ここではシボレーのA1XC型・カマロ クーペ [Coupe LT-RS|2021/12モデル] に搭載されている1D型のターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
1D型のターボエンジン諸元
A1XC型 カマロ クーペ 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | 7BA-A1XC型 |
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車名&グレード | カマロ クーペ Coupe LT-RS |
エンジン型式 | 1D |
種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 1998cc |
内径×行程 | 86.0mm×86.0mm |
ボアストローク比 | 1.00 |
単気筒容積 | 499.5cc |
吸気方式 | ターボ |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 275PS/5500rpm |
最大トルク | 40.8kgm/3000-4000rpm |
まず基本的な成り立ちとして、1D型エンジンはボア(内径)86.0mm、ストローク(行程)86.0mm、ボアストローク比1.00のスクエア型エンジン(ピストン径とストローク量が同一)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型とショートストローク型の美点の良いとこ取り、若しくは欠点の悪いとこ取り、特にこれと言ってどうとも言えないバランス型の万能エンジンとなる素質があります。
数多あるボアとストロークの組み合わせの中で唯一、双方が同じ寸法のときにだけ現れるスクエア型はその存在の希少性こそが最大の魅力であると言えましょう。
このサイトにて1D型のターボエンジンを搭載している車種は、2017/11から発売された6代目カマロ クーペ [A1XC型|2021/12]となっており、NA車は0車種、ターボ/SC車は2車種の全2車種が登録されています。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 170.9PS → 275PS |
トルクの変遷 | 40.8kgm → 35.8kgm |
リッター馬力 | 137.64PS/L |
リッタートルク | 20.4kgm/L |
今回の参考車両であるカマロ クーペの直列4気筒1998ccでハイオクガソリン仕様のターボエンジンは、5500回転のとき最高出力275馬力を、5500回転のとき最大トルク40.8kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する3000回転での馬力は170.9PS、最高出力が発生する5500回転でのトルクは35.8kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は137.64PS/L、トルクは20.4kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積499.5cc)あたりの馬力は68.8PS、トルクは10.2kgmです。
1D型ターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 9 ]、換算トルクが[ 10 ]の「かなりの高出力エンジン」にカテゴライズされます。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
86.0 | 86.0 | 1998cc | - | 1.00 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
86.5 | 86.0 | 2021cc | - | 0.99 |
87.0 | 2045cc | - | 0.99 | |
87.5 | 2068cc | - | 0.98 | |
88.0 | 2092cc | - | 0.98 | |
88.5 | 2116cc | - | 0.97 | |
89.0 | 2140cc | - | 0.97 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
86.0 | 87.0 | 2021cc | - | 1.01 |
88.0 | 2045cc | - | 1.02 | |
89.0 | 2068cc | - | 1.03 | |
90.0 | 2091cc | - | 1.05 | |
91.0 | 2114cc | - | 1.06 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の86.0mmから0.5mm刻みで89.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の86.0mmから1mm刻みで91.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと1.00のスクエア型からショートストローク型へとシフトしていきます。1D型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.00から0.97に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
1D型エンジンのピストン径86.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが8件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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日産 VG30型 | 87.0mm [+1.0mm] | 2045cc [+47cc] |
日産 RB-X GT2型 | 87.0mm [+1.0mm] | 2045cc [+47cc] |
マツダ L3型 | 87.5mm [+1.5mm] | 2068cc [+70cc] |
レクサス T24A型 | 87.5mm [+1.5mm] | 2068cc [+70cc] |
トヨタ G16E型 | 87.5mm [+1.5mm] | 2068cc [+70cc] |
いすゞ 4ZC1型 | 88.0mm [+2.0mm] | 2092cc [+94cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、日産:GCZ32型フェアレディZに搭載されるVG30型2960ccの87.0mm、日産:BCNR33型スカイラインGT-Rに搭載されるRB-X GT2型2771ccの87.0mm、マツダ:GG3P型マツダスピード アテンザに搭載されるL3型2260ccの87.5mm、レクサス:TAZA25型ヴェルファイアに搭載されるT24A型2393ccの87.5mm、トヨタ:GZEA14H型GRカローラに搭載されるG16E型1618ccの87.5mm、いすゞ:JR120型ピアッツァに搭載される4ZC1型1994ccの88.0mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 2000ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 2000ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 2000ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 2000ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [2000ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [2000ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが86.0mmのエンジンが最高出力を発生する5500回転での平均ピストンスピードは15.8m/sとなり、これは1秒間に15.8メートル(時速にすると56.9km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する3000回転では8.6m/s、最高出力が発生する5500回転より500回転高い6000回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は17.2m/sとなっています。
参考までにストロークが86.0mmの1D型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.75m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6980回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
1D型エンジンを搭載する車種の例
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||
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シボレー A1XC | 2021/12 カマロ クーペ Coupe LT-RS [7BA-A1XC] | 275PS 40.8kgm - 5.673kg/PS | ターボ FR/8AT クーペ 4人乗り | |||||||||||||
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その他の1D型エンジン型式と代表的な車種
1D型 全7車種 | キャデラック:CTS [Premium] 最高出力276PS/最大トルク40.8kgm 2016/01モデル | |
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キャデラック 1D型 全7車種 | CTS [Premium] 276PS/40.8kgm |