アウディ:BES型エンジンの諸元と性能まとめ [V型6気筒 2671cc]

ここではアウディの4BBESF型・オールロードクワトロ [2.7T|2004/08モデル] に搭載されているBES型のツインターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

BES型のツインターボエンジン諸元


4BBESF型 オールロードクワトロ
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式GH-4BBESF型
車名&グレードオールロードクワトロ
2.7T
エンジン型式BES
種類V型6気筒
排気量2671cc
内径×行程81.0mm×86.4mm
ボアストローク比1.07
単気筒容積445.2cc
圧縮比9.3
吸気方式ツインターボ
使用燃料ハイオクガソリン
最高出力250PS/5800rpm
最大トルク35.7kgm/1800-4500rpm

まず基本的な成り立ちとして、BES型エンジンはボア(内径)81.0mm、ストローク(行程)86.4mm、ボアストローク比1.07のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。

なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。

このサイトにて登録されている車種のうち、BES型のツインターボエンジンを搭載する最も古い車種は、1997/09から発売された2代目A6 セダン [4BBESS型|2004/04]、最も新しい車種は2001/02から発売された2代目オールロードクワトロ [4BBESF型|2004/08]となっており、NA車は0車種、ターボ/SC車は2車種の全2車種が登録されています。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
BESのエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷89.7PS → 250PS
トルクの変遷35.7kgm → 30.9kgm
リッター馬力93.60PS/L
リッタートルク13.4kgm/L

今回の参考車両であるオールロードクワトロのV型6気筒2671cc、圧縮比9.3でハイオクガソリン仕様のツインターボエンジンは、5800回転のとき最高出力250馬力を、5800回転のとき最大トルク35.7kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する1800回転での馬力は89.7PS、最高出力が発生する5800回転でのトルクは30.9kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は93.60PS/L、トルクは13.4kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積445.2cc)あたりの馬力は41.7PS、トルクは6.0kgmです。

BES型ツインターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 5 ]、換算トルクが[ 5 ]の「標準的な出力(中の下)のエンジン」にカテゴライズされます。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
81.086.42671cc9.31.07
ボアアップによる排気量拡大
81.586.42704cc9.41.06
82.02738cc9.51.05
82.52771cc9.61.05
83.02805cc9.71.04
83.52839cc9.81.03
84.02873cc9.91.03
ストロークアップによる排気量拡大
81.087.42702cc9.41.08
88.42733cc9.51.09
89.42764cc9.61.10
90.42795cc9.71.12
91.42826cc9.81.13

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の81.0mmから0.5mm刻みで84.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の86.4mmから1mm刻みで91.4mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。BES型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.07から1.03に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

BES型エンジンのピストン径81.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが15件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
トヨタ
B48B20型
82.0mm
[+1.0mm]
2738cc
[+67cc]

B58B30型
82.0mm
[+1.0mm]
2738cc
[+67cc]
ホンダ
C20A型
82.0mm
[+1.0mm]
2738cc
[+67cc]
トヨタ
B58型
82.0mm
[+1.0mm]
2738cc
[+67cc]
トヨタ
B48型
82.0mm
[+1.0mm]
2738cc
[+67cc]
三菱
4G61型
82.3mm
[+1.3mm]
2758cc
[+87cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、トヨタ:DB26型スープラに搭載されるB48B20型1998ccの82.0mm、:DB06型スープラに搭載されるB58B30型2997ccの82.0mm、ホンダ:KA5型レジェンドに搭載されるC20A型1996ccの82.0mm、トヨタ:DB02型スープラに搭載されるB58型2997ccの82.0mm、トヨタ:DB22型スープラに搭載されるB48型1998ccの82.0mm、三菱:C53A型ミラージュ サイボーグRSに搭載される4G61型1595ccの82.3mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 3000ccクラスのエンジン
ピストン径が大きい 3000ccクラスのエンジン
ストロークが短い 3000ccクラスのエンジン
ストロークが長い 3000ccクラスのエンジン
ボアストローク比・昇順 [3000ccクラス]
ボアストローク比・降順 [3000ccクラス]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
1800rpm
最高出力
5800rpm
86.4mm5.2m/s16.7m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm5.8m/s21km/h
4000rpm11.5m/s41km/h
6000rpm17.3m/s62km/h
8000rpm23.0m/s83km/h
10000rpm28.8m/s104km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが86.4mmのエンジンが最高出力を発生する5800回転での平均ピストンスピードは16.7m/sとなり、これは1秒間に16.7メートル(時速にすると60.1km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する1800回転では5.2m/s、最高出力が発生する5800回転より500回転高い6300回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は18.1m/sとなっています。

参考までにストロークが86.4mmのBES型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.75m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6940回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


BES型エンジンを搭載する車種の例

全2車種を最高出力が大きいものから順に表示しています。

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
アウディ
4BBESF
2004/08
オールロードクワトロ
2.7T
[GH-4BBESF]
250PS
35.7kgm
7.7km/L
7.440kg/PS
ターボ
4WD/5AT
SUV
5人乗り
車両型式:GH-4BBESF

オールロードクワトロ
[2.7T]
2004/08モデル
最高出力250PS
最大トルク35.7kgm
10-15モード燃費7.7km/L
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りSUV
4WD/5AT
アウディ
4BBESS
2004/04
A6 セダン
2.7T-Quattro
[GH-4BBESS]
250PS
35.7kgm
7.8km/L
7.040kg/PS
ターボ
4WD/5AT
セダン
5人乗り
車両型式:GH-4BBESS

A6 セダン
[2.7T-Quattro]
2004/04モデル
最高出力250PS
最大トルク35.7kgm
10-15モード燃費7.8km/L
吸気方式ターボ
車体構成5人乗りセダン
4WD/5AT

アウディ製エンジンの原動機型式まとめ
【排気量順】