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.05から1.02に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
20T型エンジンのピストン径84.5mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが52件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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トヨタ 3S型 | 86.0mm [+1.5mm] | 2066cc [+72cc] |
日産 SR20型 | 86.0mm [+1.5mm] | 2066cc [+72cc] |
トヨタ 1JZ型 | 86.0mm [+1.5mm] | 2066cc [+72cc] |
日産 RB25型 | 86.0mm [+1.5mm] | 2066cc [+72cc] |
トヨタ 1AZ型 | 86.0mm [+1.5mm] | 2066cc [+72cc] |
トヨタ 2JZ型 | 86.0mm [+1.5mm] | 2066cc [+72cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、トヨタ:SXE10型ビスタに搭載される3S型1998ccの86.0mm、日産:HP12型プリメーラ 20Vに搭載されるSR20型1998ccの86.0mm、トヨタ:JCG10型ブレビスに搭載される1JZ型2491ccの86.0mm、日産:ER34型スカイライン セダンに搭載されるRB25型2498ccの86.0mm、トヨタ:AZR60G型ヴォクシーに搭載される1AZ型1998ccの86.0mm、トヨタ:JZS177型クラウン マジェスタに搭載される2JZ型2997ccの86.0mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 2000ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 2000ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 2000ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 2000ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [2000ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [2000ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが88.9mmのエンジンが最高出力を発生する6000回転での平均ピストンスピードは17.8m/sとなり、これは1秒間に17.8メートル(時速にすると64.1km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する4500回転では13.3m/s、最高出力が発生する6000回転より500回転高い6500回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は19.3m/sとなっています。
参考までにストロークが88.9mmの20T型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.93m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6750回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
20T型NAエンジンを搭載する車種の例
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||
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ローバー RS20T | 1994/10 800 820SLi [E-RS20T] | 135PS 17.9kgm - 10.370kg/PS | 自然吸気 FF/4AT セダン 5人乗り | |||||||||||||
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