ホンダ:LEB-H5型エンジンの諸元と性能まとめ [直4+モーター 1496cc]

ここではホンダのGR3型・フィット e:HEV [e:HEV Basic|2022/10モデル] に搭載されているLEB-H5型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

LEB-H5型の自然吸気エンジン諸元


GR3型 フィット e:HEV
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式6AA-GR3型
車名&グレードフィット e:HEV
e:HEV Basic
エンジン型式LEB-H5
種類直4+モーター
排気量1496cc
内径×行程73.0mm×89.4mm
ボアストローク比1.23
単気筒容積374.2cc
圧縮比13.5
吸気方式自然吸気
使用燃料レギュラーガソリン
最高出力106PS/6000-6400rpm
最大トルク13.0kgm/4500-5000rpm

まず基本的な成り立ちとして、LEB型エンジンはボア(内径)73.0mm、ストローク(行程)89.4mm、ボアストローク比1.23のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。

なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。

このサイトにて登録されている車種のうち、LEB-H5型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、2020/02から発売された4代目フィット e:HEV [GR3型|2020/02]、最も新しい車種は2020/02から発売された4代目フィット e:HEV [GR3型|2022/10]となっており、NA車は9車種、ターボ/SC車は0車種の全9車種が登録されています。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
LEBのエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷81.7PS → 106PS
トルクの変遷13.0kgm → 11.9kgm
リッター馬力70.90PS/L
リッタートルク8.7kgm/L

今回の参考車両であるフィット e:HEVの直4+モーター1496cc、圧縮比13.5でレギュラーガソリン仕様の自然吸気エンジンは、6000-6400回転のとき最高出力106馬力を、6000-6400回転のとき最大トルク13.0kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4500回転での馬力は81.7PS、最高出力が発生する6400回転でのトルクは11.9kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は70.90PS/L、トルクは8.7kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積374.2cc)あたりの馬力は26.5PS、トルクは3.2kgmです。

LEB型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 5 ]、換算トルクが[ 4 ]の「標準的な出力(中の下)のエンジン」にカテゴライズされます。

ちなみに、LEB-H5型のターボ・SCエンジン搭載車種のうち、最高出力が最も大きかったのはGR3型フィット e:HEVの106PS/13.0kgm、最も小さかったのはGR3型フィット e:HEVの98PS/13.0kgmとなっています。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
73.089.41496cc13.51.23
ボアアップによる排気量拡大
73.589.41517cc13.71.22
74.01538cc13.81.21
74.51559cc14.01.20
75.01580cc14.21.19
75.51601cc14.41.18
76.01622cc14.61.18
ストロークアップによる排気量拡大
73.090.41513cc13.61.24
91.41530cc13.81.25
92.41547cc13.91.27
93.41564cc14.11.28
94.41580cc14.21.29

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の73.0mmから0.5mm刻みで76.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の89.4mmから1mm刻みで94.4mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。LEB型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.23から1.18に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

LEB型エンジンのピストン径73.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが43件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
日産
GA15型
73.6mm
[+0.6mm]
1521cc
[+25cc]
日産
QG15型
73.6mm
[+0.6mm]
1521cc
[+25cc]
ホンダ
D13C型
73.7mm
[+0.7mm]
1525cc
[+29cc]
トヨタ
5E型
74.0mm
[+1.0mm]
1538cc
[+42cc]
トヨタ
4E型
74.0mm
[+1.0mm]
1538cc
[+42cc]
スズキ
G13B型
74.0mm
[+1.0mm]
1538cc
[+42cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、日産:WFGY10型ラシーンに搭載されるGA15型1497ccの73.6mm、日産:FB15型ファミリア ビジネスワゴンに搭載されるQG15型1497ccの73.6mm、ホンダ:GA2型シティに搭載されるD13C型1296ccの73.7mm、トヨタ:EL44型サイノスに搭載される5E型1496ccの74.0mm、トヨタ:EL41型カローラIIに搭載される4E型1331ccの74.0mm、スズキ:AA34S型カルタス GT-iAに搭載されるG13B型1298ccの74.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 1500ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 1500ccクラスのエンジン
ストロークが短い 1500ccクラスのエンジン
ストロークが長い 1500ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [1500ccクラス]
ボアストローク比・降順 [1500ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
4500rpm
最高出力
6400rpm
89.4mm13.4m/s19.1m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm6.0m/s22km/h
4000rpm11.9m/s43km/h
6000rpm17.9m/s64km/h
8000rpm23.8m/s86km/h
10000rpm29.8m/s107km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが89.4mmのエンジンが最高出力を発生する6400回転での平均ピストンスピードは19.1m/sとなり、これは1秒間に19.1メートル(時速にすると68.8km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する4500回転では13.4m/s、最高出力が発生する6400回転より500回転高い6900回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は20.6m/sとなっています。

参考までにストロークが89.4mmのLEB型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.95m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6710回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


LEB-H5型エンジンを搭載する車種の例

全9車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクよりLEB型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
ホンダ
GR3
2022/10
フィット e:HEV
e:HEV Basic
[6AA-GR3]
106PS
13.0kgm
30.2km/L
11.226kg/PS
自然吸気
FF/CVT
ハッチバック
5人乗り
車両型式:6AA-GR3

フィット e:HEV
[e:HEV Basic]
2022/10モデル
最高出力106PS
最大トルク13.0kgm
WLTCモード燃費30.2km/L
吸気方式自然吸気
車体構成5人乗りハッチバック
FF/CVT
ホンダ
GR4
2022/10
フィット e:HEV
e:HEV Basic
[6AA-GR4]
106PS
13.0kgm
25.4km/L
11.887kg/PS
自然吸気
4WD/CVT
ハッチバック
5人乗り
車両型式:6AA-GR4

フィット e:HEV
[e:HEV Basic]
2022/10モデル
最高出力106PS
最大トルク13.0kgm
WLTCモード燃費25.4km/L
吸気方式自然吸気
車体構成5人乗りハッチバック
4WD/CVT
ホンダ
GR3
2022/10
フィットRS
e:HEV RS
[6AA-GR3]
106PS
13.0kgm
27.2km/L
11.415kg/PS
自然吸気
FF/CVT
SUV
5人乗り
車両型式:6AA-GR3

フィットRS
[e:HEV RS]
2022/10モデル
最高出力106PS
最大トルク13.0kgm
WLTCモード燃費27.2km/L
吸気方式自然吸気
車体構成5人乗りSUV
FF/CVT
LEB型エンジン搭載車種の一覧
パワーウェイトレシオ順|全40車種

その他のLEB型エンジン型式と代表的な車種

LEB-H1型
全27車種
ホンダ:ヴェゼル [Hybrid]
最高出力132PS/最大トルク15.9kgm
2013/12モデル
ホンダ
LEB-H1型
全27車種
ヴェゼル
[Hybrid]
132PS/15.9kgm
LEB-H4型
全4車種
ホンダ:インサイト [EX]
最高出力109PS/最大トルク13.7kgm
2018/12モデル
ホンダ
LEB-H4型
全4車種
インサイト
[EX]
109PS/13.7kgm

ホンダ製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】