ベンツ:M275型エンジンの諸元と性能まとめ [V型12気筒 5513cc]

ここではベンツの221176型・Sクラス [S660 Long W221|2011/11モデル] に搭載されているM275型のツインターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

M275型のツインターボエンジン諸元


221176型 Sクラス
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式ABA-221176型
車名&グレードSクラス
S660 Long W221
エンジン型式M275
種類V型12気筒
排気量5513cc
内径×行程82.0mm×87.0mm
ボアストローク比1.06
単気筒容積459.4cc
圧縮比9.0
吸気方式ツインターボ
使用燃料ハイオクガソリン
最高出力517PS/5000rpm
最大トルク84.6kgm/1900-3500rpm

まず基本的な成り立ちとして、M275型エンジンはボア(内径)82.0mm、ストローク(行程)87.0mm、ボアストローク比1.06のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。

なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。

このサイトにて登録されている車種のうち、M275型のツインターボエンジンを搭載する最も古い車種は、1998/11から発売された4代目Sクラス [220176型|2004/07]、最も新しい車種は2005/10から発売された5代目Sクラス [221176型|2011/11]となっており、NA車は0車種、ターボ/SC車は5車種の全5車種が登録されています。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
M275のエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷224.4PS → 517PS
トルクの変遷84.6kgm → 74.1kgm
リッター馬力93.8PS/L
リッタートルク15.3kgm/L

今回の参考車両であるSクラスのV型12気筒5513cc、圧縮比9.0でハイオクガソリン仕様のツインターボエンジンは、5000回転のとき最高出力517馬力を、5000回転のとき最大トルク84.6kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する1900回転での馬力は224.4PS、最高出力が発生する5000回転でのトルクは74.1kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は93.8PS/L、トルクは15.3kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積459.4cc)あたりの馬力は43.1PS、トルクは7.0kgmです。

M275型ツインターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 5 ]、換算トルクが[ 6 ]の「標準的な出力(中の下)のエンジン」にカテゴライズされます。

ちなみに、M275型のターボ・SCエンジン搭載車種のうち、最高出力が最も大きかったのは221176型Sクラスの517PS/84.6kgm、最も小さかったのは220176型Sクラスの500PS/81.6kgmとなっています。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
82.087.05513cc9.01.06
ボアアップによる排気量拡大
82.587.05581cc9.11.05
83.05649cc9.21.05
83.55717cc9.31.04
84.05785cc9.41.04
84.55855cc9.51.03
85.05924cc9.61.02
ストロークアップによる排気量拡大
82.088.05577cc9.11.07
89.05640cc9.21.09
90.05703cc9.31.10
91.05767cc9.41.11
92.05830cc9.51.12

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の82.0mmから0.5mm刻みで85.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の87.0mmから1mm刻みで92.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。M275型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.06から1.02に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

M275型エンジンのピストン径82.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが13件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
三菱
4D68型
82.7mm
[+0.7mm]
5608cc
[+95cc]
日産
m274型
83.0mm
[+1.0mm]
5649cc
[+136cc]
マツダ
BP型
83.0mm
[+1.0mm]
5649cc
[+136cc]
トヨタ
7M型
83.0mm
[+1.0mm]
5649cc
[+136cc]
日産
CA18型
83.0mm
[+1.0mm]
5649cc
[+136cc]
日産
274930型
83.0mm
[+1.0mm]
5649cc
[+136cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、三菱:N28WG型RVRに搭載される4D68型1998ccの82.7mm、日産:YV37型スカイラインに搭載されるm274型1991ccの83.0mm、マツダ:NB8C型ロードスターに搭載されるBP型1839ccの83.0mm、トヨタ:MZ20型ソアラに搭載される7M型2954ccの83.0mm、日産:S13型シルビアに搭載されるCA18型1809ccの83.0mm、日産:ZV37型スカイラインに搭載される274930型1991ccの83.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 5000cc超のエンジン
ピストン径が大きい 5000cc超のエンジン
ストロークが短い 5000cc超のエンジン
ストロークが長い 5000cc超のエンジン
ボアストローク比・昇順 [5000cc超]
ボアストローク比・降順 [5000cc超]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
1900rpm
最高出力
5000rpm
87.0mm5.5m/s14.5m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.8m/s21km/h
4000rpm11.6m/s42km/h
6000rpm17.4m/s63km/h
8000rpm23.2m/s84km/h
10000rpm29.0m/s104km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが87.0mmのエンジンが最高出力を発生する5000回転での平均ピストンスピードは14.5m/sとなり、これは1秒間に14.5メートル(時速にすると52.2km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する1900回転では5.5m/s、最高出力が発生する5000回転より500回転高い5500回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は15.9m/sとなっています。

参考までにストロークが87.0mmのM275型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.80m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6900回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


M275型エンジンを搭載する車種の例

全5車種を最高出力が大きいものから順に表示しています。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
ベンツ
221176
2011/11
Sクラス
S660 Long W221
[ABA-221176]
517PS
84.6kgm
5.9km/L
4.260kg/PS
ターボ
FR/5AT
セダン
5人乗り

Sクラス
[S660 Long W221]
2011/11モデル
車両型式ABA-221176
最高出力517PS
最大トルク84.6kgm
10-15モード燃費5.9km/L
パワーウェイト4.260kg/PS
吸気方式ターボ
駆動方式&変速機FR/5AT
車体形状&乗車定員セダン/5人乗り
ベンツ
216376
2011/07
CLクラス
CL600 C216
[ABA-216376]
517PS
84.6kgm
5.7km/L
4.120kg/PS
ターボ
FR/5AT
クーペ
4人乗り

CLクラス
[CL600 C216]
2011/07モデル
車両型式ABA-216376
最高出力517PS
最大トルク84.6kgm
10-15モード燃費5.7km/L
パワーウェイト4.120kg/PS
吸気方式ターボ
駆動方式&変速機FR/5AT
車体形状&乗車定員クーペ/4人乗り
ベンツ
230477
2011/05
SLクラス
SL600 R230
[ABA-230477]
517PS
84.6kgm
5.8km/L
3.830kg/PS
ターボ
FR/5AT
オープンカー
2人乗り

SLクラス
[SL600 R230]
2011/05モデル
車両型式ABA-230477
最高出力517PS
最大トルク84.6kgm
10-15モード燃費5.8km/L
パワーウェイト3.830kg/PS
吸気方式ターボ
駆動方式&変速機FR/5AT
車体形状&乗車定員オープンカー/2人乗り
ベンツ
220176
2004/07
Sクラス
S660 Long W220
[GH-220176]
500PS
81.6kgm
5.4km/L
4.200kg/PS
ターボ
FR/5AT
セダン
5人乗り

Sクラス
[S660 Long W220]
2004/07モデル
車両型式GH-220176
最高出力500PS
最大トルク81.6kgm
10-15モード燃費5.4km/L
パワーウェイト4.200kg/PS
吸気方式ターボ
駆動方式&変速機FR/5AT
車体形状&乗車定員セダン/5人乗り
ベンツ
215376
2004/07
CLクラス
CL600 C215
[GH-215376]
500PS
81.6kgm
5.4km/L
4.040kg/PS
ターボ
FR/5AT
クーペ
4人乗り

CLクラス
[CL600 C215]
2004/07モデル
車両型式GH-215376
最高出力500PS
最大トルク81.6kgm
10-15モード燃費5.4km/L
パワーウェイト4.040kg/PS
吸気方式ターボ
駆動方式&変速機FR/5AT
車体形状&乗車定員クーペ/4人乗り

ベンツ製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】