ベンツ:M112型の過給エンジンの諸元と性能まとめ [V型6気筒 3199cc]

ここではベンツの203065型・Cクラス セダン AMG [C32 AMG W203|2004/04モデル] に搭載されているM112型のスーパーチャージャーエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

M112型のスーパーチャージャーエンジン諸元


203065型 Cクラス セダン AMG
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式GH-203065型
車名&グレードCクラス セダン AMG
C32 AMG W203
エンジン型式M112
種類V型6気筒
排気量3199cc
内径×行程89.9mm×84.0mm
ボアストローク比0.93
単気筒容積533.2cc
圧縮比9.0
吸気方式スーパーチャージャー
使用燃料ハイオクガソリン
最高出力353PS/6100rpm
最大トルク45.9kgm/4400rpm

まず基本的な成り立ちとして、M112型エンジンはボア(内径)89.9mm、ストローク(行程)84.0mm、ボアストローク比0.93のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。

また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。

このサイトにてM112型のスーパーチャージャーエンジンを搭載している車種は、2000/09から発売された2代目Cクラス セダン AMG [203065型|2004/04]となっており、3車種のターボ/SC車が登録されています。

関連ページ
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過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
M112のエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷281.9PS → 353PS
トルクの変遷45.9kgm → 41.5kgm
リッター馬力110.35PS/L
リッタートルク14.3kgm/L

今回の参考車両であるCクラス セダン AMGのV型6気筒3199cc、圧縮比9.0でハイオクガソリン仕様のスーパーチャージャーエンジンは、6100回転のとき最高出力353馬力を、6100回転のとき最大トルク45.9kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4400回転での馬力は281.9PS、最高出力が発生する6100回転でのトルクは41.5kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は110.35PS/L、トルクは14.3kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積533.2cc)あたりの馬力は58.8PS、トルクは7.6kgmです。

M112型スーパーチャージャーエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 7 ]、換算トルクが[ 5 ]の「なかなかの高出力エンジン」にカテゴライズされます。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
89.984.03199cc9.00.93
ボアアップによる排気量拡大
90.484.03235cc9.10.93
90.93271cc9.20.92
91.43307cc9.30.92
91.93343cc9.40.91
92.43379cc9.40.91
92.93416cc9.50.90
ストロークアップによる排気量拡大
89.985.03237cc9.10.95
86.03275cc9.20.96
87.03313cc9.30.97
88.03351cc9.40.98
89.03390cc9.50.99

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の89.9mmから0.5mm刻みで92.9mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の84.0mmから1mm刻みで89.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.93からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。M112型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.93から0.90に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

M112型エンジンのピストン径89.9mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが12件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
トヨタ
3UZ型
91.0mm
[+1.1mm]
3278cc
[+79cc]
ホンダ
JNC型
91.0mm
[+1.1mm]
3278cc
[+79cc]
三菱
6G72型
91.1mm
[+1.2mm]
3285cc
[+86cc]
三菱
4D56型
91.1mm
[+1.2mm]
3285cc
[+86cc]
三菱
G54B型
91.1mm
[+1.2mm]
3285cc
[+86cc]
スバル
EJ20型
92.0mm
[+2.1mm]
3350cc
[+151cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、トヨタ:UCF30型セルシオ V430-Rに搭載される3UZ型4292ccの91.0mm、ホンダ:NC1型NSXに搭載されるJNC型3492ccの91.0mm、三菱:Z16A型GTOに搭載される6G72型2972ccの91.1mm、三菱:PC5W型デリカ スペースギアに搭載される4D56型2476ccの91.1mm、三菱:A187A型スタリオンに搭載されるG54B型2555ccの91.1mm、スバル:BL5型レガシィB4に搭載されるEJ20型1994ccの92.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 3500ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 3500ccクラスのエンジン
ストロークが短い 3500ccクラスのエンジン
ストロークが長い 3500ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [3500ccクラス]
ボアストローク比・降順 [3500ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
4400rpm
最高出力
6100rpm
84.0mm12.3m/s17.1m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.6m/s20km/h
4000rpm11.2m/s40km/h
6000rpm16.8m/s60km/h
8000rpm22.4m/s81km/h
10000rpm28.0m/s101km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが84.0mmのエンジンが最高出力を発生する6100回転での平均ピストンスピードは17.1m/sとなり、これは1秒間に17.1メートル(時速にすると61.6km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する4400回転では12.3m/s、最高出力が発生する6100回転より500回転高い6600回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は18.5m/sとなっています。

参考までにストロークが84.0mmのM112型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.60m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)7140回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


M112型の過給エンジンを搭載する車種の例

全3車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクよりM112型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
ベンツ
203065
2004/04
Cクラス セダン AMG
C32 AMG W203
[GH-203065]
353PS
45.9kgm
7.9km/L
4.561kg/PS
SC
FR/5AT
セダン
5人乗り
車両型式:GH-203065

Cクラス セダン AMG
[C32 AMG W203]
2004/04モデル
最高出力353PS
最大トルク45.9kgm
10-15モード燃費7.9km/L
吸気方式SC
車体構成5人乗りセダン
FR/5AT
ベンツ
170466
2004/04
SLKクラス
SLK32-AMG R170
[GH-170466]
353PS
45.9kgm
8.2km/L
4.164kg/PS
SC
FR/5AT
オープンカー
2人乗り
車両型式:GH-170466

SLKクラス
[SLK32-AMG R170]
2004/04モデル
最高出力353PS
最大トルク45.9kgm
10-15モード燃費8.2km/L
吸気方式SC
車体構成2人乗りオープンカー
FR/5AT
ベンツ
203265
2004/04
Cクラス ステーションワゴン AMG
C32 AMG SW S203
[GH-203265]
353PS
45.9kgm
7.9km/L
4.731kg/PS
SC
FR/5AT
ワゴン
5人乗り
車両型式:GH-203265

Cクラス ステーションワゴン AMG
[C32 AMG SW S203]
2004/04モデル
最高出力353PS
最大トルク45.9kgm
10-15モード燃費7.9km/L
吸気方式SC
車体構成5人乗りワゴン
FR/5AT
M112型エンジン搭載車種の一覧
パワーウェイトレシオ順|全26車種

その他のM112型エンジン型式と代表的な車種

M112型
全2車種
クライスラー:クロスファイア [Coupe]
最高出力218PS/最大トルク31.6kgm
2004/09モデル
クライスラー
M112型
全2車種
クロスファイア
[Coupe]
218PS/31.6kgm
M112型
全1車種
AMG:CLKクラス [CLK320 C208]
最高出力218PS/最大トルク31.4kgm
1999/10モデル
AMG
M112型
全1車種
CLKクラス
[CLK320 C208]
218PS/31.4kgm

ベンツ製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】