キャデラック:1D型エンジンの諸元と性能まとめ [直列4気筒 1998cc]

ここではキャデラックのA1LL型・CTS [Premium|2016/01モデル] に搭載されている1D型のターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

1D型のターボエンジン諸元


A1LL型 CTS
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式ABA-A1LL型
車名&グレードCTS
Premium
エンジン型式1D
種類直列4気筒
排気量1998cc
内径×行程86.0mm×86.0mm
ボアストローク比1.00
単気筒容積499.5cc
吸気方式ターボ
使用燃料ハイオクガソリン
最高出力276PS/5500rpm
最大トルク40.8kgm/3000-4500rpm

まず基本的な成り立ちとして、1D型エンジンはボア(内径)86.0mm、ストローク(行程)86.0mm、ボアストローク比1.00のスクエア型エンジン(ピストン径とストローク量が同一)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型とショートストローク型の美点の良いとこ取り、若しくは欠点の悪いとこ取り、特にこれと言ってどうとも言えないバランス型の万能エンジンとなる素質があります。

数多あるボアとストロークの組み合わせの中で唯一、双方が同じ寸法のときにだけ現れるスクエア型はその存在の希少性こそが最大の魅力であると言えましょう。

このサイトにて登録されている車種のうち、1D型のターボエンジンを搭載する最も古い車種は、2013/03から発売された初代ATS セダン [A1SL型|2015/01]、最も新しい車種は2014/04から発売された3代目CTS [A1LL型|2016/01]となっており、NA車は0車種、ターボ/SC車は7車種の全7車種が登録されています。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
1Dのエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷170.9PS → 276PS
トルクの変遷40.8kgm → 35.9kgm
リッター馬力138.14PS/L
リッタートルク20.4kgm/L

今回の参考車両であるCTSの直列4気筒1998ccでハイオクガソリン仕様のターボエンジンは、5500回転のとき最高出力276馬力を、5500回転のとき最大トルク40.8kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する3000回転での馬力は170.9PS、最高出力が発生する5500回転でのトルクは35.9kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は138.14PS/L、トルクは20.4kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積499.5cc)あたりの馬力は69.0PS、トルクは10.2kgmです。

1D型ターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 9 ]、換算トルクが[ 10 ]の「かなりの高出力エンジン」にカテゴライズされます。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
86.086.01998cc-1.00
ボアアップによる排気量拡大
86.586.02021cc-0.99
87.02045cc-0.99
87.52068cc-0.98
88.02092cc-0.98
88.52116cc-0.97
89.02140cc-0.97
ストロークアップによる排気量拡大
86.087.02021cc-1.01
88.02045cc-1.02
89.02068cc-1.03
90.02091cc-1.05
91.02114cc-1.06

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の86.0mmから0.5mm刻みで89.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の86.0mmから1mm刻みで91.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと1.00のスクエア型からショートストローク型へとシフトしていきます。1D型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.00から0.97に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

1D型エンジンのピストン径86.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが8件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
日産
VG30型
87.0mm
[+1.0mm]
2045cc
[+47cc]
日産
RB-X GT2型
87.0mm
[+1.0mm]
2045cc
[+47cc]
マツダ
L3型
87.5mm
[+1.5mm]
2068cc
[+70cc]
レクサス
T24A型
87.5mm
[+1.5mm]
2068cc
[+70cc]
トヨタ
G16E型
87.5mm
[+1.5mm]
2068cc
[+70cc]
いすゞ
4ZC1型
88.0mm
[+2.0mm]
2092cc
[+94cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、日産:GCZ32型フェアレディZに搭載されるVG30型2960ccの87.0mm、日産:BCNR33型スカイラインGT-Rに搭載されるRB-X GT2型2771ccの87.0mm、マツダ:GG3P型マツダスピード アテンザに搭載されるL3型2260ccの87.5mm、レクサス:TAZA25型ヴェルファイアに搭載されるT24A型2393ccの87.5mm、トヨタ:GZEA14H型GRカローラに搭載されるG16E型1618ccの87.5mm、いすゞ:JR120型ピアッツァに搭載される4ZC1型1994ccの88.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 2000ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 2000ccクラスのエンジン
ストロークが短い 2000ccクラスのエンジン
ストロークが長い 2000ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [2000ccクラス]
ボアストローク比・降順 [2000ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
3000rpm
最高出力
5500rpm
86.0mm8.6m/s15.8m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.7m/s21km/h
4000rpm11.5m/s41km/h
6000rpm17.2m/s62km/h
8000rpm22.9m/s82km/h
10000rpm28.7m/s103km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが86.0mmのエンジンが最高出力を発生する5500回転での平均ピストンスピードは15.8m/sとなり、これは1秒間に15.8メートル(時速にすると56.9km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する3000回転では8.6m/s、最高出力が発生する5500回転より500回転高い6000回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は17.2m/sとなっています。

