ここではロータスの122型・エヴォーラ [2-seater|2009/06モデル] に搭載されている2GR-FE型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
2GR-FE型の自然吸気エンジン諸元
122型 エヴォーラ 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | ABA-122型 |
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車名&グレード | エヴォーラ 2-seater |
エンジン型式 | 2GR-FE |
種類 | V型6気筒 |
排気量 | 3456cc |
内径×行程 | 94.0mm×83.0mm |
ボアストローク比 | 0.88 |
単気筒容積 | 576.0cc |
圧縮比 | 10.8 |
吸気方式 | 自然吸気 |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 280PS/6400rpm |
最大トルク | 35.7kgm/4660rpm |
まず基本的な成り立ちとして、2GR型エンジンはボア(内径)94.0mm、ストローク(行程)83.0mm、ボアストローク比0.88のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。
また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。
このサイトにて登録されている車種のうち、2GR-FE型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、2009/06から発売された初代エヴォーラ [122型|2009/06]、最も新しい車種は2009/06から発売された初代エヴォーラ [122型|2011/06]となっており、2車種のNA車が登録されています。
関連ページ
ロータス:2GR-FE型 ターボ/SCエンジン 諸元と性能まとめ
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 232.2PS → 280PS |
トルクの変遷 | 35.7kgm → 31.3kgm |
リッター馬力 | 81.02PS/L |
リッタートルク | 10.3kgm/L |
今回の参考車両であるエヴォーラのV型6気筒3456cc、圧縮比10.8でハイオクガソリン仕様の自然吸気エンジンは、6400回転のとき最高出力280馬力を、6400回転のとき最大トルク35.7kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4660回転での馬力は232.2PS、最高出力が発生する6400回転でのトルクは31.3kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は81.02PS/L、トルクは10.3kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積576.0cc)あたりの馬力は46.7PS、トルクは6.0kgmです。
2GR型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 7 ]、換算トルクが[ 8 ]の「なかなかの高出力エンジン」にカテゴライズされます。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
94.0 | 83.0 | 3456cc | 10.8 | 0.88 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
94.5 | 83.0 | 3493cc | 10.9 | 0.88 |
95.0 | 3530cc | 11.0 | 0.87 | |
95.5 | 3567cc | 11.1 | 0.87 | |
96.0 | 3605cc | 11.2 | 0.86 | |
96.5 | 3642cc | 11.3 | 0.86 | |
97.0 | 3680cc | 11.4 | 0.86 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
94.0 | 84.0 | 3498cc | 10.9 | 0.89 |
85.0 | 3539cc | 11.0 | 0.90 | |
86.0 | 3581cc | 11.2 | 0.91 | |
87.0 | 3622cc | 11.3 | 0.93 | |
88.0 | 3664cc | 11.4 | 0.94 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の94.0mmから0.5mm刻みで97.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の83.0mmから1mm刻みで88.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.88からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。2GR型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.88から0.86に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
2GR型エンジンのピストン径94.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが13件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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トヨタ 2TR型 | 95.0mm [+1.0mm] | 3530cc [+74cc] |
トヨタ 2TZ型 | 95.0mm [+1.0mm] | 3530cc [+74cc] |
トヨタ 3RZ型 | 95.0mm [+1.0mm] | 3530cc [+74cc] |
三菱 6G75型 | 95.0mm [+1.0mm] | 3530cc [+74cc] |
トヨタ 2RZ型 | 95.0mm [+1.0mm] | 3530cc [+74cc] |
