ランドローバー:306DT型エンジンの諸元と性能まとめ [V型6気筒 2992cc]

ここではランドローバーのLW3KB型・レンジローバースポーツ [SE|2016/12モデル] に搭載されている306DT型のターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

306DT型のターボエンジン諸元


LW3KB型 レンジローバースポーツ
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式LDA-LW3KB型
車名&グレードレンジローバースポーツ
SE
エンジン型式306DT
種類V型6気筒
排気量2992cc
内径×行程84.0mm×90.0mm
ボアストローク比1.07
単気筒容積498.7cc
圧縮比16.1
吸気方式ターボ
使用燃料ディーゼル
最高出力258PS/3750rpm
最大トルク61.2kgm/2000rpm

まず基本的な成り立ちとして、306DT型エンジンはボア(内径)84.0mm、ストローク(行程)90.0mm、ボアストローク比1.07のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。

なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
306DTのエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷170.9PS → 258PS
トルクの変遷61.2kgm → 49.3kgm
リッター馬力86.23PS/L
リッタートルク20.4kgm/L

今回の参考車両であるレンジローバースポーツのV型6気筒2992cc、圧縮比16.1でディーゼル仕様のターボエンジンは、3750回転のとき最高出力258馬力を、3750回転のとき最大トルク61.2kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する2000回転での馬力は170.9PS、最高出力が発生する3750回転でのトルクは49.3kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は86.23PS/L、トルクは20.4kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積498.7cc)あたりの馬力は43.0PS、トルクは10.2kgmです。

306DT型ターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 5 ]、換算トルクが[ 10 ]の「標準的な出力(中の下)のエンジン」にカテゴライズされます。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
84.090.02992cc16.11.07
ボアアップによる排気量拡大
84.590.03028cc16.31.07
85.03064cc16.51.06
85.53100cc16.71.05
86.03137cc16.81.05
86.53173cc17.01.04
87.03210cc17.21.03
ストロークアップによる排気量拡大
84.091.03026cc16.31.08
92.03059cc16.51.10
93.03092cc16.61.11
94.03125cc16.81.12
95.03159cc16.91.13

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の84.0mmから0.5mm刻みで87.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の90.0mmから1mm刻みで95.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。306DT型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.07から1.03に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

306DT型エンジンのピストン径84.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが26件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
三菱
4G63型
85.0mm
[+1.0mm]
3064cc
[+72cc]
日産
VQ25型
85.0mm
[+1.0mm]
3064cc
[+72cc]
日産
RD28型
85.0mm
[+1.0mm]
3064cc
[+72cc]
三菱
G63B型
85.0mm
[+1.0mm]
3064cc
[+72cc]
レクサス
V35A型
85.5mm
[+1.5mm]
3100cc
[+108cc]
トヨタ
3S型
86.0mm
[+2.0mm]
3137cc
[+145cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、三菱:CT9A型ランサー エボリューションIXに搭載される4G63型1997ccの85.0mm、日産:NM35型ステージアに搭載されるVQ25型2495ccの85.0mm、日産:WYY61型サファリに搭載されるRD28型2825ccの85.0mm、三菱:D08W型シャリオに搭載されるG63B型1997ccの85.0mm、レクサス:VXFA50型ランドクルーザー300に搭載されるV35A型3444ccの85.5mm、トヨタ:ST246W型カルディナ GT-FOURに搭載される3S型1998ccの86.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 3000ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 3000ccクラスのエンジン
ストロークが短い 3000ccクラスのエンジン
ストロークが長い 3000ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [3000ccクラス]
ボアストローク比・降順 [3000ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
2000rpm
最高出力
3750rpm
90.0mm6.0m/s11.2m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm6.0m/s22km/h
4000rpm12.0m/s43km/h
6000rpm18.0m/s65km/h
8000rpm24.0m/s86km/h
10000rpm30.0m/s108km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが90.0mmのエンジンが最高出力を発生する3750回転での平均ピストンスピードは11.2m/sとなり、これは1秒間に11.2メートル(時速にすると40.3km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する2000回転では6.0m/s、最高出力が発生する3750回転より500回転高い4250回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は12.7m/sとなっています。

参考までにストロークが90.0mmの306DT型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね6.00m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6670回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


306DT型エンジンを搭載する車種の例

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
ランドローバー
LW3KB
2016/12
レンジローバースポーツ
SE
[LDA-LW3KB]
258PS
61.2kgm
12.6km/L
8.876kg/PS
ターボ
4WD/8AT
SUV
5人乗り
車両型式:LDA-LW3KB

レンジローバースポーツ
[SE]
2016/12モデル
最高出力258PS
最大トルク61.2kgm
JC08モード燃費12.6km/L
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りSUV
4WD/8AT

ランドローバー製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】