ベンツ:M272型エンジンの諸元と性能まとめ [V型6気筒 3497cc]

ここではベンツの230458型・SLクラス [SL350 R230|2011/05モデル] に搭載されているM272型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

M272型の自然吸気エンジン諸元


230458型 SLクラス
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式DBA-230458型
車名&グレードSLクラス
SL350 R230
エンジン型式M272
種類V型6気筒
排気量3497cc
内径×行程92.9mm×86.0mm
ボアストローク比0.93
単気筒容積582.9cc
圧縮比11.7
吸気方式自然吸気
使用燃料ハイオクガソリン
最高出力316PS/6500rpm
最大トルク36.7kgm/4900rpm

まず基本的な成り立ちとして、M272型エンジンはボア(内径)92.9mm、ストローク(行程)86.0mm、ボアストローク比0.93のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。

また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。

このサイトにて登録されている車種のうち、M272型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、2002/04から発売された2代目CLKクラス [209356型|2008/01]、最も新しい車種は2005/10から発売された5代目Sクラス [221195型|2011/11]となっており、NA車は16車種、ターボ/SC車は0車種の全16車種が登録されています。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
M272のエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷251.0PS → 316PS
トルクの変遷36.7kgm → 34.8kgm
リッター馬力90.36PS/L
リッタートルク10.5kgm/L

今回の参考車両であるSLクラスのV型6気筒3497cc、圧縮比11.7でハイオクガソリン仕様の自然吸気エンジンは、6500回転のとき最高出力316馬力を、6500回転のとき最大トルク36.7kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4900回転での馬力は251.0PS、最高出力が発生する6500回転でのトルクは34.8kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は90.36PS/L、トルクは10.5kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積582.9cc)あたりの馬力は52.7PS、トルクは6.1kgmです。

M272型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 8 ]、換算トルクが[ 8 ]の「結構な高出力エンジン」にカテゴライズされます。

ちなみに、M272型のターボ・SCエンジン搭載車種のうち、最高出力が最も大きかったのは230458型SLクラスの316PS/36.7kgm、最も小さかったのは639350C型Vクラスの258PS/34.7kgmとなっています。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
92.986.03497cc11.70.93
ボアアップによる排気量拡大
93.486.03535cc11.80.92
93.93573cc11.90.92
94.43611cc12.00.91
94.93650cc12.20.91
95.43688cc12.30.90
95.93727cc12.40.90
ストロークアップによる排気量拡大
92.987.03538cc11.80.94
88.03579cc11.90.95
89.03620cc12.10.96
90.03660cc12.20.97
91.03701cc12.30.98

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の92.9mmから0.5mm刻みで95.9mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の86.0mmから1mm刻みで91.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.93からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。M272型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.93から0.90に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

M272型エンジンのピストン径92.9mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが20件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
トヨタ
5VZ型
93.5mm
[+0.6mm]
3543cc
[+46cc]
レクサス
2GR型
94.0mm
[+1.1mm]
3581cc
[+84cc]
レクサス
2UR型
94.0mm
[+1.1mm]
3581cc
[+84cc]
レクサス
1UR型
94.0mm
[+1.1mm]
3581cc
[+84cc]
トヨタ
FA24型
94.0mm
[+1.1mm]
3581cc
[+84cc]
レクサス
8GR型
94.0mm
[+1.1mm]
3581cc
[+84cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、トヨタ:VZN215W型ハイラックスサーフに搭載される5VZ型3378ccの93.5mm、レクサス:GSU30W型マークX GRMNに搭載される2GR型3456ccの94.0mm、レクサス:UWG60型センチュリーに搭載される2UR型4968ccの94.0mm、レクサス:USF40型ランドクルーザーに搭載される1UR型4608ccの94.0mm、トヨタ:VBH型WRX S4に搭載されるFA24型2387ccの94.0mm、レクサス:GVF50型クラウンに搭載される8GR型3456ccの94.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 3500ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 3500ccクラスのエンジン
ストロークが短い 3500ccクラスのエンジン
ストロークが長い 3500ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [3500ccクラス]
ボアストローク比・降順 [3500ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
4900rpm
最高出力
6500rpm
86.0mm14.0m/s18.6m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.7m/s21km/h
4000rpm11.5m/s41km/h
6000rpm17.2m/s62km/h
8000rpm22.9m/s82km/h
10000rpm28.7m/s103km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが86.0mmのエンジンが最高出力を発生する6500回転での平均ピストンスピードは18.6m/sとなり、これは1秒間に18.6メートル(時速にすると67.0km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する4900回転では14.0m/s、最高出力が発生する6500回転より500回転高い7000回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は20.1m/sとなっています。

参考までにストロークが86.0mmのM272型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.75m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6980回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


M272型エンジンを搭載する車種の例

全16車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクよりM272型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
ベンツ
230458
2011/05
SLクラス
SL350 R230
[DBA-230458]
316PS
36.7kgm
8.6km/L
5.633kg/PS
自然吸気
FR/7AT
オープンカー
2人乗り
車両型式:DBA-230458

SLクラス
[SL350 R230]
2011/05モデル
最高出力316PS
最大トルク36.7kgm
10-15モード燃費8.6km/L
吸気方式自然吸気
車体構成2人乗りオープンカー
FR/7AT
ベンツ
171458
2008/10
SLKクラス
SLK350 R171
[DBA-171458]
305PS
36.7kgm
9.1km/L
4.918kg/PS
自然吸気
FR/7AT
オープンカー
2人乗り
車両型式:DBA-171458

SLKクラス
[SLK350 R171]
2008/10モデル
最高出力305PS
最大トルク36.7kgm
10-15モード燃費9.1km/L
吸気方式自然吸気
車体構成2人乗りオープンカー
FR/7AT
ベンツ
221195
2011/11
Sクラス
Hybrid Long W221
[DAA-221195]
279PS
35.7kgm
11.2km/L
7.419kg/PS
自然吸気
FR/7AT
セダン
5人乗り
車両型式:DAA-221195

Sクラス
[Hybrid Long W221]
2011/11モデル
最高出力279PS
最大トルク35.7kgm
10-15モード燃費11.2km/L
吸気方式自然吸気
車体構成5人乗りセダン
FR/7AT
M272型エンジン搭載車種の一覧
パワーウェイトレシオ順|全16車種

ベンツ製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】