リンカーン:AB型エンジンの諸元と性能まとめ [V型6気筒 3787cc]

ここではリンカーンのLC381型・コンチネンタル [Signature|1990/12モデル] に搭載されているAB型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

AB型の自然吸気エンジン諸元


LC381型 コンチネンタル
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式E-LC381型
車名&グレードコンチネンタル
Signature
エンジン型式AB
種類V型6気筒
排気量3787cc
内径×行程96.5mm×86.3mm
ボアストローク比0.89
単気筒容積631.2cc
圧縮比9.0
吸気方式自然吸気
使用燃料レギュラーガソリン
最高出力155PS/4000rpm
最大トルク30.3kgm/2200rpm

まず基本的な成り立ちとして、AB型エンジンはボア(内径)96.5mm、ストローク(行程)86.3mm、ボアストローク比0.89のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。

また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
ABのエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷93.1PS → 155PS
トルクの変遷30.3kgm → 27.8kgm
リッター馬力40.9PS/L
リッタートルク8.0kgm/L

今回の参考車両であるコンチネンタルのV型6気筒3787cc、圧縮比9.0でレギュラーガソリン仕様の自然吸気エンジンは、4000回転のとき最高出力155馬力を、4000回転のとき最大トルク30.3kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する2200回転での馬力は93.1PS、最高出力が発生する4000回転でのトルクは27.8kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は40.9PS/L、トルクは8.0kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積631.2cc)あたりの馬力は25.8PS、トルクは5.0kgmです。

AB型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 1 ]、換算トルクが[ 2 ]の「心もとない出力のエンジン」にカテゴライズされます。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
96.586.33787cc9.00.89
ボアアップによる排気量拡大
97.086.33826cc9.10.89
97.53866cc9.20.89
98.03906cc9.30.88
98.53946cc9.30.88
99.03986cc9.40.87
99.54026cc9.50.87
ストロークアップによる排気量拡大
96.587.33831cc9.10.90
88.33875cc9.20.92
89.33919cc9.30.93
90.33963cc9.40.94
91.34006cc9.50.95

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の96.5mmから0.5mm刻みで99.5mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の86.3mmから1mm刻みで91.3mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.89からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。AB型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.89から0.87に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

AB型エンジンのピストン径96.5mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが3件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
スバル
EJ25型
99.5mm
[+3.0mm]
4026cc
[+239cc]
日産
TB48型
99.5mm
[+3.0mm]
4026cc
[+239cc]
日産
TB45型
99.5mm
[+3.0mm]
4026cc
[+239cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、スバル:GRF型インプレッサ STIに搭載されるEJ25型2457ccの99.5mm、日産:WFGY61型サファリに搭載されるTB48型4758ccの99.5mm、日産:WGY61型サファリに搭載されるTB45型4478ccの99.5mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 4000ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 4000ccクラスのエンジン
ストロークが短い 4000ccクラスのエンジン
ストロークが長い 4000ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [4000ccクラス]
ボアストローク比・降順 [4000ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
2200rpm
最高出力
4000rpm
86.3mm6.3m/s11.5m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.8m/s21km/h
4000rpm11.5m/s41km/h
6000rpm17.3m/s62km/h
8000rpm23.0m/s83km/h
10000rpm28.8m/s104km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが86.3mmのエンジンが最高出力を発生する4000回転での平均ピストンスピードは11.5m/sとなり、これは1秒間に11.5メートル(時速にすると41.4km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する2200回転では6.3m/s、最高出力が発生する4000回転より500回転高い4500回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は12.9m/sとなっています。

参考までにストロークが86.3mmのAB型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.75m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6950回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


AB型エンジンを搭載する車種の例

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
リンカーン
LC381
1990/12
コンチネンタル
Signature
[E-LC381]
155PS
30.3kgm
5.7km/L
10.58kg/PS
自然吸気
FF/4AT
セダン
6人乗り

コンチネンタル
[Signature]
1990/12モデル
車両型式E-LC381
最高出力155PS
最大トルク30.3kgm
10-15モード燃費5.7km/L
パワーウェイト10.58kg/PS
吸気方式自然吸気
駆動方式&変速機FF/4AT
車体形状&乗車定員セダン/6人乗り