ここではホンダのCH9型・アコード ワゴン [SiR|2001/05モデル] に搭載されているH23A型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
H23A型の自然吸気エンジン諸元
CH9型 アコード ワゴン 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | GH-CH9型 |
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車名&グレード | アコード ワゴン SiR |
エンジン型式 | H23A |
種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 2258cc |
内径×行程 | 87.0mm×95.0mm |
ボアストローク比 | 1.09 |
単気筒容積 | 564.7cc |
圧縮比 | 10.6 |
吸気方式 | 自然吸気 |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 200PS/6800rpm |
最大トルク | 22.5kgm/5300rpm |
まず基本的な成り立ちとして、H23A型エンジンはボア(内径)87.0mm、ストローク(行程)95.0mm、ボアストローク比1.09のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。
なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。
このサイトにて登録されている車種のうち、H23A型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、1992/03から発売された初代アスコット イノーバ [CC5型|1994/02]、最も新しい車種は1997/10から発売された6代目アコード ワゴン [CH9型|2001/05]となっており、NA車は4車種、ターボ/SC車は0車種の全4車種が登録されています。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 166.5PS → 200PS |
トルクの変遷 | 22.5kgm → 21.1kgm |
リッター馬力 | 88.57PS/L |
リッタートルク | 10.0kgm/L |
今回の参考車両であるアコード ワゴンの直列4気筒2258cc、圧縮比10.6でハイオクガソリン仕様の自然吸気エンジンは、6800回転のとき最高出力200馬力を、6800回転のとき最大トルク22.5kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する5300回転での馬力は166.5PS、最高出力が発生する6800回転でのトルクは21.1kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は88.57PS/L、トルクは10.0kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積564.7cc)あたりの馬力は50.0PS、トルクは5.6kgmです。
H23A型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 8 ]、換算トルクが[ 7 ]の「結構な高出力エンジン」にカテゴライズされます。
ちなみに、H23A型エンジン搭載車種のうち、最高出力が最も大きかったのはCH9型アコード ワゴンの200PS/22.5kgm、最も小さかったのはCC5型アスコット イノーバの165PS/21.5kgmとなっています。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
87.0 | 95.0 | 2258cc | 10.6 | 1.09 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
87.5 | 95.0 | 2285cc | 10.7 | 1.09 |
88.0 | 2311cc | 10.8 | 1.08 | |
88.5 | 2337cc | 10.9 | 1.07 | |
89.0 | 2364cc | 11.1 | 1.07 | |
89.5 | 2391cc | 11.2 | 1.06 | |
90.0 | 2417cc | 11.3 | 1.06 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
87.0 | 96.0 | 2283cc | 10.7 | 1.10 |
97.0 | 2306cc | 10.8 | 1.11 | |
98.0 | 2330cc | 10.9 | 1.13 | |
99.0 | 2354cc | 11.0 | 1.14 | |
100.0 | 2378cc | 11.1 | 1.15 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の87.0mmから0.5mm刻みで90.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の95.0mmから1mm刻みで100.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。H23A型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.09から1.06に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
H23A型エンジンのピストン径87.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが27件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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三菱 6B31型 | 87.6mm [+0.6mm] | 2290cc [+32cc] |
スバル EJ18型 | 87.9mm [+0.9mm] | 2306cc [+48cc] |
スバル EJ16型 | 87.9mm [+0.9mm] | 2306cc [+48cc] |
三菱 4B12型 | 88.0mm [+1.0mm] | 2311cc [+53cc] |
スズキ H27A型 | 88.0mm [+1.0mm] | 2311cc [+53cc] |
レクサス 1LR型 | 88.0mm [+1.0mm] | 2311cc [+53cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、三菱:CW6W型アウトランダーに搭載される6B31型2997ccの87.6mm、スバル:BD2型レガシィ セダンに搭載されるEJ18型1820ccの87.9mm、スバル:GF4型インプレッサ スポーツワゴンに搭載されるEJ16型1597ccの87.9mm、三菱:CW5W型アウトランダーに搭載される4B12型2359ccの88.0mm、スズキ:TD94W型エスクードに搭載されるH27A型2736ccの88.0mm、レクサス:LFA10型LFAに搭載される1LR型4805ccの88.0mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 2500ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 2500ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 2500ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 2500ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [2500ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [2500ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが95.0mmのエンジンが最高出力を発生する6800回転での平均ピストンスピードは21.5m/sとなり、これは1秒間に21.5メートル(時速にすると77.4km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する5300回転では16.8m/s、最高出力が発生する6800回転より500回転高い7300回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は23.1m/sとなっています。
参考までにストロークが95.0mmのH23A型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね6.35m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、6320回転くらいが良い感じの回転数になるのではないかと思いますが、このエンジンは最高出力を発生している時点で既に20.0m/sを超えており、レブリミットを考慮するともう少し余分に(300~500回転?)回ることから、内部では大変なことになりながらも頑張って回っているエンジンです。
H23A型エンジンを搭載する車種の例
全4車種を最高出力が大きいものから順に表示しています。
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||||
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ホンダ CH9 | 2001/05 アコード ワゴン SiR [GH-CH9] | 200PS 22.5kgm 11.4km/L 7.150kg/PS | 自然吸気 FF/4AT ワゴン 5人乗り | |||||||||||||||
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ホンダ CL2 | 2001/05 アコード ワゴン SiR [GH-CL2] | 190PS 22.5kgm 11.0km/L 7.895kg/PS | 自然吸気 4WD/4AT ワゴン 5人乗り | |||||||||||||||
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ホンダ CC5 | 1994/02 アスコット イノーバ 2.3Si-Z TCV [E-CC5] | 165PS 21.5kgm 10.6km/L 8.303kg/PS | 自然吸気 FF/4AT セダン 5人乗り | |||||||||||||||
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ホンダ CC4 | 1994/02 アスコット イノーバ 2.3Si-Z [E-CC4] | 165PS 21.5kgm 10.6km/L 7.939kg/PS | 自然吸気 FF/4AT セダン 5人乗り | |||||||||||||||
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その他のH23A型エンジン型式と代表的な車種
H23A3型 全1車種 | ローバー:600 [623SLi] 最高出力158PS/最大トルク21.0kgm 1998/12モデル | |
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ローバー H23A3型 全1車種 | 600 [623SLi] 158PS/21.0kgm |