ベンツ:M1026型エンジンの諸元と性能まとめ [直列4気筒 1995cc]

ここではベンツの201024型・190クラス [190E W201|1991/08モデル] に搭載されているM1026型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

M1026型の自然吸気エンジン諸元


201024型 190クラス
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式E-201024型
車名&グレード190クラス
190E W201
エンジン型式M1026
種類直列4気筒
排気量1995cc
内径×行程89.0mm×80.2mm
ボアストローク比0.90
単気筒容積498.9cc
圧縮比9.1
吸気方式自然吸気
使用燃料ハイオクガソリン
最高出力115PS/5100rpm
最大トルク17.5kgm/3500rpm

まず基本的な成り立ちとして、M1026型エンジンはボア(内径)89.0mm、ストローク(行程)80.2mm、ボアストローク比0.90のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。

また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
M1026のエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷85.5PS → 115PS
トルクの変遷17.5kgm → 16.2kgm
リッター馬力57.64PS/L
リッタートルク8.8kgm/L

今回の参考車両である190クラスの直列4気筒1995cc、圧縮比9.1でハイオクガソリン仕様の自然吸気エンジンは、5100回転のとき最高出力115馬力を、5100回転のとき最大トルク17.5kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する3500回転での馬力は85.5PS、最高出力が発生する5100回転でのトルクは16.2kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は57.64PS/L、トルクは8.8kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積498.9cc)あたりの馬力は28.8PS、トルクは4.4kgmです。

M1026型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 3 ]、換算トルクが[ 4 ]の「控えめな出力のエンジン」にカテゴライズされます。

【PR】エンジンオイルの通販革命!高品質×低価格
TAKUMIモーターオイル HIGH QUALITY【5W-30】


排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
89.080.21995cc9.10.90
ボアアップによる排気量拡大
89.580.22018cc9.20.90
90.02041cc9.30.89
90.52064cc9.40.89
91.02086cc9.50.88
91.52109cc9.60.88
92.02132cc9.70.87
ストロークアップによる排気量拡大
89.081.22021cc9.20.91
82.22045cc9.30.92
83.22070cc9.40.93
84.22095cc9.50.95
85.22120cc9.60.96

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の89.0mmから0.5mm刻みで92.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の80.2mmから1mm刻みで85.2mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.90からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。M1026型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.90から0.87に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

M1026型エンジンのピストン径89.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが21件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
レクサス
2AR型
90.0mm
[+1.0mm]
2041cc
[+46cc]
マツダ
JE型
90.0mm
[+1.0mm]
2041cc
[+46cc]
ホンダ
C30A型
90.0mm
[+1.0mm]
2041cc
[+46cc]
ホンダ
C32A型
90.0mm
[+1.0mm]
2041cc
[+46cc]
ホンダ
J37A型
90.0mm
[+1.0mm]
2041cc
[+46cc]
トヨタ
T2型
90.0mm
[+1.0mm]
2041cc
[+46cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、レクサス:AGH30W型クラウン ハイブリッドに搭載される2AR型2493ccの90.0mm、マツダ:HEEA型ルーチェに搭載されるJE型2954ccの90.0mm、ホンダ:NA1型NSXに搭載されるC30A型2977ccの90.0mm、ホンダ:KA8型レジェンド クーペに搭載されるC32A型3206ccの90.0mm、ホンダ:KB2型レジェンドに搭載されるJ37A型3664ccの90.0mm、トヨタ:TJG00型キャバリエに搭載されるT2型2392ccの90.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 2000ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 2000ccクラスのエンジン
ストロークが短い 2000ccクラスのエンジン
ストロークが長い 2000ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [2000ccクラス]
ボアストローク比・降順 [2000ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
3500rpm
最高出力
5100rpm
80.2mm9.4m/s13.6m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.3m/s19km/h
4000rpm10.7m/s39km/h
6000rpm16.0m/s58km/h
8000rpm21.4m/s77km/h
10000rpm26.7m/s96km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが80.2mmのエンジンが最高出力を発生する5100回転での平均ピストンスピードは13.6m/sとなり、これは1秒間に13.6メートル(時速にすると49.0km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する3500回転では9.4m/s、最高出力が発生する5100回転より500回転高い5600回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は15.0m/sとなっています。

参考までにストロークが80.2mmのM1026型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.35m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)7480回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


M1026型エンジンを搭載する車種の例

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
ベンツ
201024
1991/08
190クラス
190E W201
[E-201024]
115PS
17.5kgm
8.2km/L
10.696kg/PS
自然吸気
FR/4AT
セダン
5人乗り
車両型式:E-201024

190クラス
[190E W201]
1991/08モデル
最高出力115PS
最大トルク17.5kgm
10-15モード燃費8.2km/L
吸気方式自然吸気
車体構成5人乗りセダン
FR/4AT

ベンツ製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】