参考までにストロークが86.0mmの1D型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.75m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6980回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


1D型エンジンを搭載する車種の例

全7車種を最高出力が大きいものから順に表示しています。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
キャデラック
A1LL
2016/01
CTS
Premium
[ABA-A1LL]
276PS
40.8kgm
-
6.449kg/PS
ターボ
4WD/8AT
セダン
5人乗り
車両型式:ABA-A1LL

CTS
[Premium]
2016/01モデル
最高出力276PS
最大トルク40.8kgm
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りセダン
4WD/8AT
キャデラック
A1SL
2016/01
ATS セダン
Luxury
[ABA-A1SL]
276PS
40.8kgm
-
5.797kg/PS
ターボ
FR/8AT
セダン
5人乗り
車両型式:ABA-A1SL

ATS セダン
[Luxury]
2016/01モデル
最高出力276PS
最大トルク40.8kgm
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りセダン
FR/8AT
キャデラック
A1SL
2015/07
ATS クーペ
Premium
[ABA-A1SL]
276PS
40.8kgm
-
5.725kg/PS
ターボ
FR/6AT
クーペ
4人乗り
車両型式:ABA-A1SL

ATS クーペ
[Premium]
2015/07モデル
最高出力276PS
最大トルク40.8kgm
吸気方式ターボ
車体構成4人乗りクーペ
FR/6AT
キャデラック
A1LL
2015/07
CTS
Premium
[ABA-A1LL]
276PS
40.8kgm
11.0km/L
6.413kg/PS
ターボ
4WD/6AT
セダン
5人乗り
車両型式:ABA-A1LL

CTS
[Premium]
2015/07モデル
最高出力276PS
最大トルク40.8kgm
JC08モード燃費11.0km/L
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りセダン
4WD/6AT
キャデラック
A1SL
2016/01
ATS クーペ
Premium
[ABA-A1SL]
276PS
40.8kgm
-
5.797kg/PS
ターボ
FR/8AT
クーペ
4人乗り
車両型式:ABA-A1SL

ATS クーペ
[Premium]
2016/01モデル
最高出力276PS
最大トルク40.8kgm
JC08モード燃費11.0km/L
吸気方式ターボ
車体構成4人乗りクーペ
FR/8AT
キャデラック
A1SL
2015/01
ATS セダン
Luxury
[ABA-A1SL]
276PS
35.9kgm
11.8km/L
5.725kg/PS
ターボ
FR/6AT
セダン
5人乗り
車両型式:ABA-A1SL

ATS セダン
[Luxury]
2015/01モデル
最高出力276PS
最大トルク35.9kgm
JC08モード燃費11.8km/L
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りセダン
FR/6AT
キャデラック
A1LL
2015/01
CTS
Luxury
[ABA-A1LL]
276PS
40.8kgm
11.8km/L
6.087kg/PS
ターボ
FR/6AT
セダン
5人乗り
車両型式:ABA-A1LL

CTS
[Luxury]
2015/01モデル
最高出力276PS
最大トルク40.8kgm
JC08モード燃費11.8km/L
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りセダン
FR/6AT

その他の1D型エンジン型式と代表的な車種

1D型
全2車種
シボレー:カマロ クーペ [Coupe LT-RS]
最高出力275PS/最大トルク40.8kgm
2021/12モデル
シボレー
1D型
全2車種
カマロ クーペ
[Coupe LT-RS]
275PS/40.8kgm

キャデラック製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】