ここではBMWの7D20型・7シリーズ [740e iPerformance G11|2017/04モデル] に搭載されているB48B20B型のターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
B48B20B型のターボエンジン諸元
7D20型 7シリーズ 主要諸元と走行性能まとめ | |
車両型式 | DLA-7D20型 |
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車名&グレード | 7シリーズ 740e iPerformance G11 |
エンジン型式 | B48B20B |
種類 | 直4+モーター |
排気量 | 1998cc |
内径×行程 | 82.0mm×94.6mm |
ボアストローク比 | 1.15 |
単気筒容積 | 499.6cc |
圧縮比 | 10.2 |
吸気方式 | ターボ |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 258PS/5000rpm |
最大トルク | 40.8kgm/1550-4400rpm |
まず基本的な成り立ちとして、B48B20型エンジンはボア(内径)82.0mm、ストローク(行程)94.6mm、ボアストローク比1.15のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。
なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。
このサイトにて登録されている車種のうち、B48B20B型のターボエンジンを搭載する最も古い車種は、2013/09から発売された初代4シリーズ クーペ [4N20型|2016/04]、最も新しい車種は2019/03から発売された3代目Z4 [HF20型|2023/04]となっており、NA車は0車種、ターボ/SC車は15車種の全15車種が登録されています。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 88.3PS → 258PS |
トルクの変遷 | 40.8kgm → 37.0kgm |
リッター馬力 | 129.13PS/L |
リッタートルク | 20.4kgm/L |
今回の参考車両である7シリーズの直4+モーター1998cc、圧縮比10.2でハイオクガソリン仕様のターボエンジンは、5000回転のとき最高出力258馬力を、5000回転のとき最大トルク40.8kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する1550回転での馬力は88.3PS、最高出力が発生する5000回転でのトルクは37.0kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は129.13PS/L、トルクは20.4kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積499.6cc)あたりの馬力は64.5PS、トルクは10.2kgmです。
B48B20型ターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 8 ]、換算トルクが[ 10 ]の「結構な高出力エンジン」にカテゴライズされます。
ちなみに、B48B20B型のターボ・SCエンジン搭載車種のうち、最高出力が最も大きかったのは7D20型7シリーズの258PS/40.8kgm、最も小さかったのは5X20型3シリーズ セダンの184PS/30.6kgmとなっています。
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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
82.0 | 94.6 | 1998cc | 10.2 | 1.15 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
82.5 | 94.6 | 2023cc | 10.3 | 1.15 |
83.0 | 2047cc | 10.4 | 1.14 | |
83.5 | 2072cc | 10.5 | 1.13 | |
84.0 | 2097cc | 10.7 | 1.13 | |
84.5 | 2122cc | 10.8 | 1.12 | |
85.0 | 2147cc | 10.9 | 1.11 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
82.0 | 95.6 | 2019cc | 10.3 | 1.17 |
96.6 | 2041cc | 10.4 | 1.18 | |
97.6 | 2062cc | 10.5 | 1.19 | |
98.6 | 2083cc | 10.6 | 1.20 | |
99.6 | 2104cc | 10.7 | 1.21 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の82.0mmから0.5mm刻みで85.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の94.6mmから1mm刻みで99.6mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。B48B20型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.15から1.11に変化するという具合です。
ピストン径が近いエンジンと排気量アップ
B48B20型エンジンのピストン径82.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが14件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。
Eg型式 | ピストン径 | 排気量 |
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三菱 4D68型 | 82.7mm [+0.7mm] | 2033cc [+35cc] |
日産 m274型 | 83.0mm [+1.0mm] | 2047cc [+49cc] |
マツダ BP型 | 83.0mm [+1.0mm] | 2047cc [+49cc] |
日産 CA18型 | 83.0mm [+1.0mm] | 2047cc [+49cc] |
トヨタ 7M型 | 83.0mm [+1.0mm] | 2047cc [+49cc] |
日産 274930型 | 83.0mm [+1.0mm] | 2047cc [+49cc] |
ピストン径が近いエンジンとしては、三菱:N28WG型RVRに搭載される4D68型1998ccの82.7mm、日産:YV37型スカイラインに搭載されるm274型1991ccの83.0mm、マツダ:NB8C型ロードスターに搭載されるBP型1839ccの83.0mm、日産:S13型シルビアに搭載されるCA18型1809ccの83.0mm、トヨタ:MZ20型ソアラに搭載される7M型2954ccの83.0mm、日産:ZV37型スカイラインに搭載される274930型1991ccの83.0mmなどが該当します。
(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。
●ピストン径が小さい 2000ccクラスのエンジン
●ピストン径が大きい 2000ccクラスのエンジン
●ストロークが短い 2000ccクラスのエンジン
●ストロークが長い 2000ccクラスのエンジン
●ボアストローク比・昇順 [2000ccクラス]
●ボアストローク比・降順 [2000ccクラス]
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが94.6mmのエンジンが最高出力を発生する5000回転での平均ピストンスピードは15.8m/sとなり、これは1秒間に15.8メートル(時速にすると56.9km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する1550回転では4.9m/s、最高出力が発生する5000回転より500回転高い5500回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は17.3m/sとなっています。
参考までにストロークが94.6mmのB48B20型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね6.30m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6340回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
B48B20B型エンジンを搭載する車種の例
全15車種のうち、最高出力が大きいものから順に上位3車種を表示しています。その他の車種については、ページ下部にあるリンクよりB48B20型エンジン搭載車種の一覧をご覧ください。
メーカー 車両型式 | 画像 | 車名&グレード | 出力/燃費 パワーウェイト | 排気量 変速機 | ||||||||||||||||
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BMW 7D20 | 2017/04 7シリーズ 740e iPerformance G11 [DLA-7D20] | 258PS 40.8kgm 15.6km/L 7.984kg/PS | ターボ FR/8AT セダン 5人乗り | |||||||||||||||||
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BMW JX20S | 2018/08 6シリーズ グランツーリスモ 630i Luxury G32 [ABA-JX20S] | 258PS 40.8kgm 14.3km/L 7.054kg/PS | ターボ FR/8AT セダン 5人乗り | |||||||||||||||||
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BMW 5F20 | 2020/08 3シリーズ セダン 330i M-sport G20 [3BA-5F20] | 258PS 40.8kgm 13.2km/L 6.318kg/PS | ターボ FR/8AT セダン 5人乗り | |||||||||||||||||
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B48B20型エンジン搭載車種の一覧 パワーウェイトレシオ順|全41車種 |
その他のB48B20型エンジン型式と代表的な車種
B48B20A型 全23車種 | BMW:3シリーズ セダン [320i G20] 最高出力184PS/最大トルク30.6kgm 2020/08モデル | |
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BMW B48B20A型 全23車種 | 3シリーズ セダン [320i G20] 184PS/30.6kgm | |
B48B20B型 全2車種 | トヨタ:スープラ [SZ-R] 最高出力258PS/最大トルク40.8kgm 2023/04モデル | |
トヨタ B48B20B型 全2車種 | スープラ [SZ-R] 258PS/40.8kgm | |
B48B20P型 全1車種 | BMW:5シリーズ セダン [Exclusive G60] 最高出力190PS/最大トルク31.6kgm 2023/07モデル | |
BMW B48B20P型 全1車種 | 5シリーズ セダン [Exclusive G60] 190PS/31.6kgm |