ここではロータス・エリーゼ [Sport220|2015/12モデル] に搭載されている2ZR-FE型のスーパーチャージャーエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
2ZR-FE型のスーパーチャージャーエンジン諸元
エリーゼ 主要諸元と走行性能まとめ | |
車名&グレード | エリーゼ Sport220 |
---|---|
エンジン型式 | 2ZR-FE |
種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 1797cc |
内径×行程 | 80.5mm×88.3mm |
ボアストローク比 | 1.10 |
単気筒容積 | 449.4cc |
圧縮比 | 10.0 |
吸気方式 | スーパーチャージャー |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 220PS/6800rpm |
最大トルク | 25.4kgm/4600rpm |
まず基本的な成り立ちとして、2ZR型エンジンはボア(内径)80.5mm、ストローク(行程)88.3mm、ボアストローク比1.10のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。
なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 163.1PS → 220PS |
トルクの変遷 | 25.4kgm → 23.2kgm |
リッター馬力 | 122.43PS/L |
リッタートルク | 14.1kgm/L |
今回の参考車両であるエリーゼの直列4気筒1797cc、圧縮比10.0でハイオクガソリン仕様のスーパーチャージャーエンジンは、6800回転のとき最高出力220馬力を、6800回転のとき最大トルク25.4kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4600回転での馬力は163.1PS、最高出力が発生する6800回転でのトルクは23.2kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は122.43PS/L、トルクは14.1kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積449.4cc)あたりの馬力は55.0PS、トルクは6.3kgmです。
2ZR型スーパーチャージャーエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 8 ]、換算トルクが[ 5 ]の「結構な高出力エンジン」にカテゴライズされます。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
80.5 | 88.3 | 1797cc | 10.0 | 1.10 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
81.0 | 88.3 | 1820cc | 10.1 | 1.09 |
81.5 | 1843cc | 10.2 | 1.08 | |
82.0 | 1865cc | 10.3 | 1.08 | |
82.5 | 1888cc | 10.5 | 1.07 | |
83.0 | 1911cc | 10.6 | 1.06 | |
83.5 | 1934cc | 10.7 | 1.06 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
80.5 | 89.3 | 1818cc | 10.1 | 1.11 |
90.3 | 1838cc | 10.2 | 1.12 | |
91.3 | 1859cc | 10.3 | 1.13 | |
92.3 | 1879cc | 10.4 | 1.15 | |
93.3 | 1899cc | 10.5 | 1.16 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の80.5mmから0.5mm刻みで83.5mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の88.3mmから1mm刻みで93.3mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。2ZR型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.10から1.06に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
2ZR型エンジンのピストン径80.5mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが13件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
---|---|---|
トヨタ B48B20型 | 82.0mm [+1.5mm] | 1865cc [+68cc] |
B58B30型 | 82.0mm [+1.5mm] | 1865cc [+68cc] |
ホンダ C20A型 | 82.0mm [+1.5mm] | 1865cc [+68cc] |
トヨタ B48型 | 82.0mm [+1.5mm] | 1865cc [+68cc] |
トヨタ B58型 | 82.0mm [+1.5mm] | 1865cc [+68cc] |
三菱 4G61型 | 82.3mm [+1.8mm] | 1879cc [+82cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、トヨタ:DB26型スープラに搭載されるB48B20型1998ccの82.0mm、:DB06型スープラに搭載されるB58B30型2997ccの82.0mm、ホンダ:KA5型レジェンドに搭載されるC20A型1996ccの82.0mm、トヨタ:DB22型スープラに搭載されるB48型1998ccの82.0mm、トヨタ:DB02型スープラに搭載されるB58型2997ccの82.0mm、三菱:C53A型ミラージュ サイボーグRSに搭載される4G61型1595ccの82.3mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 1800ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 1800ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 1800ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 1800ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [1800ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [1800ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが88.3mmのエンジンが最高出力を発生する6800回転での平均ピストンスピードは20.0m/sとなり、これは1秒間に20.0メートル(時速にすると72.0km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する4600回転では13.5m/s、最高出力が発生する6800回転より500回転高い7300回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は21.5m/sとなっています。
参考までにストロークが88.3mmの2ZR型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.88m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6800回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
2ZR-FE型エンジンを搭載する車種の例
全1車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクより2ZR型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||
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ロータス - | 2015/12 エリーゼ Sport220 [型式不明] | 220PS 25.4kgm - 4.318kg/PS | SC MR/6MT オープンカー 2人乗り | |||||||||||||
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2ZR型エンジン搭載車種の一覧 パワーウェイトレシオ順|全103車種 |
その他の2ZR型エンジン型式と代表的な車種
2ZR-FXE型 全57車種 | トヨタ:ヴォクシー ハイブリッド [Hybrid-V] 最高出力99PS/最大トルク14.5kgm 2014/02モデル | |
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トヨタ 2ZR-FXE型 全57車種 | ヴォクシー ハイブリッド [Hybrid-V] 99PS/14.5kgm | |
2ZR-FAE型 全28車種 | トヨタ:オーリス RS [RS] 最高出力147PS/最大トルク18.4kgm 2010/10モデル | |
トヨタ 2ZR-FAE型 全28車種 | オーリス RS [RS] 147PS/18.4kgm | |
2ZR-FAE型 全8車種 | 光岡:ガリュー204 [18LX] 最高出力144PS/最大トルク17.9kgm 2010/07モデル | |
光岡 2ZR-FAE型 全8車種 | ガリュー204 [18LX] 144PS/17.9kgm | |
2ZR-FXE型 全4車種 | レクサス:CT [CT200h] 最高出力99PS/最大トルク14.5kgm 2011/01モデル | |
レクサス 2ZR-FXE型 全4車種 | CT [CT200h] 99PS/14.5kgm | |
2ZR-FE型 全2車種 | トヨタ:イスト [180G] 最高出力132PS/最大トルク17.5kgm 2007/07モデル | |
トヨタ 2ZR-FE型 全2車種 | イスト [180G] 132PS/17.5kgm | |
2ZR-FXE型 全2車種 | スズキ:ランディ ハイブリッド [Hybrid-G] 最高出力98PS/最大トルク14.5kgm 2022/08モデル | |
スズキ 2ZR-FXE型 全2車種 | ランディ ハイブリッド [Hybrid-G] 98PS/14.5kgm | |
2ZR-FXE型 全1車種 | ダイハツ:メビウス [S L-Selection] 最高出力99PS/最大トルク14.5kgm 2013/04モデル | |
ダイハツ 2ZR-FXE型 全1車種 | メビウス [S L-Selection] 99PS/14.5kgm |