アウディ:CTS型エンジンの諸元と性能まとめ [直列5気筒 2480cc]

ここではアウディの8UCTSF型・RS Q3 [BaseGrade|2014/03モデル] に搭載されているCTS型のターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

CTS型のターボエンジン諸元


8UCTSF型 RS Q3
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式ABA-8UCTSF型
車名&グレードRS Q3
BaseGrade
エンジン型式CTS
種類直列5気筒
排気量2480cc
内径×行程82.5mm×92.8mm
ボアストローク比1.12
単気筒容積496.1cc
圧縮比10.0
吸気方式ターボ
使用燃料ハイオクガソリン
最高出力310PS/5200-6700rpm
最大トルク42.8kgm/1500-5200rpm

まず基本的な成り立ちとして、CTS型エンジンはボア(内径)82.5mm、ストローク(行程)92.8mm、ボアストローク比1.12のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。

なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
CTSのエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷89.6PS → 310PS
トルクの変遷42.8kgm → 33.1kgm
リッター馬力125.00PS/L
リッタートルク17.3kgm/L

今回の参考車両であるRS Q3の直列5気筒2480cc、圧縮比10.0でハイオクガソリン仕様のターボエンジンは、5200-6700回転のとき最高出力310馬力を、5200-6700回転のとき最大トルク42.8kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する1500回転での馬力は89.6PS、最高出力が発生する6700回転でのトルクは33.1kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は125.00PS/L、トルクは17.3kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積496.1cc)あたりの馬力は62.0PS、トルクは8.6kgmです。

CTS型ターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 8 ]、換算トルクが[ 7 ]の「結構な高出力エンジン」にカテゴライズされます。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
82.592.82480cc10.01.12
ボアアップによる排気量拡大
83.092.82510cc10.11.12
83.52541cc10.21.11
84.02571cc10.31.10
84.52602cc10.41.10
85.02633cc10.61.09
85.52664cc10.71.09
ストロークアップによる排気量拡大
82.593.82507cc10.11.14
94.82534cc10.21.15
95.82560cc10.31.16
96.82587cc10.41.17
97.82614cc10.51.19

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の82.5mmから0.5mm刻みで85.5mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の92.8mmから1mm刻みで97.8mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。CTS型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.12から1.09に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

CTS型エンジンのピストン径82.5mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが9件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
マツダ
PE型
83.5mm
[+1.0mm]
2541cc
[+61cc]
日産
KR15型
84.0mm
[+1.5mm]
2571cc
[+91cc]
日産
M9R型
84.0mm
[+1.5mm]
2571cc
[+91cc]
日産
CD20型
84.5mm
[+2.0mm]
2602cc
[+122cc]
三菱
4G63型
85.0mm
[+2.5mm]
2633cc
[+153cc]
日産
VQ25型
85.0mm
[+2.5mm]
2633cc
[+153cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、マツダ:DMEP型CX-30に搭載されるPE型1997ccの83.5mm、日産:T33型エクストレイルに搭載されるKR15型1497ccの84.0mm、日産:DNT31型エクストレイルに搭載されるM9R型1995ccの84.0mm、日産:SW11型ラルゴに搭載されるCD20型1973ccの84.5mm、三菱:CT9A型ランサー エボリューションIXに搭載される4G63型1997ccの85.0mm、日産:NM35型ステージアに搭載されるVQ25型2495ccの85.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 2500ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 2500ccクラスのエンジン
ストロークが短い 2500ccクラスのエンジン
ストロークが長い 2500ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [2500ccクラス]
ボアストローク比・降順 [2500ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
1500rpm
最高出力
6700rpm
92.8mm4.6m/s20.7m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm6.2m/s22km/h
4000rpm12.4m/s45km/h
6000rpm18.6m/s67km/h
8000rpm24.7m/s89km/h
10000rpm30.9m/s111km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが92.8mmのエンジンが最高出力を発生する6700回転での平均ピストンスピードは20.7m/sとなり、これは1秒間に20.7メートル(時速にすると74.5km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する1500回転では4.6m/s、最高出力が発生する6700回転より500回転高い7200回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は22.3m/sとなっています。

参考までにストロークが92.8mmのCTS型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね6.17m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、6470回転くらいが良い感じの回転数になるのではないかと思いますが、このエンジンは最高出力を発生している時点で既に20.0m/sを超えており、レブリミットを考慮するともう少し余分に(300~500回転?)回ることから、内部では大変なことになりながらも頑張って回っているエンジンです。


CTS型エンジンを搭載する車種の例

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
アウディ
8UCTSF
2014/03
RS Q3
BaseGrade
[ABA-8UCTSF]
310PS
42.8kgm
11.5km/L
5.484kg/PS
ターボ
4WD/7AT
SUV
5人乗り
車両型式:ABA-8UCTSF

RS Q3
[BaseGrade]
2014/03モデル
最高出力310PS
最大トルク42.8kgm
JC08モード燃費11.5km/L
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りSUV
4WD/7AT

アウディ製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】