ここではBMWのKB60型・7シリーズ [760iL F02|2010/09モデル] に搭載されているN74B60A型のツインターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
N74B60A型のツインターボエンジン諸元
KB60型 7シリーズ 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | ABA-KB60型 |
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車名&グレード | 7シリーズ 760iL F02 |
エンジン型式 | N74B60A |
種類 | V型12気筒 |
排気量 | 5972cc |
内径×行程 | 89.0mm×80.0mm |
ボアストローク比 | 0.90 |
単気筒容積 | 497.7cc |
圧縮比 | 10.0 |
吸気方式 | ツインターボ |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 544PS/5250rpm |
最大トルク | 76.5kgm/1500-5000rpm |
まず基本的な成り立ちとして、N73B60型エンジンはボア(内径)89.0mm、ストローク(行程)80.0mm、ボアストローク比0.90のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。
また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 160.2PS → 544PS |
トルクの変遷 | 76.5kgm → 74.2kgm |
リッター馬力 | 91.09PS/L |
リッタートルク | 12.8kgm/L |
今回の参考車両である7シリーズのV型12気筒5972cc、圧縮比10.0でハイオクガソリン仕様のツインターボエンジンは、5250回転のとき最高出力544馬力を、5250回転のとき最大トルク76.5kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する1500回転での馬力は160.2PS、最高出力が発生する5250回転でのトルクは74.2kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は91.09PS/L、トルクは12.8kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積497.7cc)あたりの馬力は45.3PS、トルクは6.4kgmです。
N73B60型ツインターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 5 ]、換算トルクが[ 4 ]の「標準的な出力(中の下)のエンジン」にカテゴライズされます。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
89.0 | 80.0 | 5972cc | 10.0 | 0.90 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
89.5 | 80.0 | 6039cc | 10.1 | 0.89 |
90.0 | 6107cc | 10.2 | 0.89 | |
90.5 | 6175cc | 10.3 | 0.88 | |
91.0 | 6244cc | 10.4 | 0.88 | |
91.5 | 6312cc | 10.5 | 0.87 | |
92.0 | 6382cc | 10.6 | 0.87 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
89.0 | 81.0 | 6047cc | 10.1 | 0.91 |
82.0 | 6121cc | 10.2 | 0.92 | |
83.0 | 6196cc | 10.3 | 0.93 | |
84.0 | 6271cc | 10.5 | 0.94 | |
85.0 | 6345cc | 10.6 | 0.96 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の89.0mmから0.5mm刻みで92.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の80.0mmから1mm刻みで85.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.90からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。N73B60型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.90から0.87に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
N73B60型エンジンのピストン径89.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが12件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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トヨタ 3UZ型 | 91.0mm [+2.0mm] | 6244cc [+272cc] |
ホンダ JNC型 | 91.0mm [+2.0mm] | 6244cc [+272cc] |
三菱 6G72型 | 91.1mm [+2.1mm] | 6257cc [+285cc] |
三菱 4D56型 | 91.1mm [+2.1mm] | 6257cc [+285cc] |
三菱 G54B型 | 91.1mm [+2.1mm] | 6257cc [+285cc] |
スバル EJ20型 | 92.0mm [+3.0mm] | 6382cc [+410cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、トヨタ:UCF30型セルシオ V430-Rに搭載される3UZ型4292ccの91.0mm、ホンダ:NC1型NSXに搭載されるJNC型3492ccの91.0mm、三菱:F36A型ディアマンテに搭載される6G72型2972ccの91.1mm、三菱:PC5W型デリカ スペースギアに搭載される4D56型2476ccの91.1mm、三菱:A187A型スタリオンに搭載されるG54B型2555ccの91.1mm、スバル:BL5型レガシィB4に搭載されるEJ20型1994ccの92.0mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 5000cc超のエンジン
●ピストン径が大きい 5000cc超のエンジン
●ストロークが短い 5000cc超のエンジン
●ストロークが長い 5000cc超のエンジン
●ボアストローク比・昇順 [5000cc超]
●ボアストローク比・降順 [5000cc超]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが80.0mmのエンジンが最高出力を発生する5250回転での平均ピストンスピードは14.0m/sとなり、これは1秒間に14.0メートル(時速にすると50.4km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する1500回転では4.0m/s、最高出力が発生する5250回転より500回転高い5750回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は15.3m/sとなっています。
参考までにストロークが80.0mmのN73B60型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.35m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)7500回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
N74B60A型エンジンを搭載する車種の例
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||||||
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BMW KB60 | 2010/09 7シリーズ 760iL F02 [ABA-KB60] | 544PS 76.5kgm 6.2km/L 4.210kg/PS | ターボ FR/8AT セダン 5人乗り | |||||||||||||||||
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その他のN73B60型エンジン型式と代表的な車種
N73B60A型 全1車種 | BMW:7シリーズ [760iL E66] 最高出力445PS/最大トルク61.2kgm 2008/10モデル | |
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BMW N73B60A型 全1車種 | 7シリーズ [760iL E66] 445PS/61.2kgm |