アウディ:DEC型エンジンの諸元と性能まとめ [V型6気筒 2893cc]

ここではアウディのF5DECF型・RS5 クーペ [BaseGrade|2019/05モデル] に搭載されているDEC型のターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

DEC型のターボエンジン諸元


F5DECF型 RS5 クーペ
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式ABA-F5DECF型
車名&グレードRS5 クーペ
BaseGrade
エンジン型式DEC
種類V型6気筒
排気量2893cc
内径×行程84.5mm×86.0mm
ボアストローク比1.02
単気筒容積482.3cc
圧縮比10.0
吸気方式ターボ
使用燃料ハイオクガソリン
最高出力450PS/5700-6700rpm
最大トルク61.2kgm/1900-5000rpm

まず基本的な成り立ちとして、DEC型エンジンはボア(内径)84.5mm、ストローク(行程)86.0mm、ボアストローク比1.02のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、厳密に言えばボアとストロークが全くの同一でなければスクエア型を名乗ることは許されませんが、ここまでボアストローク比が1に近いのであれば「もうスクエア型にしてあげても良いじゃない!」という気もします。

これらのエンジンはショートストローク型、或いはロングストローク型の風味を残しつつ、その実はスクエア型に限りなく近い特性を持ちます。「やっぱこう、どうせなら低回転で粘って高回転でキレ
(省略されました・・全てを読むには ここ を押してください)

このサイトにて登録されている車種のうち、DEC型のターボエンジンを搭載する最も古い車種は、2017/06から発売された2代目RS5 クーペ [F5DECF型|2019/05]、最も新しい車種は2017/06から発売された2代目RS5 クーペ [F5DECF型|2021/10]となっており、NA車は0車種、ターボ/SC車は5車種の全5車種が登録されています。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
DECのエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷162.3PS → 450PS
トルクの変遷61.2kgm → 48.1kgm
リッター馬力155.55PS/L
リッタートルク21.1kgm/L

今回の参考車両であるRS5 クーペのV型6気筒2893cc、圧縮比10.0でハイオクガソリン仕様のターボエンジンは、5700-6700回転のとき最高出力450馬力を、5700-6700回転のとき最大トルク61.2kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する1900回転での馬力は162.3PS、最高出力が発生する6700回転でのトルクは48.1kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は155.55PS/L、トルクは21.1kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積482.3cc)あたりの馬力は75.0PS、トルクは10.2kgmです。

DEC型ターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 10 ]、換算トルクが[ 10 ]の「稀に見る高出力エンジン」にカテゴライズされます。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
84.586.02893cc10.01.02
ボアアップによる排気量拡大
85.086.02928cc10.11.01
85.52963cc10.21.01
86.02997cc10.31.00
86.53032cc10.40.99
87.03067cc10.50.99
87.53103cc10.60.98
ストロークアップによる排気量拡大
84.587.02927cc10.11.03
88.02961cc10.21.04
89.02995cc10.31.05
90.03028cc10.41.07
91.03062cc10.51.08

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の84.5mmから0.5mm刻みで87.5mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の86.0mmから1mm刻みで91.0mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。DEC型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.02から0.98に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