日産 VQ35型 | 95.5mm [+1.5mm] | 3567cc [+111cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、トヨタ:TRJ150W型ランドクルーザー プラドに搭載される2TR型2693ccの95.0mm、トヨタ:TCR20W型エスティマに搭載される2TZ型2438ccの95.0mm、トヨタ:RZN185W型ハイラックス サーフに搭載される3RZ型2693ccの95.0mm、三菱:V97W型パジェロに搭載される6G75型3827ccの95.0mm、トヨタ:RZH101G型ハイエースワゴンに搭載される2RZ型2438ccの95.0mm、日産:PV36型ディグニティに搭載されるVQ35型3498ccの95.5mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 3500ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 3500ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 3500ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 3500ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [3500ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [3500ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが83.0mmのエンジンが最高出力を発生する6400回転での平均ピストンスピードは17.7m/sとなり、これは1秒間に17.7メートル(時速にすると63.7km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する4660回転では12.9m/s、最高出力が発生する6400回転より500回転高い6900回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は19.1m/sとなっています。
参考までにストロークが83.0mmの2GR型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.55m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)7230回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
2GR-FE型NAエンジンを搭載する車種の例
全2車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクより2GR型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||
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ロータス 122 | 2009/06 エヴォーラ 2-seater [ABA-122] | 280PS 35.7kgm - 4.964kg/PS | 自然吸気 MR/6MT クーペ 2人乗り | |||||||||||||
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ロータス 122 | 2011/06 エヴォーラ IPS 2seater [ABA-122] | 280PS 35.7kgm - 5.179kg/PS | 自然吸気 MR/6AT クーペ 2人乗り | |||||||||||||
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2GR型エンジン搭載車種の一覧 パワーウェイトレシオ順|全71車種 |
その他の2GR型エンジン型式と代表的な車種
2GR-FE型 全18車種 | トヨタ:ハリアー [350G] 最高出力280PS/最大トルク35.3kgm 2007/01モデル | |
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トヨタ 2GR-FE型 全18車種 | ハリアー [350G] 280PS/35.3kgm | |
2GR-FSE型 全9車種 | トヨタ:マークX GRMN [GRMN] 最高出力321PS/最大トルク38.7kgm 2015/03モデル | |
トヨタ 2GR-FSE型 全9車種 | マークX GRMN [GRMN] 321PS/38.7kgm | |
2GR-FSE型 全9車種 | レクサス:IS [IS350 F-Sport] 最高出力318PS/最大トルク38.7kgm 2010/08モデル | |
レクサス 2GR-FSE型 全9車種 | IS [IS350 F-Sport] 318PS/38.7kgm | |
2GR-FXS型 全8車種 | レクサス:RX [RX450h version-L] 最高出力262PS/最大トルク34.2kgm 2015/10モデル | |
レクサス 2GR-FXS型 全8車種 | RX [RX450h version-L] 262PS/34.2kgm | |
2GR-FKS型 全6車種 | トヨタ:アルファード [3.5SC] 最高出力300PS/最大トルク36.8kgm 2018/01モデル | |
トヨタ 2GR-FKS型 全6車種 | アルファード [3.5SC] 300PS/36.8kgm | |
2GR-FXE型 全3車種 | レクサス:GS [GS450h] 最高出力295PS/最大トルク36.3kgm 2012/03モデル | |
レクサス 2GR-FXE型 全3車種 | GS [GS450h] 295PS/36.3kgm | |
2GR-FKS型 全3車種 | レクサス:GS [GS350] 最高出力318PS/最大トルク38.7kgm 2015/11モデル | |
レクサス 2GR-FKS型 全3車種 | GS [GS350] 318PS/38.7kgm | |
2GR-FE型 全2車種 | レクサス:RX [RX350 ArtWorks] 最高出力280PS/最大トルク35.5kgm 2010/08モデル | |
レクサス 2GR-FE型 全2車種 | RX [RX350 ArtWorks] 280PS/35.5kgm | |
2GR-FXE型 全1車種 | トヨタ:クラウン マジェスタ [BaseGrade] 最高出力292PS/最大トルク36.1kgm 2013/09モデル | |
トヨタ 2GR-FXE型 全1車種 | クラウン マジェスタ [BaseGrade] 292PS/36.1kgm | |
2GR-FXS型 全1車種 | トヨタ:センチュリー SUV [BaseGrade] 最高出力262PS/最大トルク34.2kgm 2023/09モデル | |
トヨタ 2GR-FXS型 全1車種 | センチュリー SUV [BaseGrade] 262PS/34.2kgm |