ここではマツダのHB36S型・キャロル [GL|2015/01モデル] に搭載されているR06A型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
R06A型の自然吸気エンジン諸元
HB36S型 キャロル 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | DBA-HB36S型 |
---|---|
車名&グレード | キャロル GL |
エンジン型式 | R06A |
種類 | 直列3気筒 |
排気量 | 658cc |
内径×行程 | 64.0mm×68.2mm |
ボアストローク比 | 1.07 |
単気筒容積 | 219.4cc |
圧縮比 | 11.5 |
吸気方式 | 自然吸気 |
使用燃料 | レギュラーガソリン |
最高出力 | 52PS/6500rpm |
最大トルク | 6.4kgm/4000rpm |
まず基本的な成り立ちとして、R06A型エンジンはボア(内径)64.0mm、ストローク(行程)68.2mm、ボアストローク比1.07のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。
なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。
このサイトにて登録されている車種のうち、R06A型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、2012/10から発売された初代フレア [MJ34S型|2012/10]、最も新しい車種は2022/01から発売された8代目キャロル [HB37S型|2022/01]となっており、32車種のNA車が登録されています。
関連ページ
マツダ:R06A型 ターボ/SCエンジン 諸元と性能まとめ
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
---|---|
馬力の変遷 | 35.7PS → 52PS |
トルクの変遷 | 6.4kgm → 5.7kgm |
リッター馬力 | 79.03PS/L |
リッタートルク | 9.7kgm/L |
今回の参考車両であるキャロルの直列3気筒658cc、圧縮比11.5でレギュラーガソリン仕様の自然吸気エンジンは、6500回転のとき最高出力52馬力を、6500回転のとき最大トルク6.4kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4000回転での馬力は35.7PS、最高出力が発生する6500回転でのトルクは5.7kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は79.03PS/L、トルクは9.7kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積219.4cc)あたりの馬力は17.3PS、トルクは2.1kgmです。
R06A型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 7 ]、換算トルクが[ 6 ]の「なかなかの高出力エンジン」にカテゴライズされます。
ちなみに、R06A型の自然吸気エンジン搭載車種のうち、最高出力が最も大きかったのはMJ55S型フレアの52PS/6.1kgm、最も小さかったのはHB37S型キャロルの46PS/5.6kgmとなっています。
【PR】エンジンオイルの通販革命!高品質×低価格
TAKUMIモーターオイル HIGH QUALITY【5W-30】
排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
---|---|---|---|---|
Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
64.0 | 68.2 | 658cc | 11.5 | 1.07 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
64.5 | 68.2 | 669cc | 11.7 | 1.06 |
65.0 | 679cc | 11.8 | 1.05 | |
65.5 | 689cc | 12.0 | 1.04 | |
66.0 | 700cc | 12.1 | 1.03 | |
66.5 | 711cc | 12.3 | 1.03 | |
67.0 | 721cc | 12.5 | 1.02 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
64.0 | 69.2 | 668cc | 11.7 | 1.08 |
70.2 | 677cc | 11.8 | 1.10 | |
71.2 | 687cc | 12.0 | 1.11 | |
72.2 | 697cc | 12.1 | 1.13 | |
73.2 | 706cc | 12.2 | 1.14 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の64.0mmから0.5mm刻みで67.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の68.2mmから1mm刻みで73.2mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。R06A型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.07から1.02に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
R06A型エンジンのピストン径64.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが7件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
---|---|---|
マツダ F6A型 | 65.0mm [+1.0mm] | 679cc [+21cc] |
日産 3G83型 | 65.0mm [+1.0mm] | 679cc [+21cc] |
マツダ F5B型 | 65.0mm [+1.0mm] | 679cc [+21cc] |
日産 3B20型 | 65.4mm [+1.4mm] | 687cc [+29cc] |
ホンダ E07Z型 | 66.0mm [+2.0mm] | 700cc [+42cc] |
ホンダ E07A型 | 66.0mm [+2.0mm] | 700cc [+42cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、マツダ:CZ21S型セルボ モードに搭載されるF6A型657ccの65.0mm、日産:H92W型オッティに搭載される3G83型657ccの65.0mm、マツダ:CM11V型キャロルに搭載されるF5B型547ccの65.0mm、日産:B21A型デイズ ルークスに搭載される3B20型659ccの65.4mm、ホンダ:PA1型ゼットに搭載されるE07Z型656ccの66.0mm、ホンダ:PP1型ビートに搭載されるE07A型656ccの66.0mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 軽自動車のエンジン
●ピストン径が大きい 軽自動車のエンジン
●ストロークが短い 軽自動車のエンジン
●ストロークが長い 軽自動車のエンジン
●ボアストローク比・昇順 [軽自動車]
●ボアストローク比・降順 [軽自動車]
平均ピストンスピード
|
続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが68.2mmのエンジンが最高出力を発生する6500回転での平均ピストンスピードは14.8m/sとなり、これは1秒間に14.8メートル(時速にすると53.3km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する4000回転では9.1m/s、最高出力が発生する6500回転より500回転高い7000回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は15.9m/sとなっています。
参考までにストロークが68.2mmのR06A型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね4.55m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)8800回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
R06A型NAエンジンを搭載する車種の例
全32車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクよりR06A型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
マツダ MJ55S | 2017/03 フレア Hybrid-XG [DAA-MJ55S] | 52PS 6.1kgm 33.4km/L 14.808kg/PS | 自然吸気 FF/CVT 軽ミニバン 4人乗り | |||||||||||||||
| ||||||||||||||||||
マツダ HB36S | 2015/01 キャロル GL [DBA-HB36S] | 52PS 6.4kgm 37.0km/L 12.500kg/PS | 自然吸気 FF/CVT 軽ハッチバック 4人乗り | |||||||||||||||
| ||||||||||||||||||
マツダ MM53S | 2018/02 フレアワゴン Hybrid-XG [DAA-MM53S] | 52PS 6.1kgm 30.0km/L 16.346kg/PS | 自然吸気 FF/CVT 軽ミニバン 4人乗り | |||||||||||||||
| ||||||||||||||||||
R06A型エンジン搭載車種の一覧 パワーウェイトレシオ順|全220車種 |
その他のR06A型エンジン型式と代表的な車種
R06A型 全157車種 | スズキ:MRワゴン [X Idling-Stop] 最高出力54PS/最大トルク6.4kgm 2011/03モデル | |
---|---|---|
スズキ R06A型 全157車種 | MRワゴン [X Idling-Stop] 54PS/6.4kgm | |
R06A型 全11車種 | 日産:モコ [G] 最高出力64PS/最大トルク9.7kgm 2011/06モデル | |
日産 R06A型 全11車種 | モコ [G] 64PS/9.7kgm | |
R06A型 全2車種 | 三菱:タウンボックス [G] 最高出力64PS/最大トルク9.7kgm 2021/09モデル | |
三菱 R06A型 全2車種 | タウンボックス [G] 64PS/9.7kgm |