ベンツ:M113型エンジンの諸元と性能まとめ [V型8気筒 4965cc]

ここではベンツの230475型・SLクラス [SL500 R230|2005/08モデル] に搭載されているM113型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

M113型の自然吸気エンジン諸元


230475型 SLクラス
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式CBA-230475型
車名&グレードSLクラス
SL500 R230
エンジン型式M113
種類V型8気筒
排気量4965cc
内径×行程97.0mm×84.0mm
ボアストローク比0.87
単気筒容積620.7cc
圧縮比10.0
吸気方式自然吸気
使用燃料ハイオクガソリン
最高出力306PS/5600rpm
最大トルク46.9kgm/2700-4250rpm

まず基本的な成り立ちとして、M113型エンジンはボア(内径)97.0mm、ストローク(行程)84.0mm、ボアストローク比0.87のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。

また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。

このサイトにて登録されている車種のうち、M113型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、1989/10から発売された4代目SLクラス [129068型|2000/01]、最も新しい車種は1994/12から発売された2代目Gクラス [463248型|2008/01]となっており、NA車は12車種、ターボ/SC車は0車種の全12車種が登録されています。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
M113のエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷176.8PS → 306PS
トルクの変遷46.9kgm → 39.1kgm
リッター馬力61.6PS/L
リッタートルク9.4kgm/L

今回の参考車両であるSLクラスのV型8気筒4965cc、圧縮比10.0でハイオクガソリン仕様の自然吸気エンジンは、5600回転のとき最高出力306馬力を、5600回転のとき最大トルク46.9kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する2700回転での馬力は176.8PS、最高出力が発生する5600回転でのトルクは39.1kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は61.6PS/L、トルクは9.4kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積620.7cc)あたりの馬力は38.2PS、トルクは5.9kgmです。

M113型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 4 ]、換算トルクが[ 6 ]の「やや控えめな出力のエンジン」にカテゴライズされます。

ちなみに、M113型のターボ・SCエンジン搭載車種のうち、最高出力が最も大きかったのは230475型SLクラスの306PS/46.9kgm、最も小さかったのは463248型Gクラスの296PS/46.5kgmとなっています。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
97.084.04965cc10.00.87
ボアアップによる排気量拡大
97.584.05017cc10.10.86
98.05069cc10.20.86
98.55121cc10.30.85
99.05173cc10.40.85
99.55225cc10.50.84
100.05278cc10.60.84
ストロークアップによる排気量拡大
97.085.05025cc10.10.88
86.05084cc10.20.89
87.05143cc10.30.90
88.05202cc10.40.91
89.05261cc10.50.92

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の97.0mmから0.5mm刻みで100.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の84.0mmから1mm刻みで89.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.87からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。M113型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.87から0.84に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

M113型エンジンのピストン径97.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが4件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
スバル
EJ25型
99.5mm
[+2.5mm]
5225cc
[+260cc]
日産
TB48型
99.5mm
[+2.5mm]
5225cc
[+260cc]
日産
TB45型
99.5mm
[+2.5mm]
5225cc
[+260cc]
トヨタ
1FZ型
100.0mm
[+3.0mm]
5278cc
[+313cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、スバル:GRF型インプレッサ STIに搭載されるEJ25型2457ccの99.5mm、日産:WFGY61型サファリに搭載されるTB48型4758ccの99.5mm、日産:WGY61型サファリに搭載されるTB45型4478ccの99.5mm、トヨタ:FZJ80G型ランドクルーザー80に搭載される1FZ型4476ccの100.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 5000ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 5000ccクラスのエンジン
ストロークが短い 5000ccクラスのエンジン
ストロークが長い 5000ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [5000ccクラス]
ボアストローク比・降順 [5000ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
2700rpm
最高出力
5600rpm
84.0mm7.6m/s15.7m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.6m/s20km/h
4000rpm11.2m/s40km/h
6000rpm16.8m/s60km/h
8000rpm22.4m/s81km/h
10000rpm28.0m/s101km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが84.0mmのエンジンが最高出力を発生する5600回転での平均ピストンスピードは15.7m/sとなり、これは1秒間に15.7メートル(時速にすると56.5km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する2700回転では7.6m/s、最高出力が発生する5600回転より500回転高い6100回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は17.1m/sとなっています。

参考までにストロークが84.0mmのM113型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.60m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)7140回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


M113型エンジンを搭載する車種の例

全12車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクよりM113型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
ベンツ
230475
2005/08
SLクラス
SL500 R230
[CBA-230475]
306PS
46.9kgm
7.0km/L
6.050kg/PS
自然吸気
FR/7AT
オープンカー
2人乗り

SLクラス
[SL500 R230]
2005/08モデル
車両型式CBA-230475
最高出力306PS
最大トルク46.9kgm
10-15モード燃費7.0km/L
パワーウェイト6.050kg/PS
吸気方式自然吸気
駆動方式&変速機FR/7AT
車体形状&乗車定員オープンカー/2人乗り
ベンツ
211070
2005/08
Eクラス
E500 Avantgarde W211
[CBA-211070]
306PS
46.9kgm
7.6km/L
5.850kg/PS
自然吸気
FR/7AT
セダン
5人乗り

Eクラス
[E500 Avantgarde W211]
2005/08モデル
車両型式CBA-211070
最高出力306PS
最大トルク46.9kgm
10-15モード燃費7.6km/L
パワーウェイト5.850kg/PS
吸気方式自然吸気
駆動方式&変速機FR/7AT
車体形状&乗車定員セダン/5人乗り
ベンツ
219375
2005/02
CLSクラス
CLS500 W219
[CBA-219375]
306PS
46.9kgm
7.0km/L
5.820kg/PS
自然吸気
FR/7AT
セダン
4人乗り

CLSクラス
[CLS500 W219]
2005/02モデル
車両型式CBA-219375
最高出力306PS
最大トルク46.9kgm
10-15モード燃費7.0km/L
パワーウェイト5.820kg/PS
吸気方式自然吸気
駆動方式&変速機FR/7AT
車体形状&乗車定員セダン/4人乗り
M113型エンジン搭載車種の一覧
パワーウェイトレシオ順|全12車種

ベンツ製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】