ここではレクサスのVXFA50型・LS [LS500|2017/10モデル] に搭載されているV35A-FTS型のツインターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
V35A-FTS型のツインターボエンジン諸元
VXFA50型 LS 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | DBA-VXFA50型 |
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車名&グレード | LS LS500 |
エンジン型式 | V35A-FTS |
種類 | V型6気筒 |
排気量 | 3444cc |
内径×行程 | 85.5mm×100.0mm |
ボアストローク比 | 1.17 |
単気筒容積 | 574.1cc |
吸気方式 | ツインターボ |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 421PS/6000rpm |
最大トルク | 61.2kgm/1600-4800rpm |
まず基本的な成り立ちとして、V35A型エンジンはボア(内径)85.5mm、ストローク(行程)100.0mm、ボアストローク比1.17のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。
なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。
このサイトにて登録されている車種のうち、V35A-FTS型のツインターボエンジンを搭載する最も古い車種は、2017/10から発売された2代目LS [VXFA50型|2017/10]、最も新しい車種は2022/01から発売された2代目LX [VJA310W型|2022/01]となっており、NA車は0車種、ターボ/SC車は9車種の全9車種が登録されています。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 136.7PS → 421PS |
トルクの変遷 | 61.2kgm → 50.3kgm |
リッター馬力 | 122.24PS/L |
リッタートルク | 17.8kgm/L |
今回の参考車両であるLSのV型6気筒3444ccでハイオクガソリン仕様のツインターボエンジンは、6000回転のとき最高出力421馬力を、6000回転のとき最大トルク61.2kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する1600回転での馬力は136.7PS、最高出力が発生する6000回転でのトルクは50.3kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は122.24PS/L、トルクは17.8kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積574.1cc)あたりの馬力は70.2PS、トルクは10.2kgmです。
V35A型ツインターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 8 ]、換算トルクが[ 8 ]の「結構な高出力エンジン」にカテゴライズされます。
ちなみに、V35A-FTS型のターボ・SCエンジン搭載車種のうち、最高出力が最も大きかったのはVXFA50型LSの421PS/61.2kgm、最も小さかったのはVJA310W型LXの415PS/66.3kgmとなっています。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
85.5 | 100.0 | 3444cc | - | 1.17 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
86.0 | 100.0 | 3485cc | - | 1.16 |
86.5 | 3526cc | - | 1.16 | |
87.0 | 3567cc | - | 1.15 | |
87.5 | 3608cc | - | 1.14 | |
88.0 | 3649cc | - | 1.14 | |
88.5 | 3691cc | - | 1.13 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
85.5 | 101.0 | 3479cc | - | 1.18 |
102.0 | 3514cc | - | 1.19 | |
103.0 | 3548cc | - | 1.20 | |
104.0 | 3583cc | - | 1.22 | |
105.0 | 3617cc | - | 1.23 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の85.5mmから0.5mm刻みで88.5mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の100.0mmから1mm刻みで105.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。V35A型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.17から1.13に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
V35A型エンジンのピストン径85.5mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが6件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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日産 VG30型 | 87.0mm [+1.5mm] | 3567cc [+123cc] |
日産 RB-X GT2型 | 87.0mm [+1.5mm] | 3567cc [+123cc] |
マツダ L3型 | 87.5mm [+2.0mm] | 3608cc [+164cc] |
レクサス T24A型 | 87.5mm [+2.0mm] | 3608cc [+164cc] |
トヨタ G16E型 | 87.5mm [+2.0mm] | 3608cc [+164cc] |
いすゞ 4ZC1型 | 88.0mm [+2.5mm] | 3649cc [+205cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、日産:GCZ32型フェアレディZに搭載されるVG30型2960ccの87.0mm、日産:BCNR33型スカイラインGT-Rに搭載されるRB-X GT2型2771ccの87.0mm、マツダ:GG3P型マツダスピード アテンザに搭載されるL3型2260ccの87.5mm、レクサス:TAZA25型ヴェルファイアに搭載されるT24A型2393ccの87.5mm、トヨタ:GZEA14H型GRカローラに搭載されるG16E型1618ccの87.5mm、いすゞ:JR120型ピアッツァに搭載される4ZC1型1994ccの88.0mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 3500ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 3500ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 3500ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 3500ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [3500ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [3500ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが100.0mmのエンジンが最高出力を発生する6000回転での平均ピストンスピードは20.0m/sとなり、これは1秒間に20.0メートル(時速にすると72.0km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する1600回転では5.3m/s、最高出力が発生する6000回転より500回転高い6500回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は21.7m/sとなっています。
参考までにストロークが100.0mmのV35A型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね6.65m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6000回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
V35A-FTS型エンジンを搭載する車種の例
全9車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクよりV35A型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||||||
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レクサス VXFA50 | 2017/10 LS LS500 [DBA-VXFA50] | 421PS 61.2kgm 10.2km/L 5.107kg/PS | ターボ FR/10AT セダン 5人乗り | |||||||||||||||||
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レクサス VXFA55 | 2017/10 LS LS500 [DBA-VXFA55] | 421PS 61.2kgm 9.8km/L 5.321kg/PS | ターボ 4WD/10AT セダン 5人乗り | |||||||||||||||||
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レクサス VXFA50 | 2021/10 LS LS500 I-package [3BA-VXFA50] | 421PS 61.2kgm 10.2km/L 5.083kg/PS | ターボ FR/10AT セダン 5人乗り | |||||||||||||||||
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V35A型エンジン搭載車種の一覧 パワーウェイトレシオ順|全12車種 |
その他のV35A型エンジン型式と代表的な車種
V35A-FTS型 全3車種 | トヨタ:ランドクルーザー300 [GX 5人乗り] 最高出力415PS/最大トルク66.3kgm 2021/08モデル | |
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トヨタ V35A-FTS型 全3車種 | ランドクルーザー300 [GX 5人乗り] 415PS/66.3kgm |