ここではマツダのDM8P型・CX-30 [XD-Proactive|2021/01モデル] に搭載されているS8-DPTS型のターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
S8-DPTS型のターボエンジン諸元
DM8P型 CX-30 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | 3DA-DM8P型 |
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車名&グレード | CX-30 XD-Proactive |
エンジン型式 | S8-DPTS |
種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 1756cc |
内径×行程 | 79.0mm×89.6mm |
ボアストローク比 | 1.13 |
単気筒容積 | 439.2cc |
圧縮比 | 14.8 |
吸気方式 | ターボ |
使用燃料 | ディーゼル |
最高出力 | 130PS/4000rpm |
最大トルク | 27.5kgm/1600-2600rpm |
まず基本的な成り立ちとして、S8型エンジンはボア(内径)79.0mm、ストローク(行程)89.6mm、ボアストローク比1.13のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。
なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。
このサイトにて登録されている車種のうち、S8-DPTS型のターボエンジンを搭載する最も古い車種は、2015/02から発売された初代CX-3 [DK8FW型|2018/05]、最も新しい車種は2015/02から発売された初代CX-3 [DK8AY型|2024/02]となっており、NA車は0車種、ターボ/SC車は16車種の全16車種が登録されています。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 61.4PS → 130PS |
トルクの変遷 | 27.5kgm → 23.3kgm |
リッター馬力 | 74.03PS/L |
リッタートルク | 15.7kgm/L |
今回の参考車両であるCX-30の直列4気筒1756cc、圧縮比14.8でディーゼル仕様のターボエンジンは、4000回転のとき最高出力130馬力を、4000回転のとき最大トルク27.5kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する1600回転での馬力は61.4PS、最高出力が発生する4000回転でのトルクは23.3kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は74.03PS/L、トルクは15.7kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積439.2cc)あたりの馬力は32.5PS、トルクは6.9kgmです。
S8型ターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 4 ]、換算トルクが[ 6 ]の「やや控えめな出力のエンジン」にカテゴライズされます。
ちなみに、S8-DPTS型のターボ・SCエンジン搭載車種のうち、最高出力が最も大きかったのはDM8P型CX-30の130PS/27.5kgm、最も小さかったのはBP8P型MAZDA3 セダンの116PS/27.5kgmとなっています。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
79.0 | 89.6 | 1756cc | 14.8 | 1.13 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
79.5 | 89.6 | 1779cc | 15.0 | 1.13 |
80.0 | 1801cc | 15.2 | 1.12 | |
80.5 | 1824cc | 15.3 | 1.11 | |
81.0 | 1847cc | 15.5 | 1.11 | |
81.5 | 1870cc | 15.7 | 1.10 | |
82.0 | 1893cc | 15.9 | 1.09 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
79.0 | 90.6 | 1776cc | 15.0 | 1.15 |
91.6 | 1796cc | 15.1 | 1.16 | |
92.6 | 1816cc | 15.3 | 1.17 | |
93.6 | 1835cc | 15.4 | 1.18 | |
94.6 | 1855cc | 15.6 | 1.20 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の79.0mmから0.5mm刻みで82.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の89.6mmから1mm刻みで94.6mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。S8型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.13から1.09に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
S8型エンジンのピストン径79.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが14件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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日産 MR16型 | 79.7mm [+0.7mm] | 1788cc [+32cc] |
いすゞ 4XE1型 | 80.0mm [+1.0mm] | 1801cc [+45cc] |
マツダ KJ型 | 80.3mm [+1.3mm] | 1815cc [+59cc] |
トヨタ 2ZR型 | 80.5mm [+1.5mm] | 1824cc [+68cc] |
三菱 4D65型 | 80.6mm [+1.6mm] | 1829cc [+73cc] |
スバル CB18型 | 80.6mm [+1.6mm] | 1829cc [+73cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、日産:NF15型ジューク NISMOに搭載されるMR16型1618ccの79.7mm、いすゞ:JT191S型ジェミニに搭載される4XE1型1588ccの80.0mm、マツダ:TA3A型ミレーニアに搭載されるKJ型2254ccの80.3mm、トヨタ:NSP131型ヴィッツ GRMNに搭載される2ZR型1797ccの80.5mm、三菱:E34A型ギャランに搭載される4D65型1795ccの80.6mm、スバル:SK5型フォレスターに搭載されるCB18型1795ccの80.6mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 1800ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 1800ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 1800ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 1800ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [1800ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [1800ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが89.6mmのエンジンが最高出力を発生する4000回転での平均ピストンスピードは11.9m/sとなり、これは1秒間に11.9メートル(時速にすると42.8km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する1600回転では4.8m/s、最高出力が発生する4000回転より500回転高い4500回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は13.4m/sとなっています。
参考までにストロークが89.6mmのS8型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.97m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6700回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
S8-DPTS型エンジンを搭載する車種の例
全16車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクよりS8型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||||
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マツダ DM8P | 2021/01 CX-30 XD-Proactive [3DA-DM8P] | 130PS 27.5kgm 19.2km/L 11.231kg/PS | ターボ FF/6AT SUV 5人乗り | |||||||||||||||
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マツダ DM8P | 2021/01 CX-30 XD-Proactive [3DA-DM8P] | 130PS 27.5kgm 18.4km/L 11.769kg/PS | ターボ 4WD/6AT SUV 5人乗り | |||||||||||||||
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マツダ DK8AY | CX-3 XD Touring | 129PS 27.5kgm 19.0km/L 10.620kg/PS | ターボ 4WD/6AT SUV 5人乗り | |||||||||||||||
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S8型エンジン搭載車種の一覧 パワーウェイトレシオ順|全16車種 |