フィアット:169A4型エンジンの諸元と性能まとめ [直列4気筒 1240cc]

ここではフィアットの31212型・500 [1.2-POP|2010/08モデル] に搭載されている169A4型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

169A4型の自然吸気エンジン諸元


31212型 500
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式ABA-31212型
車名&グレード500
1.2-POP
エンジン型式169A4
種類直列4気筒
排気量1240cc
内径×行程70.8mm×78.8mm
ボアストローク比1.11
単気筒容積310.2cc
圧縮比11.1
吸気方式自然吸気
使用燃料ハイオクガソリン
最高出力69PS/5500rpm
最大トルク10.4kgm/3000rpm

まず基本的な成り立ちとして、169A4型エンジンはボア(内径)70.8mm、ストローク(行程)78.8mm、ボアストローク比1.11のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。

なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。

このサイトにて登録されている車種のうち、169A4型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、2008/03から発売された3代目500 [31212型|2010/08]、最も新しい車種は2008/03から発売された3代目500C [31212型|2021/10]となっており、NA車は5車種、ターボ/SC車は0車種の全5車種が登録されています。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
169A4のエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷43.6PS → 69PS
トルクの変遷10.4kgm → 9.0kgm
リッター馬力55.65PS/L
リッタートルク8.4kgm/L

今回の参考車両である500の直列4気筒1240cc、圧縮比11.1でハイオクガソリン仕様の自然吸気エンジンは、5500回転のとき最高出力69馬力を、5500回転のとき最大トルク10.4kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する3000回転での馬力は43.6PS、最高出力が発生する5500回転でのトルクは9.0kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は55.65PS/L、トルクは8.4kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積310.2cc)あたりの馬力は17.2PS、トルクは2.6kgmです。

169A4型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 3 ]、換算トルクが[ 3 ]の「控えめな出力のエンジン」にカテゴライズされます。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
70.878.81240cc11.11.11
ボアアップによる排気量拡大
71.378.81258cc11.31.11
71.81276cc11.41.10
72.31294cc11.61.09
72.81312cc11.71.08
73.31330cc11.81.08
73.81348cc12.01.07
ストロークアップによる排気量拡大
70.879.81257cc11.21.13
80.81272cc11.41.14
81.81288cc11.51.16
82.81304cc11.61.17
83.81320cc11.71.18

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の70.8mmから0.5mm刻みで73.8mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の78.8mmから1mm刻みで83.8mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。169A4型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.11から1.07に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

169A4型エンジンのピストン径70.8mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが27件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
トヨタ
K3型
72.0mm
[+1.2mm]
1283cc
[+43cc]
日産
CGA3型
72.0mm
[+1.2mm]
1283cc
[+43cc]
トヨタ
EJ型
72.0mm
[+1.2mm]
1283cc
[+43cc]
トヨタ
3SZ型
72.0mm
[+1.2mm]
1283cc
[+43cc]
トヨタ
2SZ型
72.0mm
[+1.2mm]
1283cc
[+43cc]
ホンダ
ECA型
72.0mm
[+1.2mm]
1283cc
[+43cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、トヨタ:S231E型デュエットに搭載されるK3型1297ccの72.0mm、日産:AZ10型キューブに搭載されるCGA3型1348ccの72.0mm、トヨタ:M100A型ミラジーノ1000に搭載されるEJ型989ccの72.0mm、トヨタ:M502G型ラッシュに搭載される3SZ型1495ccの72.0mm、トヨタ:SCP90型ヴィッツに搭載される2SZ型1296ccの72.0mm、ホンダ:ZE1型インサイトに搭載されるECA型995ccの72.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 1500ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 1500ccクラスのエンジン
ストロークが短い 1500ccクラスのエンジン
ストロークが長い 1500ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [1500ccクラス]
ボアストローク比・降順 [1500ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
3000rpm
最高出力
5500rpm
78.8mm7.9m/s14.4m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.3m/s19km/h
4000rpm10.5m/s38km/h
6000rpm15.8m/s57km/h
8000rpm21.0m/s76km/h
10000rpm26.3m/s95km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが78.8mmのエンジンが最高出力を発生する5500回転での平均ピストンスピードは14.4m/sとなり、これは1秒間に14.4メートル(時速にすると51.8km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する3000回転では7.9m/s、最高出力が発生する5500回転より500回転高い6000回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は15.8m/sとなっています。

参考までにストロークが78.8mmの169A4型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.25m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)7610回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


169A4型エンジンを搭載する車種の例

全5車種を最高出力が大きいものから順に表示しています。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
フィアット
31212
2010/08
500
1.2-POP
[ABA-31212]
69PS
10.4kgm
19.2km/L
14.348kg/PS
自然吸気
FF/5AT
ハッチバック
4人乗り
車両型式:ABA-31212

500
[1.2-POP]
2010/08モデル
最高出力69PS
最大トルク10.4kgm
10-15モード燃費19.2km/L
吸気方式自然吸気
車体構成4人乗りハッチバック
FF/5AT
フィアット
31212
2010/08
500
1.2-Sport
[ABA-31212]
69PS
10.4kgm
17.2km/L
14.348kg/PS
自然吸気
FF/5MT
ハッチバック
4人乗り
車両型式:ABA-31212

500
[1.2-Sport]
2010/08モデル
最高出力69PS
最大トルク10.4kgm
10-15モード燃費17.2km/L
吸気方式自然吸気
車体構成4人乗りハッチバック
FF/5MT
フィアット
31212
2010/08
500C
1.2-POP
[ABA-31212]
69PS
10.4kgm
17.6km/L
14.928kg/PS
自然吸気
FF/5AT
オープンカー
4人乗り
車両型式:ABA-31212

500C
[1.2-POP]
2010/08モデル
最高出力69PS
最大トルク10.4kgm
10-15モード燃費17.6km/L
吸気方式自然吸気
車体構成4人乗りオープンカー
FF/5AT
フィアット
31212
2021/10
500C
1.2 Cult
[3BA-31212]
69PS
10.4kgm
17.5km/L
14.928kg/PS
自然吸気
FF/5AT
オープンカー
4人乗り
車両型式:3BA-31212

500C
[1.2 Cult]
2021/10モデル
最高出力69PS
最大トルク10.4kgm
WLTCモード燃費17.5km/L
10-15モード燃費17.6km/L
吸気方式自然吸気
車体構成4人乗りオープンカー
FF/5AT
フィアット
31212
2021/10
500
1.2 Cult
[3BA-31212]
69PS
10.4kgm
18.0km/L
14.348kg/PS
自然吸気
FF/5AT
ハッチバック
4人乗り
車両型式:3BA-31212

500
[1.2 Cult]
2021/10モデル
最高出力69PS
最大トルク10.4kgm
WLTCモード燃費18.0km/L
10-15モード燃費17.6km/L
吸気方式自然吸気
車体構成4人乗りハッチバック
FF/5AT

フィアット製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】