アウディ:CJS型エンジンの諸元と性能まとめ [直列4気筒 1798cc]

ここではアウディの8VCJSL型・A3 セダン [1.8TFSI Quattro|2014/01モデル] に搭載されているCJS型のターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

CJS型のターボエンジン諸元


8VCJSL型 A3 セダン
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式ABA-8VCJSL型
車名&グレードA3 セダン
1.8TFSI Quattro
エンジン型式CJS
種類直列4気筒
排気量1798cc
内径×行程82.5mm×84.1mm
ボアストローク比1.02
単気筒容積449.6cc
圧縮比9.6
吸気方式ターボ
使用燃料ハイオクガソリン
最高出力180PS/4500-6200rpm
最大トルク28.6kgm/1350-4500rpm

まず基本的な成り立ちとして、CJS型エンジンはボア(内径)82.5mm、ストローク(行程)84.1mm、ボアストローク比1.02のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、厳密に言えばボアとストロークが全くの同一でなければスクエア型を名乗ることは許されませんが、ここまでボアストローク比が1に近いのであれば「もうスクエア型にしてあげても良いじゃない!」という気もします。

これらのエンジンはショートストローク型、或いはロングストローク型の風味を残しつつ、その実はスクエア型に限りなく近い特性を持ちます。「やっぱこう、どうせなら低回転で粘って高回転でキレ
(省略されました・・全てを読むには ここ を押してください)

このサイトにて登録されている車種のうち、CJS型のターボエンジンを搭載する最も古い車種は、2013/09から発売された3代目A3 スポーツバック [8VCJSF型|2013/09]、最も新しい車種は2015/08から発売された3代目TTクーペ [FVCJS型|2016/08]となっており、NA車は0車種、ターボ/SC車は3車種の全3車種が登録されています。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
CJSのエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷53.9PS → 180PS
トルクの変遷28.6kgm → 20.8kgm
リッター馬力100.11PS/L
リッタートルク15.9kgm/L

今回の参考車両であるA3 セダンの直列4気筒1798cc、圧縮比9.6でハイオクガソリン仕様のターボエンジンは、4500-6200回転のとき最高出力180馬力を、4500-6200回転のとき最大トルク28.6kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する1350回転での馬力は53.9PS、最高出力が発生する6200回転でのトルクは20.8kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は100.11PS/L、トルクは15.9kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積449.6cc)あたりの馬力は45.0PS、トルクは7.2kgmです。

CJS型ターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 6 ]、換算トルクが[ 6 ]の「標準的な出力(中の上)のエンジン」にカテゴライズされます。

ちなみに、CJS型エンジン搭載車種のうち、最高出力が最も大きかったのは8VCJSL型A3 セダンの180PS/28.6kgm、最も小さかったのはFVCJS型TTクーペの179PS/25.5kgmとなっています。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
82.584.11798cc9.61.02
ボアアップによる排気量拡大
83.084.11820cc9.71.01
83.51842cc9.81.01
84.01864cc9.91.00
84.51886cc10.01.00
85.01909cc10.10.99
85.51931cc10.20.98
ストロークアップによる排気量拡大
82.585.11820cc9.71.03
86.11841cc9.81.04
87.11862cc9.91.06
88.11884cc10.01.07
89.11905cc10.11.08

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の82.5mmから0.5mm刻みで85.5mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の84.1mmから1mm刻みで89.1mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。CJS型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.02から0.98に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

CJS型エンジンのピストン径82.5mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが9件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
マツダ
PE型
83.5mm
[+1.0mm]
1842cc
[+44cc]
日産
KR15型
84.0mm
[+1.5mm]
1864cc
[+66cc]
日産
M9R型
84.0mm
[+1.5mm]
1864cc
[+66cc]
日産
CD20型
84.5mm
[+2.0mm]
1886cc
[+88cc]
三菱
4G63型
85.0mm
[+2.5mm]
1909cc
[+111cc]
日産
VQ25型
85.0mm
[+2.5mm]
1909cc
[+111cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、マツダ:DMEP型CX-30に搭載されるPE型1997ccの83.5mm、日産:T33型エクストレイルに搭載されるKR15型1497ccの84.0mm、日産:DNT31型エクストレイルに搭載されるM9R型1995ccの84.0mm、日産:SW11型ラルゴに搭載されるCD20型1973ccの84.5mm、三菱:CT9A型ランサー エボリューションIXに搭載される4G63型1997ccの85.0mm、日産:NM35型ステージアに搭載されるVQ25型2495ccの85.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 1800ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 1800ccクラスのエンジン
ストロークが短い 1800ccクラスのエンジン
ストロークが長い 1800ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [1800ccクラス]
ボアストローク比・降順 [1800ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
1350rpm
最高出力
6200rpm
84.1mm3.8m/s17.4m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.6m/s20km/h
4000rpm11.2m/s40km/h
6000rpm16.8m/s60km/h
8000rpm22.4m/s81km/h
10000rpm28.0m/s101km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが84.1mmのエンジンが最高出力を発生する6200回転での平均ピストンスピードは17.4m/sとなり、これは1秒間に17.4メートル(時速にすると62.6km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する1350回転では3.8m/s、最高出力が発生する6200回転より500回転高い6700回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は18.8m/sとなっています。

参考までにストロークが84.1mmのCJS型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.60m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)7130回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


CJS型エンジンを搭載する車種の例

全3車種を最高出力が大きいものから順に表示しています。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
アウディ
8VCJSL
2014/01
A3 セダン
1.8TFSI Quattro
[ABA-8VCJSL]
180PS
28.6kgm
14.8km/L
8.167kg/PS
ターボ
4WD/6AT
セダン
5人乗り
車両型式:ABA-8VCJSL

A3 セダン
[1.8TFSI Quattro]
2014/01モデル
最高出力180PS
最大トルク28.6kgm
JC08モード燃費14.8km/L
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りセダン
4WD/6AT
アウディ
8VCJSF
2013/09
A3 スポーツバック
1.8TFSI Quattro
[ABA-8VCJSF]
180PS
28.6kgm
14.8km/L
8.111kg/PS
ターボ
4WD/6AT
ハッチバック
5人乗り
車両型式:ABA-8VCJSF

A3 スポーツバック
[1.8TFSI Quattro]
2013/09モデル
最高出力180PS
最大トルク28.6kgm
JC08モード燃費14.8km/L
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りハッチバック
4WD/6AT
アウディ
FVCJS
2016/08
TTクーペ
1.8TFSI
[ABA-FVCJS]
179PS
25.5kgm
16.6km/L
7.095kg/PS
ターボ
FF/7AT
クーペ
4人乗り
車両型式:ABA-FVCJS

TTクーペ
[1.8TFSI]
2016/08モデル
最高出力179PS
最大トルク25.5kgm
JC08モード燃費16.6km/L
吸気方式ターボ
車体構成4人乗りクーペ
FF/7AT

その他のCJS型エンジン型式と代表的な車種

CJS型
全1車種
VW:ゴルフ オールトラック [TSI 4Motion]
最高出力180PS/最大トルク28.6kgm
2015/07モデル
フォルクスワーゲン
CJS型
全1車種
ゴルフ オールトラック
[TSI 4Motion]
180PS/28.6kgm

アウディ製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】