DEC型エンジンのピストン径84.5mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが25件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
レクサス
V35A型
85.5mm
[+1.0mm]
2963cc
[+70cc]
トヨタ
3S型
86.0mm
[+1.5mm]
2997cc
[+104cc]
日産
SR20型
86.0mm
[+1.5mm]
2997cc
[+104cc]
トヨタ
1JZ型
86.0mm
[+1.5mm]
2997cc
[+104cc]
日産
RB25型
86.0mm
[+1.5mm]
2997cc
[+104cc]
マツダ
SH型
86.0mm
[+1.5mm]
2997cc
[+104cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、レクサス:VXFA50型ランドクルーザー300に搭載されるV35A型3444ccの85.5mm、トヨタ:ST246W型カルディナ GT-FOURに搭載される3S型1998ccの86.0mm、日産:PNT30型シルビアに搭載されるSR20型1998ccの86.0mm、トヨタ:JZS171型クラウンに搭載される1JZ型2491ccの86.0mm、日産:ER34型スカイライン セダンに搭載されるRB25型2498ccの86.0mm、マツダ:KF2P型アテンザ ワゴンに搭載されるSH型2188ccの86.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 3000ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 3000ccクラスのエンジン
ストロークが短い 3000ccクラスのエンジン
ストロークが長い 3000ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [3000ccクラス]
ボアストローク比・降順 [3000ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
1900rpm
最高出力
6700rpm
86.0mm5.4m/s19.2m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.7m/s21km/h
4000rpm11.5m/s41km/h
6000rpm17.2m/s62km/h
8000rpm22.9m/s82km/h
10000rpm28.7m/s103km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが86.0mmのエンジンが最高出力を発生する6700回転での平均ピストンスピードは19.2m/sとなり、これは1秒間に19.2メートル(時速にすると69.1km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する1900回転では5.4m/s、最高出力が発生する6700回転より500回転高い7200回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は20.6m/sとなっています。

参考までにストロークが86.0mmのDEC型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.75m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6980回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


DEC型エンジンを搭載する車種の例

全5車種を最高出力が大きいものから順に表示しています。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
アウディ
F5DECF
2019/05
RS5 クーペ
BaseGrade
[ABA-F5DECF]
450PS
61.2kgm
10.7km/L
3.911kg/PS
ターボ
4WD/8AT
クーペ
4人乗り
車両型式:ABA-F5DECF

RS5 クーペ
[BaseGrade]
2019/05モデル
最高出力450PS
最大トルク61.2kgm
JC08モード燃費10.7km/L
吸気方式ターボ
車体構成4人乗りクーペ
4WD/8AT
アウディ
F5DECL
2019/05
RS5 スポーツバック
BaseGrade
[ABA-F5DECL]
450PS
61.2kgm
11.2km/L
4.022kg/PS
ターボ
4WD/8AT
セダン
5人乗り
車両型式:ABA-F5DECL

RS5 スポーツバック
[BaseGrade]
2019/05モデル
最高出力450PS
最大トルク61.2kgm
JC08モード燃費11.2km/L
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りセダン
4WD/8AT
アウディ
F5DECF
2021/10
RS5 クーペ
BaseGrade
[3BA-F5DECF]
450PS
61.2kgm
9.9km/L
3.889kg/PS
ターボ
4WD/8AT
クーペ
4人乗り
車両型式:3BA-F5DECF

RS5 クーペ
[BaseGrade]
2021/10モデル
最高出力450PS
最大トルク61.2kgm
WLTCモード燃費9.9km/L
JC08モード燃費11.2km/L
吸気方式ターボ
車体構成4人乗りクーペ
4WD/8AT
アウディ
8WDECF
2021/10
RS4 アバント
BaseGrade
[3BA-8WDECF]
450PS
61.2kgm
9.9km/L
4.044kg/PS
ターボ
4WD/8AT
ワゴン
5人乗り
車両型式:3BA-8WDECF

RS4 アバント
[BaseGrade]
2021/10モデル
最高出力450PS
最大トルク61.2kgm
WLTCモード燃費9.9km/L
JC08モード燃費11.2km/L
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りワゴン
4WD/8AT
アウディ
F5DECL
2021/10
RS5 スポーツバック
BaseGrade
[3BA-F5DECL]
450PS
61.2kgm
9.9km/L
3.978kg/PS
ターボ
4WD/8AT
セダン
5人乗り
車両型式:3BA-F5DECL

RS5 スポーツバック
[BaseGrade]
2021/10モデル
最高出力450PS
最大トルク61.2kgm
WLTCモード燃費9.9km/L
JC08モード燃費11.2km/L
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りセダン
4WD/8AT

アウディ製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】