BMW:M70B50型エンジンの諸元と性能まとめ [V型12気筒 4987cc]

ここではBMWのE50型・8シリーズ [850i 50-12 E31|1990/11モデル] に搭載されているM70B50型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

M70B50型の自然吸気エンジン諸元


E50型 8シリーズ
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式E-E50型
車名&グレード8シリーズ
850i 50-12 E31
エンジン型式M70B50
種類V型12気筒
排気量4987cc
内径×行程84.0mm×75.0mm
ボアストローク比0.89
単気筒容積415.6cc
圧縮比8.8
吸気方式自然吸気
使用燃料レギュラーガソリン
最高出力300PS/5200rpm
最大トルク45.9kgm/4100rpm

まず基本的な成り立ちとして、M70B50型エンジンはボア(内径)84.0mm、ストローク(行程)75.0mm、ボアストローク比0.89のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。

また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。

このサイトにて登録されている車種のうち、M70B50型の自然吸気エンジンを搭載する最も古い車種は、1990/03から発売された初代8シリーズ [E50型|1990/11]、最も新しい車種は1987/11から発売された2代目7シリーズ [G50型|1992/09]となっており、NA車は3車種、ターボ/SC車は0車種の全3車種が登録されています。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
M70B50のエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷262.7PS → 300PS
トルクの変遷45.9kgm → 41.3kgm
リッター馬力60.2PS/L
リッタートルク9.2kgm/L

今回の参考車両である8シリーズのV型12気筒4987cc、圧縮比8.8でレギュラーガソリン仕様の自然吸気エンジンは、5200回転のとき最高出力300馬力を、5200回転のとき最大トルク45.9kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4100回転での馬力は262.7PS、最高出力が発生する5200回転でのトルクは41.3kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は60.2PS/L、トルクは9.2kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積415.6cc)あたりの馬力は25.0PS、トルクは3.8kgmです。

M70B50型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 4 ]、換算トルクが[ 5 ]の「やや控えめな出力のエンジン」にカテゴライズされます。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
84.075.04987cc8.80.89
ボアアップによる排気量拡大
84.575.05047cc8.90.89
85.05107cc9.00.88
85.55167cc9.10.88
86.05228cc9.20.87
86.55289cc9.30.87
87.05350cc9.40.86
ストロークアップによる排気量拡大
84.076.05054cc8.90.90
77.05120cc9.00.92
78.05187cc9.10.93
79.05253cc9.20.94
80.05320cc9.30.95

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の84.0mmから0.5mm刻みで87.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の75.0mmから1mm刻みで80.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.89からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。M70B50型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.89から0.86に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

M70B50型エンジンのピストン径84.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが56件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
マツダ
YF型
84.8mm
[+0.8mm]
5083cc
[+96cc]
三菱
4G63型
85.0mm
[+1.0mm]
5107cc
[+120cc]
日産
VQ25型
85.0mm
[+1.0mm]
5107cc
[+120cc]
スバル
EJ15型
85.0mm
[+1.0mm]
5107cc
[+120cc]
ホンダ
F20B型
85.0mm
[+1.0mm]
5107cc
[+120cc]
ホンダ
F22B型
85.0mm
[+1.0mm]
5107cc
[+120cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、マツダ:EPEW型トリビュートに搭載されるYF型1988ccの84.8mm、三菱:CT9A型ランサーエボリューションに搭載される4G63型1997ccの85.0mm、日産:M35型プラウディアに搭載されるVQ25型2495ccの85.0mm、スバル:GG2型インプレッサ スポーツワゴンに搭載されるEJ15型1493ccの85.0mm、ホンダ:CJ3型トルネオに搭載されるF20B型1997ccの85.0mm、ホンダ:BB7型プレリュードに搭載されるF22B型2156ccの85.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 5000ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 5000ccクラスのエンジン
ストロークが短い 5000ccクラスのエンジン
ストロークが長い 5000ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [5000ccクラス]
ボアストローク比・降順 [5000ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
4100rpm
最高出力
5200rpm
75.0mm10.2m/s13.0m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.0m/s18km/h
4000rpm10.0m/s36km/h
6000rpm15.0m/s54km/h
8000rpm20.0m/s72km/h
10000rpm25.0m/s90km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが75.0mmのエンジンが最高出力を発生する5200回転での平均ピストンスピードは13.0m/sとなり、これは1秒間に13.0メートル(時速にすると46.8km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する4100回転では10.2m/s、最高出力が発生する5200回転より500回転高い5700回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は14.2m/sとなっています。

参考までにストロークが75.0mmのM70B50型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.00m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)8000回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


M70B50型エンジンを搭載する車種の例

全3車種を最高出力が大きいものから順に表示しています。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
BMW
E50
1990/11
8シリーズ
850i 50-12 E31
[E-E50]
300PS
45.9kgm
4.7km/L
6.133kg/PS
自然吸気
FR/4AT
クーペ
4人乗り

8シリーズ
[850i 50-12 E31]
1990/11モデル
車両型式E-E50
最高出力300PS
最大トルク45.9kgm
10-15モード燃費4.7km/L
パワーウェイト6.133kg/PS
吸気方式自然吸気
駆動方式&変速機FR/4AT
車体形状&乗車定員クーペ/4人乗り
BMW
G50
1992/09
7シリーズ
750iL E32
[E-G50]
300PS
45.9kgm
4.4km/L
6.200kg/PS
自然吸気
FR/4AT
セダン
5人乗り

7シリーズ
[750iL E32]
1992/09モデル
車両型式E-G50
最高出力300PS
最大トルク45.9kgm
10-15モード燃費4.4km/L
パワーウェイト6.200kg/PS
吸気方式自然吸気
駆動方式&変速機FR/4AT
車体形状&乗車定員セダン/5人乗り
BMW
GB50
1992/09
7シリーズ
750i E32
[E-GB50]
300PS
45.9kgm
4.4km/L
5.967kg/PS
自然吸気
FR/4AT
セダン
5人乗り

7シリーズ
[750i E32]
1992/09モデル
車両型式E-GB50
最高出力300PS
最大トルク45.9kgm
10-15モード燃費4.4km/L
パワーウェイト5.967kg/PS
吸気方式自然吸気
駆動方式&変速機FR/4AT
車体形状&乗車定員セダン/5人乗り

BMW製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】