AMG:119974型エンジンの諸元と性能まとめ [V型8気筒 5956cc]

ここではAMGのW124型・Eクラス [E500-6.0|1993/10モデル] に搭載されている119974型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。

119974型の自然吸気エンジン諸元


W124型 Eクラス
主要諸元と走行性能まとめ
車両型式W124型
車名&グレードEクラス
E500-6.0
エンジン型式119974
種類V型8気筒
排気量5956cc
内径×行程100.0mm×94.8mm
ボアストローク比0.95
単気筒容積744.5cc
圧縮比10.0
吸気方式自然吸気
使用燃料ハイオクガソリン
最高出力380PS/5500rpm
最大トルク59.1kgm/3750rpm

まず基本的な成り立ちとして、119974型エンジンはボア(内径)100.0mm、ストローク(行程)94.8mm、ボアストローク比0.95のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。

排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。

また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。

過渡特性とリッター換算馬力から見た評価

エンジン性能曲線のイメージ
119974のエンジン性能曲線図もどき
馬力の変遷309.4PS → 380PS
トルクの変遷59.1kgm → 49.5kgm
リッター馬力63.80PS/L
リッタートルク9.9kgm/L

今回の参考車両であるEクラスのV型8気筒5956cc、圧縮比10.0でハイオクガソリン仕様の自然吸気エンジンは、5500回転のとき最高出力380馬力を、5500回転のとき最大トルク59.1kgmを発生させます。

馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する3750回転での馬力は309.4PS、最高出力が発生する5500回転でのトルクは49.5kgmになります。

排気量1リットルあたりの馬力は63.80PS/L、トルクは9.9kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積744.5cc)あたりの馬力は47.5PS、トルクは7.4kgmです。

119974型自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 4 ]、換算トルクが[ 7 ]の「やや控えめな出力のエンジン」にカテゴライズされます。

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排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化

ノーマルの排気量と圧縮比
BoreStroke排気量圧縮比B/S比
100.094.85956cc10.00.95
ボアアップによる排気量拡大
100.594.86016cc10.10.94
101.06076cc10.20.94
101.56136cc10.30.93
102.06197cc10.40.93
102.56258cc10.50.92
103.06319cc10.60.92
ストロークアップによる排気量拡大
100.095.86019cc10.10.96
96.86082cc10.20.97
97.86145cc10.30.98
98.86208cc10.40.99
99.86270cc10.51.00

エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。

ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の100.0mmから0.5mm刻みで103.0mmまで拡大した場合および、ストロークを純正の94.8mmから1mm刻みで99.8mmまで延長した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。

※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。

圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。

B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.95からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。119974型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.95から0.92に変化するという具合です。

ピストン径が近いエンジンと排気量アップ

119974型エンジンのピストン径100.0mmとサイズが近いピストンを持つエンジンが1件ありますので、余興としてピストン流用でボアアップした場合の排気量を計算してみます。

Eg型式ピストン径排気量
トヨタ
4B型
102.0mm
[+2.0mm]
6197cc
[+241cc]

ピストン径が近いエンジンとしては、トヨタ:BU280K型クイックデリバリー200に搭載される4B型3660ccの102.0mmなどが該当します。

(もはやこのような探求に楽しみを見い出す人は減ってしまいましたが)いくら径が近かろうとも、ピストンピンの径やピストンの高さ、バルブリセスの都合などなどありますので、なるべくなら同じメーカー、なるべくなら同じ燃料で同じ吸気方式、なるべくなら排気量が近いものを選ぶと純正流用できる可能性が高くなる、かもしれません。

ピストン径が小さい 5000cc超のエンジン
ピストン径が大きい 5000cc超のエンジン
ストロークが短い 5000cc超のエンジン
ストロークが長い 5000cc超のエンジン
ボアストローク比・昇順 [5000cc超]
ボアストローク比・降順 [5000cc超]


平均ピストンスピード

ストローク最大トルク
3750rpm
最高出力
5500rpm
94.8mm11.8m/s17.4m/s
回転数/分秒速時速
2000rpm6.3m/s23km/h
4000rpm12.6m/s45km/h
6000rpm19.0m/s68km/h
8000rpm25.3m/s91km/h
10000rpm31.6m/s114km/h

続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが94.8mmのエンジンが最高出力を発生する5500回転での平均ピストンスピードは17.4m/sとなり、これは1秒間に17.4メートル(時速にすると62.6km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。

最大トルクを発生する3750回転では11.8m/s、最高出力が発生する5500回転より500回転高い6000回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は19.0m/sとなっています。

参考までにストロークが94.8mmの119974型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね6.33m/sずつ速度が増していくようです。

大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6330回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。


119974型エンジンを搭載する車種の例

メーカー
車両型式
画像車名&グレード出力/燃費
パワーウェイト
排気量
変速機
AMG
W124
1993/10
Eクラス
E500-6.0
[W124]
380PS
59.1kgm
-
4.605kg/PS
自然吸気
FR/4AT
セダン
5人乗り
車両型式:W124

Eクラス
[E500-6.0]
1993/10モデル
最高出力380PS
最大トルク59.1kgm
吸気方式自然吸気
車体構成5人乗りセダン
FR/4AT