ここでは日産のBCNR33型・スカイラインGT-R [GT-R NISMO 400R|1996/01モデル] に搭載されているRB-X GT2型のツインターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
RB-X GT2型のツインターボエンジン諸元
BCNR33型 スカイラインGT-R 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | E-BCNR33型 |
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車名&グレード | スカイラインGT-R GT-R NISMO 400R |
エンジン型式 | RB-X GT2 |
種類 | 直列6気筒 |
排気量 | 2771cc |
内径×行程 | 87.0mm×77.7mm |
ボアストローク比 | 0.89 |
単気筒容積 | 461.9cc |
圧縮比 | 8.5 |
吸気方式 | ツインターボ |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 400PS/6800rpm |
最大トルク | 47.8kgm/4400rpm |
まず基本的な成り立ちとして、RB-X GT2型エンジンはボア(内径)87.0mm、ストローク(行程)77.7mm、ボアストローク比0.89のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。
また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 293.6PS → 400PS |
トルクの変遷 | 47.8kgm → 42.1kgm |
リッター馬力 | 144.35PS/L |
リッタートルク | 17.2kgm/L |
今回の参考車両であるスカイラインGT-Rの直列6気筒2771cc、圧縮比8.5でハイオクガソリン仕様のツインターボエンジンは、6800回転のとき最高出力400馬力を、6800回転のとき最大トルク47.8kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4400回転での馬力は293.6PS、最高出力が発生する6800回転でのトルクは42.1kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は144.35PS/L、トルクは17.2kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積461.9cc)あたりの馬力は66.7PS、トルクは8.0kgmです。
RB-X GT2型ツインターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 10 ]、換算トルクが[ 7 ]の「稀に見る高出力エンジン」にカテゴライズされます。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
87.0 | 77.7 | 2771cc | 8.5 | 0.89 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
87.5 | 77.7 | 2803cc | 8.6 | 0.89 |
88.0 | 2835cc | 8.7 | 0.88 | |
88.5 | 2868cc | 8.8 | 0.88 | |
89.0 | 2900cc | 8.8 | 0.87 | |
89.5 | 2933cc | 8.9 | 0.87 | |
90.0 | 2966cc | 9.0 | 0.86 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
87.0 | 78.7 | 2807cc | 8.6 | 0.90 |
79.7 | 2843cc | 8.7 | 0.92 | |
80.7 | 2878cc | 8.8 | 0.93 | |
81.7 | 2914cc | 8.9 | 0.94 | |
82.7 | 2950cc | 9.0 | 0.95 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の87.0mmから0.5mm刻みで90.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の77.7mmから1mm刻みで82.7mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.89からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。RB-X GT2型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.89から0.86に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
RB-X GT2型エンジンのピストン径87.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが3件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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いすゞ 4ZC1型 | 88.0mm [+1.0mm] | 2835cc [+64cc] |
マツダ PY型 | 89.0mm [+2.0mm] | 2900cc [+129cc] |
日産 YD25型 | 89.0mm [+2.0mm] | 2900cc [+129cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、いすゞ:JR120型ピアッツァに搭載される4ZC1型1994ccの88.0mm、マツダ:KF5P型CX-5に搭載されるPY型2488ccの89.0mm、日産:VNC24型セレナに搭載されるYD25型2488ccの89.0mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 3000ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 3000ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 3000ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 3000ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [3000ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [3000ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが77.7mmのエンジンが最高出力を発生する6800回転での平均ピストンスピードは17.6m/sとなり、これは1秒間に17.6メートル(時速にすると63.4km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する4400回転では11.4m/s、最高出力が発生する6800回転より500回転高い7300回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は18.9m/sとなっています。
参考までにストロークが77.7mmのRB-X GT2型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.17m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)7720回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
RB-X GT2型エンジンを搭載する車種の例
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||||
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日産 BCNR33 | 1996/01 スカイラインGT-R GT-R NISMO 400R [E-BCNR33] | 400PS 47.8kgm 7.7km/L 3.875kg/PS | ターボ 4WD/5MT クーペ 4人乗り | |||||||||||||||
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